犬という動物や犬種ならではの見た目の特徴には、そうならざるをえなかった理由がありました。そう、犬の見た目は機能美あふれる〝デザイン〞だったのです。哺乳動物学者の今泉忠明先生に、犬の秀逸なデザインとその背景について教えていただきました。
茶色い毛が多いのは、風景に同化するためだった!
犬にはさまざまな毛の色がありますが、なかでも多いのが茶色。そのワケは、野生時代に木や草、土など周囲の色になるべく溶けこんで、獲物や敵に気づかれにくくなるためでした。茶色以外の毛色は、人と暮らすようになってから増えていったのです。
ちなみに、“ウェスティ”の白色の毛は、キツネと勘違いされないためだった!
猟犬として誕生したテリアの一種であるウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア。キツネと間違えて撃たれないために白色が定着したという説が。
猟犬の塞がった垂れ耳は銃声から耳を守るヘッドフォン代わりだった!
犬の祖先は立ち耳。垂れ耳は偶然生まれたもので、それを猟犬であれば「狩猟のときの銃声が響きにくいだろう」と、猟犬として交配したといわれています。しかし、現在では立ち耳でも垂れ耳でも聴力は同じだということが判明……。犬種のチャームポイントとなっています。
長い鼻面の犬には、ニオイを感じる細胞が大量にある!
ニオイを感じる「嗅細胞」は、鼻の内部「鼻腔」の上部にある「嗅上皮」にあり、嗅細胞は嗅上皮の面積に比例して増量するといわれています。鼻面が長ければ、嗅上皮の面積も大きくなり、嗅細胞がぎっしり! ジャーマン・シェパード・ドッグやビーグルの鼻がとくにきくのは長い鼻面のおかげだったのです。
ちなみに、鼻の穴の「横の切れ目」はニオイの方向を特定するため、「中央の溝」はニオイを集めるためのもの!
犬の鼻の穴には、横に切れ目がありますが、これはニオイがしてくる方向をキャッチするためのもの。また、鼻の中央に溝がありますが、これは水分を運び、鼻を湿らせておくことでニオイの分子を吸着するためのものです。どちらも役立つデザインといえるでしょう。
デザインされた犬の体には、なるほど!と納得できる理由があるんですね!
お話を伺った先生/哺乳動物学者 今泉忠明先生
参考/「いぬのきもち」2022年8月号『犬のカラダなるほどデザイン』
写真/尾﨑たまき、殿村忠博、佐藤正之
文/いぬのきもち編集室