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【獣医師監修】犬にごぼうを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説
ごぼうは犬が食べても大丈夫な野菜のひとつです。腸内環境を正常に保ち、排便をスムーズにする食物繊維のほかに、必須アミノ酸やミネラルも含まれているので、犬の健康を保つのに役立つでしょう。ただし、過剰摂取は消化不良のもとにも。キク科の食物なのでアレルギーにも注意が必要です。

佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター 集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
犬にごぼうを与えるときは、過剰摂取による消化不良とアレルギーに要注意
食物繊維が豊富で、快便を促してくれる野菜として知られているごぼう。犬にとっても、ごぼうの食物繊維は腸内の活性化と便秘解消に役立つでしょう。さらに、ごぼうには疲労回復効果や体の機能回復が期待できるアミノ酸(アルギニン酸、アスパラギン酸)や、カリウム、カルシウムなどのミネラルも含まれています。ただし、食物繊維の摂り過ぎは、消化不良や便秘、下痢など体調不良にもつながります。上手に適量を守って与えることで、愛犬の健康維持と病気予防に役立てましょう。
ごぼうのおもな栄養素|食物繊維、アミノ酸、ミネラルが豊富
ごぼうに含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー | 58kal |
---|---|
水分 | 81.7g |
タンパク質 | 1.8g |
脂質 | 0.1g |
炭水化物 | 15.4g |
灰分(無機質) | 0.9g |
文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照
犬がごぼうを食べるメリット|食物繊維で腸の活性化と便秘解消
ごぼうに含まれる栄養素のなかでも、いちばん期待されるのが食物繊維による整腸作用と正常な排便です。そのほか、ミネラル、ビタミン類が犬にもたらすメリットについても紹介します。
食物繊維|イヌリンとリグニンで快便と整腸
食物繊維には、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類があります。水溶性食物繊維は、保水力が高いのが特徴。不溶性食物繊維は長い時間腸の中に止まり、便のかさを増し、腸の働きを促す作用があります。
ごぼうには、水溶性食物繊維「イヌリン」と不溶性食物繊維「リグニン」がほぼバランスよく含まれているので、腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整え、便秘を予防または解消するのに役立つと考えられます。
さらに、イヌリンは糖質の吸収をゆるやかにし、血糖値の上昇を抑えることから、糖尿病の予防にも役立つでしょう。一方、リグニンにも腸内の毒素やコレステロールを体外に排出する作用があり、病気の予防やアンチエイジングが期待できます。
アルギニン|必須アミノ酸は疲労回復に役立つ
ごぼうの成分の中に認められるタンパク質。アミノ酸がいくつも連なった高分子化合物がタンパク質で、犬の体内で働くアミノ酸の種類は約20にのぼります。その多くは犬の胎内で合成されるものですが、食物から摂取しなければならないものも約10種類あります。これを「必須アミノ酸」と呼び、ごぼうにはそのうちのひとつ「アルギニン」が含まれています。
アルギニンは、犬の体内にあるアンモニアを無毒化して尿に排出するのに役立つことから、疲労回復に役立つと考えられています。
さらに、アミノ酸のひとつ「アスパラギン酸」も含まれています。アスパラギン酸は、もともとアスパラガスに多く含まれることからその名前がついたアミノ酸ですが、窒素やエネルギーの代謝に関わり、アンモニアの解毒作用が知られています。激しい運動をしたあと、ごぼうを与えるのもよいでしょう。
ミネラル|体の機能を正常に保つ
ごぼうに含まれるカリウム、カルシウム、マグネシウムなどは、「多量ミネラル」と呼ばれるもので、骨格構造や体液のバランスの制御、神経伝達、筋肉の収縮などに役立つものです。ミネラルはそれぞれがバランスをとって機能し合うため、多様なミネラルを過不足なく摂取することが大切です。
葉酸|貧血を予防
葉酸はビタミンB群のひとつです。DNAの合成に関わるものなので、胎児がお腹にいる母犬、成長期の犬にはとくに必要と考えられます。また、成犬でも葉酸が欠乏すると、貧血や口内炎になる可能性があるので、貧血予防にごぼうを与えるのもよいでしょう。
犬がごぼうを食べるデメリット|過剰摂取は消化不良や体調不良の原因に
犬の体によい栄養素が豊富なごぼうですが、与えすぎがもとで体調が悪くなる可能性もあります。注意すべきポイントを紹介します。
食物繊維|食べ過ぎは便秘や消化不良のもと
犬は本来、肉食に近い動物ですから、人間とは違い食物繊維を消化する能力は低いと考えられています。食物繊維が豊富なごぼうを過剰に摂取すると、消化不良を起こしたり、便が大きくなりすぎて排便が困難になったり、デメリットも現れてきます。犬の排便状態を見極めながら、適量を与えることが大事です。
ミネラル|バランスの崩れは体調不良の原因に
ごぼうには、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの多量ミネラルが豊富ですが、ミネラルの栄養素を体内に吸収するためには、ミネラル同士の摂取バランスが大事。バランスが崩れると、せっかくのよい働きも役に立たず、かえって体調不良の原因となってしまいます。
キク科アレルギー|ごぼうはキク科。アレルギーがある犬は要注意
意外かもしれませんが、ごぼうは春菊やレタス、ふき、ヤーコンなどと同じキク科の植物です。以前にそれらの野菜を食べてアレルギー症状が見られた犬の場合は、ごぼうでもアレルギーが起こるかもしれません。
カリウム|腎疾患、心疾患の犬は高カリウム血症に注意
不要になったカリウムは腎臓で濾過され尿として体外に排出されますが、腎臓の機能が低下していると排出が上手にできず、血液の中のカリウム濃度が高くなる「高カリウム血症」になる可能性があります。カリウム値が高くなると、四肢の痺れや筋力低下、嘔吐などさまざまな症状を引き起こし、不整脈や頻脈など心臓にも不調をきたします。もともと腎臓病を患っている犬、腎機能が低下しているシニア犬、心機能の低下している犬の場合は、ごぼうを与える前に獣医師に相談してください。
タンパク質が食物アレルギー症状を引き起こすことも
ごぼうにはタンパク質が含まれています。このタンパク質に犬の免疫機能が過剰に反応すると、稀にアレルギーを起こすことも考えられます。もともと何らかの食物アレルギーがある場合は、注意しましょう。
犬にごぼうを与えるときの注意ポイント|加熱して細かく刻む、またはすりつぶして
人間が生でごぼうを食べないように、犬に与えるときも生はNG。必ず加熱してから与えましょう。与え方の注意点をチェックしておきましょう。
与えてよい部位
ごぼうはよく洗い、皮を包丁の背でこそげ取るか、ピーラーで剥いて与えます。新ごぼうなら、水を流しながらタワシでこすれば、きれいに皮がとれます。
与えるときの適量
犬にごぼうを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
犬の体重目安 | 1日あたりの接種可能目安 |
---|---|
小型(2~5kg) | 32g~64g(1/5~1/3本) |
中型(6~15kg) | 74g~147g(2/5~4/5本) |
大型(20~50kg) | 183g~363g(1~2本) |
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出
調理方法
ごぼうは生のまま与えてはいけません。茹でるか蒸すなど必ず加熱してください。
繊維質が堅いので、繊維を断ち切るように包丁で細かく刻みます。シニア犬など歯が弱っている場合は、フードプロセッサーですりつぶしてペースト状にするのもおすすめです。犬が消化吸収しやすいように、手をかけてあげましょう。
なお、ごぼう茶を犬に与えるのもOKですが、人間が飲みやすいように添加物を加えてある場合があるので、与える前に必ずチェックをしてください。
ごぼうの豊富な栄養を生かすには、適量の摂取が大切
食物繊維、アミノ酸、ビタミン、ミネラルなど、豊富な栄養素が注目されるごぼう。その作用を愛犬の健康維持に役立てるには、消化不良にならないよう適量にとどめることが大切です。ごぼうに含まれる栄養素は、総合栄養食のペットフードにはすでに含まれているものなので、ごぼうを与えることで過度な栄養摂取にならないよう、主食の量とのバランスに気をつけましょう。
犬には与えてはいけない食べ物や、注意したい食べ物があります。確認しておきましょう。
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