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【獣医が教える病気予防】犬のワクチンの基礎知識~種類、効果、料金など

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犬の病気の予防「ワクチン」。国に義務付けられている狂犬病ワクチン接種をはじめ、混合ワクチン接種、フィラリア(犬糸状虫)駆虫薬、ノミ・ダニ駆除薬などがあり、何を、いつ、どれくらい接種や投薬したらいいのかを知っておくと、病気の予防に繋がります。しかし、病気を予防するために、ワクチンを接種するに越したことはありませんが、リスクを伴うことも事実です。飼い主も愛犬も、楽しく元気に生活するために、ワクチンのメリットとデメリットの知識を深め、病気の予防について勉強していきましょう。

1. ワクチンとは?

ワクチンとはそもそもなんでしょう。簡単に言うと、あらかじめ注射を打っておくことにより、感染症にかからなくするものです。ただし、全ての感染症にワクチンがあるわけではありません。年々新しいワクチンが開発されていますが、開発の対象となる感染症には優先順位があります。感染力が強いもの、感染すると重症化し入院治療が必要となるもの、もしくは死亡、生涯にわたる後遺症を残すおそれのある感染症などが優先的にワクチン開発されています。つまり、ワクチンがある病気の多くは、感染したときのリスクが高いものなのです。

ワクチンを接種することにより、接種した犬が感染症の発症を防げることは嬉しいことです。しかし、ワクチンの最大のメリットは、その感染症の蔓延を防ぐ、さらには病原体によっては撲滅させることさえ望めることにあります(間接予防効果)。実際に人の痘瘡はワクチンにより根絶されました。小さな地域に限っても、ワクチン接種率が上がればあがるほど、その感染症の蔓延は抑えることができるのです。これは人においても動物においても等しく言えることです。余談ではありますが、人や犬猫以外にも、牛、豚、鶏、さらには植物にまでもワクチンが開発されています。        

2. 犬の混合ワクチンとは?

それでは犬の混合ワクチンとはどういったものなのでしょうか。読んだ字のままですが、複数の病気に対するワクチンを混合しているものです。2種類の病気を予防する2種混合ワクチンや、10種類の病気を予防する10種混合ワクチンなど、複数のメーカーから多様なワクチンが開発されています。狂犬病ワクチンとは異なり、飼い主に混合ワクチン接種の義務はありません。しかし、感染症の蔓延を抑制するため、感染するとリスクが大きい感染症であるため、混合ワクチン接種による予防が望まれます。

また公衆衛生の問題から、ドッグランやペットホテルなど不特定多数の犬と接触する機会がある公共施設では、過去1年以内の混合ワクチンの接種を義務付けている施設が多くあります。(毎年混合ワクチンを接種していない子は施設の利用を禁止するなど)

3.犬のワクチンの種類とその効果

現在、国内で使用されている主な混合ワクチンにはどんな種類があるのか、予防できる病気ごとに紹介します。年々新しいワクチンが開発されているので、今後も種類は増えていくでしょう。

※ジステンパー、伝染性肝炎、パルボはコアワクチンと呼ばれ、強くワクチン接種が推奨されている。

開発されているワクチンの、それぞれの病気について紹介します。

犬ジステンパー

犬ジステンパーウイルスによる感染症です。くしゃみなどからの感染力が強く、過去には大規模な集団感染を起こす事例が多くみられていました。特効薬はなく、二次感染の予防、補液などによる支持療法を行いますが、致死率が高い疾患です。子犬が感染した場合、致死率は80%を超えるとも言われています。現在はワクチンの普及により、患者数は減少しました。犬の感染だけではなく、2015年に中国で絶滅危惧種のジャイアントパンダが犬ジステンパーウイルスにより複数頭亡くなったことでも話題になりました。

■症状:元気食欲低下、発熱、鼻汁、呼吸異常、下痢、嘔吐、神経症状(運動障害、発作)
■感染経路:主に飛沫感染(くしゃみなどのしぶきを吸い込んで感染)

犬伝染性肝炎

犬アデノウイルス1型による感染症です。その名の通り、肝臓の炎症が主な症状ですが、血流にのって、眼や腎臓にも感染を起こします。眼に感染したときは、浮腫などによって眼が青くなることがあります(ブルーアイ)。腎臓に感染したときは、回復後も長期間ウイルスを尿中に排出するため、感染源としての注意が必要です。症状が軽度で済むこともありますが、重度の場合、突然死を起こすこともあります。感染初期は、犬ジステンパーと似た症状を起こします。特攻薬はなく、支持療法で治療します。

■症状:元気消失、発熱、下痢、嘔吐、突然死、ブルーアイ
■感染経路:糞尿、唾液との接触

犬アデノウイルス(2型)感染症(ケンネルコフの一部)

犬アデノウイルス2型による感染症です。主に呼吸器症状を起こし、犬伝染性喉頭気管炎やケンネルコフと呼ばれる疾患の一部です。ケンネルコフは犬アデノウイルス2型だけに限らず、パラインフルエンザウイルスや、細菌などの感染によって起こる呼吸器疾患の総称です。さらにややこしいのですが、犬伝染性肝炎の原因ウイルスと同じアデノウイルスによる感染症のため、混合ワクチンにはアデノウイルスの1型と2型どちらかが含まれていれば、両方の病気を予防することが出来ます(2型のみを含むワクチンが一般的)。特効薬はなく、支持療法で治療します。くしゃみにより感染力は強く、治療にも時間がかかります。しかし、適切な治療をすれば重症化や命にかかわることが比較的少ない病気です。

■症状:咳、鼻汁、発熱、元気消失、食欲低下
■感染経路:飛沫感染

犬パラインフルエンザ

犬パラインフルエンザウイルスによる感染症です。犬アデノウイルス2型と同じく、ケンネルコフの一因となっている感染症です。特効薬はなく、支持療法で治療します。くしゃみにより感染力は強く、治療にも時間がかかります。しかし、適切な治療をすれば重症化や命にかかわることは比較的少ない病気です。

■症状:咳、鼻汁、発熱、元気消失、食欲低下
■感染経路:飛沫感染

犬パルボウイルス

犬パルボウイルスによる感染症です。下痢や嘔吐などの消化器症状を起こし、無治療では約90%が死亡する病気です。特効薬はなく、支持療法により治療します。嘔吐を伴うことが多いため、飲み薬による治療は難しく、注射を使った入院管理のもと治療します。無治療の場合、病期の進行が早く、急死することもある病気ですが、早期に治療すれば治療反応がよい病気です。糞便や嘔吐物との接触により感染します。成犬ではほとんど無症状ですが、母犬から子犬へ胎盤を通して感染することもあります。

■症状:下痢、嘔吐、食欲低下、発熱
■感染経路:糞便、嘔吐物との接触

犬コロナウイルス

犬コロナウイルスによる感染症です。下痢や嘔吐をおこします。単独の感染で重症化することはあまりありませんが、パルボウイルスなどとともに感染すると重症化します。特効薬はなく、支持療法により治療します。

■症状:下痢、嘔吐、食欲低下、発熱
■感染経路:糞便、嘔吐物との接触

レプトスピラ症

レプトスピラという、らせん状をした細菌による感染症です。ここまで紹介してきた疾患と異なり、ウイルスではなく、細菌による感染症です。抗生剤により治療します。発熱、食欲不振、黄疸、粘膜出血などがみられ、肝臓や腎臓を障害し、急性の場合は死亡率が高い病気です。犬の尿の他、ネズミを媒介として感染することが知られています。国内においても、感染しやすい地域があります。

■症状:発熱、食欲不振、黄疸、粘膜出血
■感染経路:尿、ネズミ、川

こうしてみると、ワクチンで予防する病気のほとんどは特効薬がなく、治療が簡単ではないことがわかります。感染するとリスクが高い病気だからこそ、しっかり予防しておきたいところです。

4. ワクチンの同時接種

 人では一般的であるワクチンの同時接種。犬の場合はどうでしょう。実は犬の場合、あらかじめ混合されている1本のワクチン接種こそ一般的ですが、2本以上のワクチンを同時に打つことは一般的ではありません。その一番大きな理由は、ほとんどのワクチンの添付文書(説明書)に「やるな」と書いてあるからです。複数本のワクチンを同時に接種すると重大なことになる、という証明がされているわけではありません。しかし、異なるワクチン、特に他社の製品と同時に接種した場合は副作用が起こっても責任はとれませんよ、ということです。したがって、飼い主からよほど強い要望や事情がない限り、同時に何本ものワクチンを打つことはないでしょう。

5. 料金の相場

動物病院によりワクチン接種の料金は異なります。ワクチンの原価はメーカーにより異なりますが、予防できる種類が多い混合ワクチンほど高くなっていきます。それに伴い、動物病院でのワクチン接種料金もまた、予防できる種類が多い混合ワクチンほど高い傾向があります。相場は地域による差も大きいですが、おおよそ3,000円〜10,000円です。6種は6,000円、8種は8,000円など、種類数✕1,000円としている動物病院が多くみられます。また、ペット保険は人と同じく病気の治療費を負担するものであり、予防に対しては負担してくれないものなので注意が必要です。

6. ワクチンの接種時期・回数・頻度

近年よく話題になり、質問を受けることが多いのが、ワクチン接種をすべき時期・回数・頻度についてです。現在の日本では、獣医の先生や病院によって勧めている方法に差があり、統一されていないのが実情です。今回はそれぞれの立場とその背景について紹介したいと思います。

生後まもない子犬のワクチンについて

生後まもなくの子犬のワクチンについてですが、この時期に複数回ワクチンを接種することに否定的な先生はほとんどいません。人でもそうですが、新生児〜乳児の時期、ワクチンプログラムを組み、複数回に渡ってワクチンを接種します。その一番の理由は、乳児の免疫力が弱いことにあります。胎盤や母乳を経て、乳児は母親から病気に対する免疫をもらいます(母子免疫)。しかしその免疫は永続的なものではなく、約3ヶ月で効果が無くなってきてしまいます。免疫が無くなってしまった乳児は無防備な状態となり、病気に感染しやすくなってしまいます。そこで、ワクチン接種をして病気に対する免疫を獲得するわけです。

では、なぜ複数回ワクチンを接種するのでしょうか。実は、母親からの免疫がしっかり体に残っている間にワクチンを接種すると、ワクチンの効果が充分に得られないことがあるのです。母親からの免疫が体から無くなってしまう時期は、子犬によって差があります。例えば初乳(最初の授乳)を摂取できなかった子犬は、そもそも最初から充分な母子免疫をもらえなかった可能性が高くなります。そこで、母子免疫をもらえなかった子犬にも対応できるよう、早期〜母子免疫消失時期にかけて、複数回ワクチンを接種しているのです。

また、複数回といっても、2回接種で終わる場合と3回接種する場合とがあります。2回接種で終わる場合は、子犬の社会化を優先させているという事情があります。しかし、3回接種するほうがより確実に免疫を獲得することができます。したがって、3回目のワクチン接種の少し前から、感染症をもっていないしっかり管理された犬同士でのみふれあい、その後、3回目のワクチン接種を受ける方法が望ましいでしょう。

1才のワクチンについて

1才のワクチン接種についても、ほとんどの獣医師が推奨しています。初年度ワクチンプログラムが完了してから12ヶ月後に接種するワクチンを、ブースターと呼びます。免疫学的な難しい事情があるのですが、このブースターのタイミングでワクチンを接種することにより、確実な免疫力を取得できるのです。

2才以降のワクチンについて

2才以降のワクチンについては、獣医師の先生により推奨する方法が異なります。従来は年に1回のワクチン接種が最も一般的でしたが、近年、数年に1回のワクチン接種の方法も広がってきています。その最大の理由として、イギリス、オランダ、アメリカ、オーストラリアなどの獣医師によって作られたワクチネーションガイドラインがありますが、これによると、「1才までのワクチンプログラムを適切に完了していれば、毎年ワクチンを接種しなくても免疫力は維持される」と記載されているのです。ただし、一部のワクチンに関してのみ。これにより、ワクチンは3年に1回という新しい認識がインターネットを中心に世間に広まってきています。

 では、2才以降は3年に1回とするワクチンプログラム。この方法のメリットとデメリットにはどういったものがあるのでしょうか。

■メリット
後述する混合ワクチンにおける副作用のリスクが低くなります。また、注射の回数が減るので、愛犬と飼い主の身体的、費用的負担が減ります。

■デメリット
3年に1回でよいと言われている病気のワクチンは一部の病気であるため、毎年接種が必要な病気の予防ができなくなります。現状、国内において3年に1回でよいと言われている病気だけの混合ワクチンはなく、また毎年接種が必要な病気だけの混合ワクチンもありません。したがって、両方とも予防したければ、結局、両方含まれる毎年のワクチン接種が必要になるのです。また、日本の環境、使われているワクチンに基づいて作られたワクチンプログラムではないこともあり、3年に1回のワクチン接種で免疫力が維持される保証はありません。(免疫力を測定して不十分だったという事例もあります。)

すべての犬において、毎年、免疫力を測定して管理できるのであればまだしも、単純に3年に1回の接種に減らしただけでは、感染症が蔓延するリスクが高くなります。日本でのワクチン接種率は、充分高いとは言えません。まだ感染症の拡大リスクがある状況でのワクチン接種回数の削減は、時期尚早にも思えます。
 また、地域により感染リスクが高い病気もあります。獣医師と相談の上、その子のライフスタイルにあったワクチンプログラムを組みましょう。

7. 接種を控えるべき場合

犬の健康状態によっては、ワクチンを接種しない方がよい場合があります。人でもそうですが、体調が悪いときはワクチン接種を避けるようにと指導されます。理由としては、ワクチンはそもそも弱らせた、もしくは無力化された病原体であるため、体の負担となりうるからです。特に無力化ではなく弱らせたタイプのワクチン(生ワクチン)は、免疫力が弱い犬に打った場合、病原体が増殖する可能性を否定しきれないのです。

また、他の疾患が隠れていた場合、ワクチン接種後の体調の変化がワクチンによるものなのか他の疾患によるものなのかという判断が難しくなります。発熱、食欲不振など体調になんらかの異常を認めた場合、妊娠している場合、寄生虫などの感染が認められた場合は、ワクチン接種を見送りましょう。

8. 副作用

ワクチンを打ったために起こる、病気の予防以外の作用を副作用と呼びます。一般的には、ワクチン接種後のアレルギー反応を指します。ワクチン接種後、十数分くらいから起こる重篤な反応(アナフィラキシーショック)もあれば、日をまたいでから起こるアレルギー反応もあります。

アナフィラキシーショックは、人では蕎麦アレルギーや乳製品アレルギーを持つ人がそれを食べた後、激しいアレルギー反応を起こして死亡したという事例が有名です。ワクチン接種後すぐに起こるアナフィラキシーショックは、数万頭に1頭あるかないかと言われています。犬でもアナフィラキシーショックを起こすとやはり大変危険な状態で、治療が奏功しなければ命を落とすこともあります。一方、遅く出るアレルギー反応は比較的軽度なことが多く、アレルギーを抑える薬により速やかに回復するか、もしくは自然に回復することもあります。したがって、ワクチン接種後30分程は病院内か病院近辺で待機し、明らかな体調の変化、元気消失、呼吸の異常などが認められたら、すぐに治療できる環境にしておくことが望ましいです。また、帰宅後、顔全体が明らかに腫れあがっている、体を痒がっている、呼吸が苦しそうなどの様子が認められたら、ワクチンアレルギーの可能性が高いので動物病院に連絡してください。

ワクチンの副作用はワクチンの有効成分に対する生体の反応と、その他の成分に対する生体の反応とに分けられます。同じ病気に対するワクチンでも、メーカーにより使われている有効成分は若干異なります。そのため、メーカーを変えたらアレルギー反応が出なくなったという事例も多くあります。また、その他の成分もワクチンには必要不可欠なものではありますが、製薬会社さんたちの努力で、その他の成分をより抑えた副作用の少ないワクチンが開発されています。

9. ワクチンを理解し選択する

良い評判も、悪い評判もある混合ワクチン接種。しかし、全ての混合ワクチン接種を中止すれば、危険な感染症が蔓延してしまうことは明らかです。ワクチンによる個体のメリットとデメリット、社会のメリットとデメリットを踏まえ、その子にとって適したワクチンプログラムを組んで健康な生活を送りましょう。

監修/滝田雄磨(SHIBUYAフレンズ動物病院 院長)

 

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