犬が吐く原因はさまざまありますが、なかには病気の症状として嘔吐することも。放っておくと重症化してしまう場合もあるので、犬が吐く理由や対処法をよく理解しておきましょう。今回は獣医師の野矢雅彦先生に、犬の嘔吐について教えていただきました。
犬が吐く原因はさまざま
食事の問題
早食いで空気を飲み込み、胃が過剰に膨らんだり、食べ過ぎで胃の消化機能が追い付かなかったりして、吐くことがあります。また、胃の中が空っぽになると胃液を吐くこともあり、頻繁に吐くと胃潰瘍を起こして血を吐く場合も。
脳や神経の異常
10才以上のシニア犬になると、前庭障害による嘔吐が増えます。突然吐いて頭を傾け、眼球が激しく揺れて立てなくなるなどの症状が特徴です。ほかにも脳腫瘍や脳出血、脳梗塞、てんかんの症状で吐くこともあります。
代謝性の異常
腎不全や肝不全、糖尿病、副腎皮質機能低下症などの病気が原因のケースも。新陳代謝の異常や、体の働きをコントロールするホルモンの分泌異常が生じて嘔吐します。
消化器のトラブル
食道の疾患の場合、食べたものを反射的に吐くことが特徴です。胃や膵臓、胆のうの病気では、急激に発症すると1日のうちに数回以上吐き、元気や食欲がなくなります。そのほか、大腸炎によって吐き気を起こすことも。
感染症
犬パルボウイルス、犬コロナウイルス、大腸菌、クロストリジウム、ジアルジア、回虫などが原因の場合も。とくに2種類以上の感染症が合併すると、嘔吐がより激しくなります。
誤食、誤飲
誤食をして食道や胃を通過できない場合、繰り返し吐くことがあります。また、誤食で中毒を起こすと、中毒成分によって嘔吐することも。誤食を確認した場合は、すぐに動物病院へ相談しましょう。
異変を感じたらすぐ動物病院へ
吐いた後の飼い主さんの対応としてまず重要なことは、愛犬に異変を感じたら自己判断せずに、獣医師の判断を仰ぐことです。
吐いた後に元気に動き回る場合はひとまず様子見してもいいですが、吐いたあとは消火器が過敏になっているのでケアすることに意識するとよいでしょう。
また、吐いた後の対応としては、獣医師の診断がしやすくなるため、吐いたものを写真に残しておくとよいでしょう。嘔吐症状がある場合には、首の傾きによって、吐こうとしたものが食道で詰まってしまうおそれがあるため、平らになるように休ませてあげましょう。
また、嘔吐後は消火器への刺激を与えてしまうため、2~3時間は水やおやつを与えないこと、散歩などは控えて安静に過ごさせるようにしましょう。
症状によっては緊急性を要することがありますので、動物病院を受診する際は、通院前に一度電話しておくと、病院も事前準備ができるので安心です。
愛犬の様子をしっかり見守っていきたいですね。
お話を伺った先生/野矢雅彦先生(ノヤ動物病院院長)
参考/「いぬのきもち」2022年3月号『どんなものを吐くの?なんで吐くの?危険な吐き方は? 「犬が吐く」を考える』
文/山村晴美
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。