およそ7割を山々が占め、まわりを海に囲まれた日本。この島国で生まれた犬たちは、じつは世界のなかでも珍しくてとっても貴重な犬たちなんです! そんな日本の「レア犬」たちについて、動物ジャーナリストの藤原尚太郎先生に教えていただきました。
北海道犬
北海道犬
ヒグマに立ち向かってきたアイヌの人々の相棒
かつてアイヌの人々とともに北海道へ渡ったマタギ犬で、別名アイヌ犬とも呼ばれ、国の天然記念物に指定されています。人々とともに狩りを行い、ヒグマやオオカミに立ち向かって集落を守ってきました。厳しい寒さと雪に耐えられる強い体質をもっています。
《北海道犬DATA》
原産地:北海道
体高:オス49 ~ 56㎝、メス46 ~ 52㎝
体重:20~ 30kg
毛色:白、赤、黒、灰、胡麻、虎
秋田犬
秋田犬
東北地方の山岳地帯出身で最大サイズの日本犬
東北の山岳地帯で暮らし、マタギとクマ猟をしていた獣猟犬を祖先にもつ大型犬です。闘犬として活躍させるため、他犬種の遺伝子が混ざっていた時期もありましたが、大正時代の保存活動で復興。日本犬として初の天然記念物に指定されています。
《秋田犬DATA》
原産地:秋田県
体高:オス64~71㎝、メス58 ~64㎝
体重:34 ~ 50kg
毛色:白、赤、虎、胡麻
甲斐犬
甲斐犬
南アルプスで活躍してきた岩場でも走れる猟犬
甲斐(山梨県)の山岳地帯のマタギ犬として活躍し、イノシシやシカ、カモシカなどの獣猟を行っていました。黒い縞の虎毛が保護色となり、岩場でもすばやく走り回って獲物を追う様子から「甲斐虎犬」とも呼ばれ、天然記念物にも指定されている犬種です。
《甲斐犬DATA》
原産地:山梨県
体高:オス47~ 53㎝、メス42 ~48㎝
体重:16 ~ 18kg
毛色:黒虎毛、中虎毛、赤虎毛
紀州犬
紀州犬
熊野の山の中でイノシシ猟をしてきた犬
和歌山県と三重県にまたがる紀伊半島の山岳地帯でイノシシ猟を行い、「熊野猟犬」とも呼ばれていました。現在では家庭犬として暮らしていることが多く、性格も穏やかになってきていますが、頭数自体が減り、絶滅危惧種ともいわれています。
《紀州犬DATA》
原産地:和歌山県・三重県
体高:オス49 ~ 55㎝、メス46~52㎝
体重:20~ 30kg
毛色:白、茶、赤、胡麻
四国犬
四国犬
四国の山岳地帯でマタギと暮らしてきた
高知県・愛媛県・徳島県に連なる剣山、石鎚山などの四国山岳地帯で、クマやイノシシを狩るマタギ犬として活躍していた犬です。天然記念物への指定時は土佐犬と名づけられていましたが、土佐闘犬と区別するため、四国犬と改められました。
《四国犬DATA》
原産地:四国(山岳地帯)
体高:オス49 ~ 55㎝、メス46~52㎝
体重:20~ 30kg
毛色:胡麻、赤、黒
琉球犬
琉球犬
北部を中心にイノシシ狩りで活躍
縄文犬の遺伝子を濃く受け継いでいるといわれる犬種で、1995年に県の天然記念物に指定されています。かつては北部などを中心にイノシシ狩りで活躍していましたが、戦争をきっかけに絶滅寸前に。保存会の活動で回復したものの、現在でも市街地で見かけることは稀です。
《琉球犬DATA》
原産地:沖縄県
体高:オス48 ~ 52㎝、メス47㎝
体重:16~20kg
毛色:アカトゥラー(赤虎)、シロトゥラー(白虎)、クロトゥラー(黒虎)、アカイン(赤犬)
地犬
大東犬
その土地ならではの特徴をもつ「ご当地犬」
地犬とは、代々その土地で暮らし、土地ならではの特徴をもつ犬のこと。長野県川上村の「川上犬」や、熊本県の「肥後狼犬」など種類はさまざまですが、なかには個体の保存が難しく、絶滅寸前の犬種も。
いかがでしたか? 絶滅の危機に瀕した種も多い日本犬。その血を絶やさないよう、私たちにできることを考えてみるのもいいかもしれませんね。
※日本犬のデータは『日本の家畜・家禽』(学研プラス)を参考にしています。
監修/動物ジャーナリスト 藤原尚太郎先生
参考/「いぬのきもち」2020年5月号『激レア犬に会いに行く。』
写真/藤原尚太郎先生
文/いぬのきもち編集室