オスとメスでは体のつくりやかかりやすい病気、起こりうるトラブルがそれぞれ異なります。そこで今回は、オス犬の体や性格の特徴、気をつけたい病気やオスに起きやすいトラブルについて「石田ようこ犬と猫の歯科クリニック」院長の石田陽子先生に伺いました。
オスの犬の体・心の特徴
体の特徴1:オス特有の生殖器がある
精子をつくったり、オス特有のホルモンを出したりする機能をもつ「精巣」や、精液の一部を分泌したり、生殖をサポートしたりする「前立腺(ぜんりつせん)」、メスの膣(ちつ)に挿入するための「ペニス」など、オス特有の生殖器があります。
体の特徴2:尿道が細く長い
膀胱(ぼうこう)からオシッコの出口までの管のことを「尿道」といいます。オスはメスに比べるとこの尿道が細く、かなり長い傾向にあります。
去勢手術をしていないオスは「縄張り意識がある」「活発で元気」「攻撃的」な傾向が
去勢手術をしていないオスは、オス特有のホルモンの影響で、縄張り意識が強い、活発で興奮しやすいなどの傾向が見られます。また、怖いもの知らずで闘争本能も旺盛のため、場合によっては攻撃的な行動を見せることもあります。
オスの犬が気をつけたい病気とは
オスの体の仕組み上なりやすい病気、オス特有の本能から注意したいトラブルがあります。
若いうちに去勢手術をすればかかりにくくなる病気1:前立腺肥大
前立腺肥大(ぜんりつせんひだい)は、オスのホルモンの影響で前立腺が大きくなって直腸などを圧迫し、排便・排尿障害などを引き起こす病気で、平べったいウンチが出るのが特徴です。
おもにシニア期に発症しますが、若いうちに去勢手術をすればほぼ発症することはないでしょう。治療でも去勢手術が行われます。
去勢手術をすればかかりにくくなる病気2:精巣腫瘍
精巣腫瘍(せいそうしゅよう)は、精巣に腫瘍ができる病気です。おもに、精巣全体がふくれて脱毛や貧血などが見られる「セルトリ細胞腫」、鼠径(そけい)部などが腫れることが多い「精上皮腫」、シニア犬に多く、目立った症状が出にくい「間細胞腫」の3種類があり、悪性・良性どちらの場合もあります。
腫瘍が発生する前に、去勢手術で精巣自体をなくせばリスクはありません。
去勢手術の有無に関係なく気をつけたい病気1:停留精巣
誕生時は腹部にある精巣ですが、生後8週間までに陰嚢(いんのう)内に下りてきます。しかし、遺伝的な要因で陰嚢外にとどまった状態になることがあり、これを停留精巣(ていりゅうせいそう)といいます。この状態は精巣腫瘍のリスクを高めるため、停留精巣の犬は早めの去勢が望ましいでしょう。
去勢手術の有無に関係なく気をつけたい病気2:尿道結石
尿道結石(にょうどうけっせき)は、膀胱内のオシッコ成分が結石化し、尿道を傷つけたり、尿道に詰まったりする病気です。尿道が狭いオスは結石が自然に排出されにくく、構造上詰まりやすいため、重症化しやすい傾向にあります。軽度なら食事内容の見直しや投薬を行い、重度の場合は外科手術で治療をします。
オスの犬ならではのトラブルにも注意!
未去勢のオスは、オスのホルモンの影響で、以下のような本能的な行動からくるトラブルが多めです。
マーキング
「ここは自分の場所」とほかの犬にアピールするために、自分のテリトリーの境界にオシッコする行為をマーキングといいます。家の中でのそそうにつながるなど、生活に支障が出るケースも多いです。
脱走や迷子
発情したメスのニオイにつられて、オスが衝動的にメスに近づきたくなってしまうことがあり、それが原因で脱走や迷子のトラブルになるケースも。交通事故に巻きこまれる危険もあります。
ケンカによるケガ
個体差はありますが、闘争本能が強いオスは怖いもの知らずで、気に入らない相手に向かっていくことがあります。また、興奮しやすいため、ケガを伴うケンカに発展することもあります。
体の構造やホルモンの影響で起きやすいオス特有の病気やトラブル。去勢手術をすることでこれらの病気にかかるリスクを下げたり、トラブルを減らしたりできる可能性もあります。今回ご紹介した内容も参考に、オスの体について理解を深め、病気の早期発見やトラブル回避につなげてくださいね。
お話を伺った先生/石田陽子先生(「石田ようこ犬と猫の歯科クリニック」院長)
参考/「いぬのきもち」2025年3月号『去勢・避妊手術での予防効果もわかる! オス・メス別 気をつけたい病気・トラブル』
文/宮下早希
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。