愛犬といるだけで幸せを感じる―――。おそらく犬と暮らしている人の多くがそう思っているのではないでしょうか。しかしなぜ、みんなが「幸せ」を感じるのか、今回は、犬がいる暮らしが子どもに及ぼすいい影響について、東京都立大学 名誉教授の星 旦二先生と、麻布大学獣医学部 動物応用科学科 介在動物学研究室教授の菊水健史先生に解説していただきました。
撮影/尾﨑たまき
子どもの心身が健やかに育つ
菊水先生らが発表した東京ティーンコホート(※)の研究によると、犬を飼っている10~12才の子どもは心身ともに満たされている度合いが高いことが判明。またミシガン州で行われた思春期の子どもがいる家庭への調査によると、犬を飼っている子どもは自尊心が高く責任感も強いという結果が。いずれも日々のお世話を通じて自ずと学ぶのでしょう。
※東京大学、総合研究大学院大学、東京都医学総合研究所の3機関が連携した研究プロジェクト。
【星先生の体験談】子どもながら弱者を気づかえるようになり、努力する力も向上
「私の子どもは既に成人していますが、幼少期から犬のお世話をしていたからか、親が教えずとも弱い相手を守り助けられるように。何事も地道に続ける力も養われたと感じます。」(星先生)
撮影/尾﨑たまき
子どもの学習能力がアップする
小学3年生を対象にした研究で、犬に本を読むグループとそれ以外のグループとで差を調査したところ、犬に本を読むグループは、ほかのグループより読書速度や正確性などが高まることが示されました。「犬がいることで気持ちが落ち着き、集中して本を読めたのではないかと考えられます」(星先生)。
参考/Marieanna C. le Roux, Leslie Swartz, Estelle Swart (2014) The Eff ect of an Animal-Assisted Reading Program on the Reading Rate, Accuracy and Comprehension of Grade 3 Students: A Randomized Control Study. Child &Youth Care Forum 43,655-673.
読み聞かせる対象を各グループで変えて読書練習プログラムを実行した結果を示す。男女差はあるが犬に本を読んだグループの読解力が高かった。
子どもの発達障がいの症状が軽減する
カリフォルニア大学のSchuckらの研究によると、ADHD(発達障がいの一種)をもつ子どもに対して犬を介入させた治療を行うと、犬がいない場合に比べて子どもたちの問題行動が低下することが判明。犬と交流することで気持ちが安らぎ、行動も安定したと考えられます。
【飼い主さんの体験談】感情表現が苦手だった息子が、愛犬を通じて徐々に変化
「発達障がいで感情表現に乏しかった息子。先代の犬を迎えたところ、愛犬の気持ちをくみとろうとするうちに、徐々に自分の感情も表現できるようになりました。」
撮影/尾﨑たまき
お話を伺った先生/東京都立大学 名誉教授 星 旦二先生、麻布大学獣医学部 動物応用科学科 介在動物学研究室教授 菊水健史先生
参考/「いぬのきもち」2020年11月号『「犬がいると幸せ」の法則。』
写真/尾﨑たまき
文/いぬのきもち編集室
※紹介しているグラフはわかりやすくするために、標題や測定値の名称などを一般的な用語で表現したり、専門的な情報を一部簡略化していたりします。