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【獣医師監修】犬の歯周病の原因や症状から治療と予防までを専門医が解説
犬の歯周病は、歯垢(プラーク)が蓄積して起こる歯周組織の細菌感染による炎症性疾患で、歯垢や歯石、口腔内の細菌が原因となります。歯周病は重症化すると全身疾患を招く恐れのある病気です。歯周病の進行と治療方法、全身麻酔での処置や歯周病予防について紹介します。
三浦 貴裕 先生
町田森野プリモ動物病院院長
相模大野プリモ動物病院院長
酪農学園大学獣医学部獣医学科卒業
●資格:獣医師/日本小動物歯科研究会 歯科認定レベル全過程修了
●所属:日本小動物歯科研究会/比較統合医療学会
●主な診療科目:一般診療(外科・内科)/救急診療/歯科・口腔外科
犬の歯周病はどんな病気?
全身疾患を引き起こす
愛犬の口臭に注意
動物病院によっては、オーラストリップ®というチェックシートで、犬の口臭の原因となるものを簡単に測定できます。
犬の歯周病の原因
細菌
歯周病になりやすい犬種としては、ミニチュア・ダックスフンドやトイ・プードルなどが挙げられますが、どの犬種でも歯周病になる可能性があります。
お手入れ不足
歯周病治療の流れ
私の場合は、歯周病の治療を「診察→治療提案→手術(処置)もしくは定期健診」という流れで行っています。
①診察
②治療提案
③手術(処置)もしくは定期健診
犬の歯周病の症状と治療方法
症状が軽度の場合は、全身麻酔下で超音波スケーラーを用いながら、歯石除去や歯周ポケットをきれいにする処置を行います。犬に過度の恐怖を与えたり、施術中に動いて出血を起こさないよう、安全のためにも、全身麻酔は必要な処置です。
内科的な治療として抗生物質などの投薬を行う方法もありますが、症状が進んでしまった場合は、抜歯や歯肉を切開するような手術などを行うこともあります。
高齢犬(老犬)や持病のある犬の場合は、麻酔のリスクについてかかりつけの獣医師と相談した上で治療方針を決定します。
ステージ1または初期症状
治療方法:歯垢・歯石除去、ポリッシング処置(歯の研磨)が行われます
ステージ2または軽度
治療方法:歯垢・歯石除去、ルートプレーニング(歯の根元を滑らかに整える処置)、ポリッシング(歯の研磨)が行われます。
ステージ3または中度
治療方法:歯垢・歯石除去、ルートプレーニング、歯肉縁下掻把(キュレッタージ:歯周ポケット内の感染を起こしている歯肉をこそぎ取ること)、ポリッシング(歯の研磨)あるいは歯肉粘膜フラップを作成して目視下での治療(歯周外科治療)が行われます。
ステージ4または重度
治療方法:抜歯や縫合処置が行われます。場合によっては歯周組織再生治療が行われるケースもあります。
※ここからは、重症の歯周病でみられる代表的な症状をご紹介します。
くしゃみや鼻水が出る
しかし、歯周病で歯根の周囲の骨が溶けて鼻腔とつながってしまうと、鼻水やくしゃみが出ます。さらに進行すると歯が抜け落ちて、完全に歯茎に穴が開いた状態になります。
歯槽膿漏(歯の脱落・自然に抜ける)
また、歯が自然に抜けてしまったことで「これでもう痛くない」と判断するのも要注意です。歯がキレイに抜けずに、歯根(歯の根っこ)が折れて歯茎内に残ってしまうことがあります。
この場合は、次に紹介する根尖膿瘍を起こし続けることがあるため、歯が抜けてしまったときはどんな状態であっても一度動物病院を受診するようにしてください。
根尖膿瘍(こんせんのうよう)
顔(目の下あたり)から膿が出るのは眼窩下膿瘍という状態で、根尖膿瘍の一つです。特に上顎第4前臼歯および第1後臼歯が原因で生じます。
顎の骨折が起こる
犬の歯周病を予防する方法は?
日々のデンタルケアが大切
歯みがきを嫌がらなければ褒めておやつを与えて、犬が嫌がったら無理をせずにすぐにやめましょう。歯みがきに良い印象を持たせるのがポイントです。少しでもケアをすることが歯周病予防につながります。
デンタルケアのポイント
ジェルやシートタイプのデンタルグッズを使用したケアも重要ですが、一番効果が期待できるのは歯ブラシです。
愛犬の歯磨きを行う際に、ほとんどの方はブラッシングの力が強すぎて歯を痛めてしまうので、さするような力具合で行ってください。ブラシの当てる角度は30-45度を意識しましょう。
多くの飼い主さんが愛犬の歯磨きを行う際に口を必死に開けようとしますが、これは犬が嫌がるだけです。唇を軽くめくったり、口角の部分を後ろにひっぱるだけでほとんどの歯は見えるのでケアができます。口角を軽く引っ張り、犬が笑っているように見える状態でケアをすることがポイントです。
犬の歯周病 Q&A
Q:犬の歯周病は人にうつるの?
Q:犬の歯周病、受診の目安は?
愛犬の歯のチェックポイント
- しっかりと食べることができているか(硬いものを食べることができるか、左右の顎を使っているか)
- 口を閉じることができているか、あくびができているか(大きな口を開けることができるか、舌が出たままになっていたり、よだれが出たりしていないか)
- 口を気にする様子があるか(前足で口元をこすっていないか、口を触られると嫌がったりしないか)
なお、再診間隔は程度によりますが、数か月(3ヶ月程度)おきに定期検診をお勧めしています。
Q:犬の歯周病の治療は、全身麻酔じゃないとダメなの?
またキュレットなど鋭利な器具を口の中に入れて行う治療なので安全面からもおすすめできません。
アメリカの獣医歯科学会での基準では、大まかにいえば年に1回全身麻酔をかけて歯科処置をすることを推奨しています。治療を行わないで歯周病が進行する方が、全身へのリスクが高まるといわれています。私は飼い主さんにその話をした上で、3年に1回は全身麻酔をかけた治療を行うことをおすすめしています。
文/maki
※症例写真以外、記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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