犬も人と同じようにおならをします。通常は飼い主さんが気付かない程度に出ていますが、静かな時間を過ごしているときに「プッ」と聞こえると、ビックリしてしまいますよね。犬自身も驚くことのあるおならには、病気のサインが隠されていることも…。
「プッ」と出てしまうおなら。心配すべき?
お昼ご飯を食べ終えて、リビングルームで愛犬とまったりタイム。「さて、読書でも」とソファに腰掛けると、愛犬のいる方から「プッ」と音がしました。飼い主さんは「おなら?」と、愛犬に視線を送りますが、愛犬は「なんの音!?」と、ビックリ!周囲をキョロキョロして、音源を探し始めます。
愛犬のそんなかわいい姿を見られる午後は、最高のひと時ですね。しかし、犬自身が自分のおならに驚くということは、頻繁にしているというわけではないのでしょう。飼い主さんからしても、急に聞こえた「犬のおなら」に、何かの病気のサインなのかと心配になってしまいますよね。
「犬のおなら」原因は?
「おなら」とは、小腸や大腸などにたまった余分なガスが肛門から出る現象のことを指します。では、余分なガスとは何なのでしょうか?
空気を飲み込んでいる
呼吸時や食事の際に一緒に空気を取り込んでしまうと、おならが出る原因となります。特に鼻がつぶれている短頭種の犬種(ボストン・テリア、フレンチ・ブルドッグ、狆、パグなど)の場合、顔の構造的に鼻呼吸が下手なので、口呼吸になる場合があります。口で呼吸をしていると大量の空気を取り込みやすくなるため、おならをしやすくなります。
また、食事の際に空気を取り込みやすい犬の特徴として「早食い」があげられます。ムシャムシャと一心不乱に素早く食べる犬は、食べ物と一緒に大量の空気を飲み込むため、腸内にガスがたまりやすくなるのです。その他にも、太っている犬や運動直後の犬は呼吸が乱れて口呼吸をするため、空気を取り込みやすいのでしょう。
食べ物を消化する際にガスが発生
犬の腸内にはさまざまな細菌が生息しています。この腸内細菌は、フードを消化する際に副産物として体内でガスを発生させます。犬が消化しきれない量の栄養分を与えると腸内細菌が活発になり、ガスが発生しやくなります。特に食物繊維を多く含む食べ物(大豆・ピーナッツ・キャベツ・ブロッコリー・カリフラワーなど)は腸内細菌を発生させやすいので、与え過ぎは禁物です。乳製品も腸内細菌を活発にさせます。
老化が原因でガスが発生
年齢を重ねると、腸の働きが弱くなってきます。腸の働きが弱くなると、今まで消化できていたフードが消化しきれないまま送られてしまいます。そうすると腸内で悪玉菌が増え、おならが臭く感じることがあります。
犬のおならは頻度や臭さによって病気を疑おう
おならの回数が多くなったり、音が大きくなったりしたら、胃腸にガスがたまっているのかもしれません。まずは消化不良を疑いましょう。ストレスも腸内環境を乱す原因となり、病気の可能性も潜んでいます。急におならの回数が増えたり、おならが臭く感じるようになったら注意が必要です。
炎症性腸疾患
食べ物の変化や、ストレスに弱い犬、便秘や下痢などの症状が起こりやすい犬に注意が必要な病気です。「炎症性腸疾患」とは、腸の粘膜への浸潤を特徴とする原因不明の慢性腸障害です。別名「IBD」とよばれることもあります。
「昔から、お腹が弱いから」といって油断していると、ミドル世代になってからの慢性化や、本格的な腸の病気に進行する場合もあります。腸内環境が乱れているので、臭いおならが出ます。
胃炎(急性・慢性胃炎)
「胃炎」は、胃の粘膜が炎症をおこす病気です。腐った物を口に入れたり、有害なものや異物を食べたり、病気治療のための薬が胃の粘膜を刺激したりすることで疾患することがあります。症状としては嘔吐を繰り返したり、水をよく飲むようになったり、食欲がなくなるなどありますが、腸へも負担がかかるとおならが増えてくるでしょう。多くの場合は急性胃炎ですが、治らない場合は慢性胃炎へ移行してしまうことがあります。
腸内腫瘍
大腸がんや直腸がんなど、腸内に腫瘍があるとニオイの強いおならが増えます。このほかにも、おならの回数が増えたり、ニオイがきつくなったりする病気があります。少しでも異常を感じたら獣医師へ相談しましょう。
おなら対策はフードの見直し!
子犬の場合は、寄生虫が完成している可能性もあります。ストレスによって胃の機能が低下すると、消化不良の食物が腸にたまるのでおならが増えることもあります。他にどこかに痛みがあると早く浅い呼吸(パンティング)が増えるので飲み込む空気の量が増え、おならが増えることもあります。
病気が原因のおならではない場合は、フードの与え方やフード自体を見直しましょう。
フードの与え方を変える
早食いが原因で空気を飲み込んでしまう場合は、食事を少量ずつ与えたり、エサ皿を小さくして複数に分けて与えたりしてみましょう。早食い防止のエサ皿も販売されているので、検討してみてください。消化不良のときは食べやすいようにフードをふやかしたり、ウェットタイプに変えてみたりしてもいいかもしれませんね。
フードの内容を変える
フードの内容は、腸内細菌に大きく影響します。おならが多い場合は、食物繊維を減らして乳製品を食べさせないように工夫しましょう。なお、フードを変更するときは、1週間以上かけてゆっくりと慣らしていってくださいね。
肛門腺絞りは大切なケア!
肛門の左右に袋、肛門嚢(こうもんのう)があります。その袋にたまった分泌液を肛門嚢から絞り出すことで、おならのニオイの改善につながることがあります。肛門周りが汚れる作業なので、シャンプー時に行うのがいいでしょう。
愛犬の健康管理は、飼い主さんの責任です。ときどき「プッ」と出るかわいい「おなら」なら心配いりませんが、おならの頻度が増えたりニオイが臭く感じたりした場合は、獣医師さんへの相談が必要です。
参考/「いぬのきもち」特別編集『子犬と仲良くなる育て方 健康・お世話編』
「いぬのきもち」2016年6月号『犬の"更年期"に気をつければ長生きにつながる!油断しがちなミドル世代の過ごし方』
監修/石田陽子先生(石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長)
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。