犬のホルモンについて「あまり知らない」というかたも多いのではないでしょうか。いぬのきもち読者アンケートでは、飼い主さんから「犬の性ホルモンについて知りたい」という声が多数寄せられました。そこで今回は、オス・メスそれぞれの性ホルモンの種類やその働き、性ホルモンの豆知識をご紹介します。
そもそもホルモンって?
ホルモンとは、脳や臓器などのさまざまな部位から分泌される化学物質のこと。体の機能が正常に働くよう指示する“司令塔”のような役目を果たしています。
体の機能をコントロールするのはもちろん、怒りや安心といった感情とも関係しており、心を正常に働かせる役割ももっているのです。
オスの犬にまつわる性ホルモン
オスにまつわる性ホルモンといえば、たくましい体を作る「テストステロン」。筋肉量を維持したり、メスよりも大きい骨格をつくったりする働きがあります。
また、テストステロンは交配相手を積極的に見つけようとするほか、マーキングをして縄張りを主張するといった、オスの本能的な行動とも関係しています。
ちなみに、メスでもオスの10分の1ほどのテストステロンが分泌されるようです。
メスの犬にまつわる性ホルモン
メスらしい体をつくる「エストロゲン」
メス特有の性ホルモン「エストロゲン」は、丸みを帯びたしなやかでやわらかい体をつくるために作用します。
とくに発情の準備をする期間(発情前期)に多く分泌され、陰部のふくらみや、オスを受け入れるための発情出血に影響するとも考えられています。
妊娠をサポートする「プロゲステロン」
メスの体内では「プロゲステロン」という性ホルモンも分泌されます。これは妊娠をサポートするホルモンです。
子宮内の免疫力を低くして精子を受け入れやすくするほか、子宮内膜を厚くして卵子が順調に育つようにするなどの役目があります。
犬の性ホルモンにまつわる豆知識
“偽妊娠”はホルモンのせい?
偽妊娠とは、妊娠していないのに母乳が出たり、ぬいぐるみの世話をしたりするなど、メスが妊娠したような行動をとることです。この偽妊娠は、乳腺を刺激する「プロラクチン」というホルモンと、プロゲステロンのバランスが崩れることで起こると考えられています。
去勢・避妊手術をすると太るのはなぜ?
犬は去勢や避妊手術をすると、太りやすくなることがあります。これは手術により性ホルモンの分泌量が減ることで、体全体のホルモンバランスが変化し、基礎代謝量が低下するため。
食事を与えすぎずに生活すれば問題ないので安心してください。
「ホルモン」と「フェロモン」の違いは?
「ホルモン」と「フェロモン」は一見似ていますが、ホルモンは体内で作用して体の働きを調節する一方、フェロモンは体外でニオイ分子として作用します。
自分の体内で作用するか、体外で自分以外の相手に作用するかという点が異なるのですね。
性ホルモンは本能的な行動や新しい命に関わっている!
ご紹介したように、性ホルモンは犬の本能的な行動や新しい命を守ることに密接に関わっています。ホルモンの分泌量が変化すると病気を引き起こすこともあるので、覚えておくといいでしょう。
参考/「いぬのきもち」2020年5月号『病気、しつけ、感情も!すべてにかかわっていた!気になる!ホルモンのことすべて』(監修:麻布大学獣医学部 動物応用科学科教授 獣医学博士 菊水健史先生、「石田ようこ犬と猫の歯科クリニック」院長 獣医師 石田陽子先生)
文/松本マユ
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。