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自治体に寄せられる「吠え声」の苦情。コンパニオン・ドッグに育てるためにはどうすればいい?|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.153
西川先生が毎月しつけ相談会を行っている某自治体で、犬に関する苦情で最も多いのが「吠え」だそう。相談に来る飼い主さんに、先生が最も伝えたいこととは……?(編集部)
月に1回行政の依頼で実施している「犬のしつけ相談会」の担当者から先日、相談の合間に声をかけられました。
飼い主への啓発のため、チラシを作成した。チラシには相談会の情報も記されているので、相談会に来られる方が増えるかもしれないのでよろしく、という話でありました。
チラシを拝見して改めて思ったのは、苦情の内容は、10年前と変わらないのだなということ(行政に寄せられる苦情の話は、当コラムVol.62で取り上げましたので、ぜひそちらもご一読ください)。
トップ3は相も変わらず、吠え声、ノーリード、排泄物、です。
苦情のトップは吠え声
犬も含め動物たちは無駄なことはしません。
その行動の結果、いいことが起きている、嫌なことがなくなっている、そのいずれかの行動をとり、習慣化していきます。
前者の結果的にいいことが起きている吠えは、要求吠えなどであり、後者は警戒吠え・追っ払い吠え、になります。
何も教えなければ(コンパニオン・ドッグに育てるための適切なしつけをしなければ)、犬は番犬になってくれます。
昔の犬は、よくて「オスワリ」「オテ」「オアズケ」「ヨシ」程度しか教えていませんでした。それで見事な番犬となってくれていたわけです。
要するに、コロナ禍で犬を飼う人たちが増加した。しかしながら、コンパニオン・ドッグに育てるための適切なしつけをする飼い主は増えず。吠え声の苦情が増加傾向にあるというのは、まさにその結果と想像できるわけです。
問題が深刻化しないとわからない
相談会は単発で1人20分の枠で進められます。
お困りごとがなぜ起きているか、どうすれば解決に向かわせることができるか、のお話は20分の枠でもそれなりにできますが、実際に解決に向かわせるためには「コンパニオン・ドッグに育てるための適切なしつけ」を行うことが必要。加えて、そのためにはプロの指導を受けるべきことも伝えます。
なんと先の担当者から、その4ヵ月齢で相談会に来た犬が最近苦情の対象となったと知らされました。
アドバイスを受けても実際にそれを行うかどうかは、飼い主次第です。
多くの飼い主は「まぁなんとかなる」「そのうちよくなるんじゃないか」程度に思うのでしょう。
問題行動を未然に防ぐ、予防のために行うのが、適切なしつけです。問題が深刻化してから適切なしつけを始めるのでは、ある意味遅いのです。
再度のお願い
番犬化してからではなく(困ってからではなく)、番犬化しないように(困らないように)「適切なしつけ(=コンパニオン・ドッグに育てるための適切なしつけ)」を行うことが必要ということなのです。
しつけとは、困ってからではなく困らないようにすべきこと。
このことは譲渡する側(販売する側)が譲渡(販売)する、その時点で伝えるべきことです(コラムVol.138もぜひ参考に)。
もしもこのコラムをショップやブリーダー関係者がご覧になられているのなら、再度お願いしたい。
「適切なしつけ」を行うことが必要という情報を、販売時点でぜひ伝えてください。
現在、日本臨床獣医学フォーラム年次大会2022が、オンラインで開催されています(2022年9月22日~12月9日)。その中でペット事業者向けの講演を僭越ながら私が行っています。
タイトルは「伴侶動物(犬)のハンドリング -その基礎とトレーニングー」(伴侶動物=コンパニオン・アニマル。要は「コンパニオン・ドッグのハンドリング -その基礎とトレーニングー」というタイトル)。販売時点での「適切なしつけを行う重要性」も、映像を通じて解説しています。
ぜひともその講演も参考にいただければと願う次第です。
吠え声の苦情を減らすためにも、ぜひです。
西川文二氏 プロフィール
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