人が日常的に口にする野菜のなかには、犬にとって有害なものもあります。そこで今回は、犬に与えてよい野菜・与える際に注意が必要な野菜・与えてはいけない野菜を紹介します。犬に野菜を与えるときの注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
犬に与えてダメな野菜・与える際に注意が必要な野菜・与えてよい野菜リスト
まずは、犬に与えてよい野菜・与える際に注意が必要な野菜、与えてはいけない野菜を一覧でチェックしておきましょう。
犬に与えてはいけない野菜
人間には問題のない野菜でも、犬が食べると健康を損ねたり、命を落としかねない危険な野菜もあります。愛犬の命を守るために、以下の野菜を確認しておきましょう。
玉ねぎ(ねぎ類)
玉ねぎなどのねぎ類には、犬の血液中に含まれる赤血球を破壊して、溶血性貧血を起こす成分が含まれています。犬が口にすると血尿などの症状があらわれ、最悪の場合は死に至ることもあるので、絶対に与えてはいけません。また、ねぎ類が含まれる調理品も同様です。
にら・にんにく
にらとにんにくはねぎ類と同じユリ科の食べ物で、赤血球を破壊し、貧血や下痢、嘔吐を起こす成分が含まれます。犬には与えないでください。
アボカド
アボカドの果肉や皮には、犬にとって有害な成分が含まれているため、嘔吐や下痢を起こす恐れがあります。また、種を誤食するとのどを詰まらせる危険もあるので、犬に与えてはいけません。
なす
なすは食物繊維が多く、さらにアクが強い野菜です。アクがカルシウムと結合すると、尿石症などのリスクが高まるので、犬には与えないほうがよいでしょう。
ぎんなん
糖質や食物繊維が多いため、食べ過ぎると腸内環境を乱す危険があります。また、生のまま食べると中毒症状を起こす恐れがあるので、犬には与えないでください。なお、道に落ちているぎんなんも、犬が誤飲・誤食しないよう注意しましょう。
とろろいも・長いも
とろろいもや長いもなど、粘り気のあるいも類は、犬の口のまわりにつくと、かゆみなどを引き起こす恐れがあります。犬には与えないようにしましょう。
犬に与える際に注意が必要な野菜
基本的には犬が食べても大丈夫でも、与える料理や犬の体調および体質によっては、犬の体に害を与えかねない野菜もあります。
とうもろこし
市販のドッグフードにもよく使われているとうもろこし。犬にとって有害な成分は含まれていませんが、糖質が多くカロリーが高いので、与える量には気をつけましょう。また、とうもろこしはアレルギー源になりやすい食べ物でもあるので、食物アレルギーを起こした犬に与える際には、注意が必要です。
ピーマン
ピーマンには犬が中毒を起こすような成分は含まれていないので、犬が食べてもとくに問題はありません。ただし、腎臓病がある犬や消化器官が弱い犬、またナス科のアレルギーがある犬には与えないほうが安心でしょう。
与える際は、生でも加熱でもOKですが、ヘタと種を取り除き、細かくカットしてから与えましょう。
ほうれん草
ほうれん草は鉄分やβ-カロテンを含む栄養豊富な野菜ですが、アクに含まれる「シュウ酸」がカルシウムの吸収を阻害し、尿路結石などのリスクを高める危険性があります。
犬にほうれん草を与える場合は、茹でたあとに流水で洗い、シュウ酸を減らしてから細かく刻むのがポイント。
小松菜
水分やβ-カロテンを含む小松菜には、ほうれん草と同じように「シュウ酸」が豊富に含まれています。そのため、犬に小松菜を与えるときは、ほうれん草同様の注意が必要です。
白菜
水分が豊富で低カロリー、ビタミン、ミネラル、食物繊維を含む白菜。甲状腺ホルモンの分泌を妨げる成分が含まれているので、甲状腺機能の低下が心配される犬には与えないほうが安心でしょう。また、カリウムが豊富なので、腎臓病がある犬にも与えないほうが安心です。
ブロッコリー
ブロッコリーはビタミン類を豊富に含むため、犬にも好ましい野菜です。花芽の部分だけでなく茎や葉も与えてOKですが、茎の根元は皮を厚めに剥き、加熱して与えましょう。ただし、甲状腺機能低下や尿路結石症の犬、腎臓病の犬に与えるのは注意が必要です。
じゃがいも
犬のエネルギー源となる炭水化物や抗酸化作用のあるビタミンCが豊富なじゃがいも。過剰摂取はカロリーオーバーから肥満や糖尿病の原因に。また、じゃがいもの芽には中毒を引き超す有害物質が含まれているので、犬の口に入らないよう与える際には取り除くことが大切です。犬にじゃがいもを与えるときは、必ず加熱してから。細かく刻むかつぶしてから与えましょう。
しいたけ
犬の体に役立つ栄養素が豊富で、低カロリーなしいたけ。生しいたけも干ししいたけも基本的には与えても大丈夫ですが、腎臓病や結石症の犬に与える場合は、事前に獣医師に相談しましょう。
与える際は、固い軸と石づきの部分を取り除き、加熱してから細かく刻んでください。
もやし
もやしには、とくに犬の体に悪い成分は含まれていませんが、水分が多く傷むのが早く腐りやすいので、なるべく新鮮なものを与えるようにしましょう。茹でると栄養素が流れ出るので、電子レンジでの加熱がおすすめです。なお、大豆アレルギーがある犬には与えてはいけません。
里芋
イモ類の中では比較的カロリーが低く、食物繊維など犬の体に役立つ栄養素が含まれている里芋。一方でシュウ酸が多いので「里芋中毒」といわれる重い消化器障害を引き起こしたり、尿路結石の原因になったりすることも。腎臓病や尿路結石症の犬には、与えないほうがよいでしょう。
レンコン
デンプンを多く含むレンコンは、カロリーが高い食べ物なので与え過ぎには注意。豊富な食物繊維は過剰摂取で下痢や便秘の原因になります。また、腎臓病、尿石症の犬に与える場合は、事前に獣医師に相談してください。
与える際は、生、加熱どちらでもOK。細かく刻むかすりおろして与えましょう。
ゴーヤ
ビタミン、ミネラルが豊富で、疲労回復や夏バテ防止が期待できるゴーヤ。犬の中にはその苦みを嫌がらない犬もいるようです。ただし、カリウムが豊富なので、腎臓病の犬や心機能が低下している犬には与えないほうが安心です。与える際は、種とワタを取り除き、加熱してから与えましょう。
ごぼう
食物繊維が豊富で便秘の解消が期待できるごぼう。ただし、食物繊維の摂り過ぎは、消化不良や便秘、下痢などの原因にも。また、ごぼうはキク科の野菜です。春菊、ヤーコン、レタス、ふきなどキク科の野菜でアレルギーを起こしたことのある犬には与えないでください。犬にごぼうを与えるときは、加熱して細かく刻むか、すり潰してから与えましょう。
たけのこ
たけのこにはカリウムやシュウ酸の含有量が多いため、腎臓病や結石の不安がある犬には与えないようにしましょう。また、生のたけのこはえぐみが強く繊維が固いので、与えるときはよく茹でてアクを取り除き、細かく刻みましょう。
オクラ
オクラには犬にとって害となる成分は入っていないので、生でも加熱しても与えて大丈夫です。ただし、過剰摂取すると便秘の解消に役立つどころか、かえって排便困難になってしまうことも。また、オクラにアレルギー反応を示す犬もいるので、初めてオクラを与えるときは注意しましょう。
トマト
リコピン、カリウム、βカロテンなど犬の体に役立つ栄養素が豊富なトマトですが、茎やヘタの部分、また未成熟の青いトマトには中毒性の物質が含まれています。家庭菜園やベランダ菜園でトマトやミニトマトを栽培している場合は、犬の口に入らないよう注意しましょう。
アスパラガス
アスパラガスは犬に与えてもいい野菜ですが、食物繊維が豊富なので、消化しやすいよう、茹でて薄く刻んでから与えると安心です。また、犬は飲み込む食性なので、固い皮やはかまは取り除くのがポイント。1日に与える量は10g程度が目安です。
犬に与えてよい野菜
犬の体に役立つ栄養成分を豊富に含み、適量であれば犬に与えてもとくに問題のない野菜を紹介します。
キャベツ
食物繊維が豊富で、胃腸によいキャベジンという成分が含まれているキャベツ。生より加熱したほうが消化しやすくなるので、加熱してから与えましょう。ただし、ビタミンCは水に溶け出しやすいので、茹でるより電子レンジによる加熱がおすすめ。
さつまいも
抵抗力を高めるビタミン群や、排便を促す作用のある食物繊維を豊富に含み、少量ならばおやつにぴったりの野菜です。犬に与えるときは、茹でたり蒸したりしたものを。
ただし、糖質が多く、さつまいもを食べたあとは血糖値が上がりやすいので、糖尿病の犬には与えないほうが安心でしょう。
きゅうり
きゅうりは約96%が水分でできているため、水分補給を目的としたおやつに適した野菜といえるでしょう。皮をよく水洗いして、生の状態で与えてください。
にんじん
にんじんはβ-カロテンやビタミンが豊富の野菜です。ただし、食物繊維が多く含まれているため、生のまま与えると便が緩くなったり、うまく消化できずにそのまま便として出てきたりすることがあるのでおすすめしません。
犬に与えるときは加熱をして、少量からスタートするのがポイント。
大根
大根に含まれる消化酵素「アミラーゼ」は、胃腸の働きをサポートしてくれるものです。水分が豊富なので、熱中症や脱水の予防にも役立つでしょう。アミラーゼは熱に弱いので、生のまま与えるのがおすすめ。細かく刻んで与えましょう。
レタス
レタスの大半は水分なので、あまり栄養価は高くない野菜ですが、食物繊維やビタミン、ミネラルが少量ずつバランスよく含まれています。その栄養を丸ごと摂取させるなら、生のまま小さくちぎって与えましょう。
かぼちゃ
ビタミンC・E、β-カロテンなどの栄養素を豊富に含むかぼちゃ。茹でただけで甘みがあるので、甘いものを好む犬へごほうびとしてあげるのにおすすめです。犬に与えるときは加熱をしてから。人用に味付けされた煮物は、与えないでください。
しょうが
しょうがは、犬にNGのねぎやにんにくなどの仲間だと思われがちですが、ショウガ科の野菜。犬に中毒を起こすような成分は含まれていません。血行促進や抗酸化作用など、犬の体に役立つ栄養素が含まれているので、適量であれば与えても大丈夫です。
パプリカ
パプリカは、食物繊維やβカロテン、ビタミンC、カリウムなどを含む栄養豊富な野菜です。とくにβカロテンとビタミンCはピーマンに比べて2倍以上の含有量があり、抗酸化作用が期待されます。「パプリカは関節炎の犬にはNG」という情報もありますが、いまのところそうした研究発表はないので、与えても大丈夫です。与える際には種とヘタを取り除き、生より加熱したほうが繊維が柔らかくなるので、小型犬でも食べやすくなります。
枝豆
たんぱく質やビタミン、ミネラルが豊富な枝豆。犬の体に中毒を引き起こすような物質は含まれていなので、犬に与えても大丈夫です。与える際は、必ず加熱してから。茹でるとビタミンCが流れ出してしまうので、電子レンジでの加熱がおすすめです。さやから出した粒をそのまま与えると、犬が丸飲みしてそのまま消化されずに便として出てしまう場合があるので、薄皮を剥いてすり潰し、ペースト状にして与えるほうがベターです。
セロリ
セロリは茎や葉にβ-カロテンやビタミンC、ミネラルを豊富に含む野菜です。茎は生で与えても問題ありませんが、外側の筋は必ず取り除くようにしましょう。また、葉は茹でてから細かく刻むのがポイント。
かぶ
かぶの皮には腸を刺激して軟便にしたり、便を増やしたりする食物繊維が多いので、必ず皮を剥いてから与えましょう。
1日に与える量は、生または加熱をした状態で20g程度が目安。固い茎は避け、葉は茹でて刻んだものを少量なら与えてもOKです。
パセリ
パセリは排便を促進する不溶性食物繊維が豊富なので、食べ過ぎると軟便や下痢の原因になります。便中にそのまま出てくることもあるので、みじん切りにして与えるようにしましょう。
グリーンピース
グリーンピースはたんぱく質やビタミンBなどの栄養が豊富な野菜です。しかし、粒のまま与えると消化せず便に出てくることがあるので、犬に与えるときは、茹でて薄皮を取り除くか、つぶしてあげましょう。
犬に野菜を与える際の注意点
犬に野菜を与える際に気をつけたいことをまとめました。以下をチェックしてください。
調味料は絶対に使わない
人の場合、野菜には調味料をつけて食べることが多いですが、犬に野菜を与えるときに調味料を使うのは厳禁です。ケチャップやソースには、犬が中毒を起こす可能性のある玉ねぎなどが入っています。また、マヨネーズなどは高カロリーで肥満や糖尿病などの原因につながります。
そもそも犬の食べ物に味付けは必要ないので、たとえ少量でも調味料は使用しないようにしてください。
種や皮、芯、ヘタなどは取り除き、細かく刻んでから与える
犬に野菜を与えるときは、種や皮、芯、ヘタなどは基本的に取り除きましょう。また、固い野菜はまる飲みしてのどに詰まらせる恐れがあるので、小さくカットしてから与えることも大切です。
犬に野菜を与える際は適量を守って!
犬に与えられる野菜であっても、与える量を誤れば、体調不良を起こす原因になります。愛犬に野菜を与える際は、与えられるかどうかを調べるのはもちろん、与え方や量などをきちんと確認することが大切です。基本的に、総合栄養食を食べている犬なら、あえて野菜を与えなくても問題はありません。愛犬が好まなければ無理して与えないようにしましょう。
今回紹介しきれなった果物については、以下の記事も参考にしてみてくださいね。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 准教授 )
文/村田 典子
※一部写真はスマホアプリ「まいにちのいぬのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。