14才を超えた犬の40%が発症するというデータもあるほど、身近な病気のひとつである「認知症」。生活に影響が出る症状が多々現われるため、飼い主さんはどんな症状が出るのか、どういう対処をすべきなのかを、知っておくことが大切です。
そこで今回は、「徘徊」「夜鳴き」「どこかに挟まる」など、行動に関する症状のフォロー方法を、獣医学博士の小澤真希子先生に伺いました。
認知症とはどういう病気?
犬の認知症とは、加齢によって脳の機能が低下し、生活に影響が出るようになる病気です。症状は個体によって異なりますが、徘徊や夜鳴き、そそうなど、さまざまな症状が現われます。高齢になると発症リスクが上がるため、どんな犬でもなりうる病気のひとつです。
同じ所をぐるぐる回るようになったら、どうしたらいい?
認知症の犬が徘徊する理由は、どこかに行きたいわけではなく、認知機能の低下から焦燥感や不安を感じている場合がありその気持ちを紛らわせていると考えられます。ぐるぐる回っているときは、神経異常が原因で体のバランスが悪く、一方向に進み続けるため回ってしまうと考えられます。
フォロー方法
部屋の安全を確保したうえで、ある程度自由に歩かせてあげるのが望ましいです。例えば、床を滑りにくくする、家具の角に緩衝剤を取り付ける、段差をなくすなど、愛犬がケガをしにくい環境を作ってあげましょう。
ぐるぐる回る場合は、サークルなどで範囲を区切り、柵の内側にマットを張って、その中を歩かせると安全ですよ。
夜中に鳴き続けるようになったら、どうしたらいい?
犬の夜鳴きには、さまざまな理由が考えられます。のどの乾きや排せつ欲などの生理的な欲求で鳴いたり、体の不調や違和感を訴えるために鳴いたりするようです。なかには、認知症以外の病気が原因で鳴いていることも少なくありません。
フォロー方法
夜鳴きが酷い場合は、まずは病気が潜んでいないか動物病院に相談を。さまざまな検査を受けないと病気を見つけられず、ただの「認知症」と診断されることもあるので気を付けて。
生理的な欲求で夜鳴きしていると考えられるときは、寝る前に水を飲ませたりトイレに連れて行ったりして、欲求を満たしてあげてくださいね。
部屋の隅や隙間に入って出られなくなったら、どうしたらいい?
認知症によって徘徊している犬は、目的なくただ前進し続けます。そのため、家具の間などの狭いところに挟まってしまうことも。そのうえ運動機能に障害が起きていることが多いため、後ろに下がったり体の向きを変えたりできず、ただ困惑してじっとするしかないのです。
フォロー方法
棚の下やテレビの後ろなど、犬が挟まりそうな隙間はあらかじめふさいでおくのがベスト。行動範囲が広いとトラブルも増えがちなので、犬が行ける範囲をある程度区切るのもおすすめです。また、ベランダは柵に挟まったり転落したりなどのリスクがあるので、犬が認知症になったら入れないようにしておきましょう。
愛犬が幸せだと感じながら生きていけるよう、できる限りの工夫をして過ごしていけるといいですね。
お話を伺った先生/小澤真希子先生(獣医学博士 獣医行動診療科認定医)
参考/「いぬのきもち」2022年9月号『シニア犬の半数近くが発症する!? 理由がわかれば「夜鳴き」「徘徊」「そそう」も正しくフォローできる! 認知症の犬はどう感じてる?』
文/東里奈
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
※犬の認知症(高齢性認知機能不全)は、その症状や状態が病気なのか老化によるものなのか、現段階ではまだはっきり解明されていない部分もあります。