今回は、トリマーの荒木美千子さん(以下、荒木さん)に伺った、犬のシャンプーの手順やコツ、注意点のほか、犬のシャンプーに関する疑問についてご紹介します。「いぬのきもち ホームドクター」が選ぶおすすめ商品もご紹介するので、参考にしてみてください。
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犬をシャンプーするときの手順とコツ
犬を自宅でシャンプーするときは、事前によくブラッシングをして、汚れや毛玉を取り除いておきましょう。毛玉が残ったままだと、水で固まってほぐれにくくなり、ほぐすときに犬に強い負担がかかってしまいます。それでは、シャンプーの手順を見ていきましょう。
手順1:お湯をかける
中くらいの圧に設定したシャワーヘッドを地肌につけるようにして、背中〜胴体(お尻含む)→足→頭〜顔の順で、毛の根元からぬらしましょう。頭にかける際は、鼻に水が入らないように注意してください。
シャワーが苦手な犬はスポンジでぬらすと◎
シャワーが苦手な犬には、桶などにお湯をためてスポンジや海綿に含ませて、犬の体を少しずつぬらしましょう。シャワーや手桶などから直接かけるのはNGです。
お湯の温度は35〜37℃がおすすめ
お湯の温度は犬が触って「ぬるい」と思うくらいが適温です。また、夏も体を冷やさないようお湯で使い、浴室で洗うようにしてください。
手順2:1回目の汚れ落とし洗い
シャンプー液はあらかじめできるだけモコモコに泡立てておき、その泡を全身の毛につけてなじませるようにやさしくもんで洗いましょう。しわの多いタイプの犬の場合は、薄めたシャンプー液を浸したタオルで軽くなでて洗ってみてください。
シャンプーやリンスを皮膚に直接つけるのは絶対NG
先にシャンプーを泡立てたり、お湯で薄めたたりしたものを皮膚ではなく、毛につけていきます。ゴシゴシ洗いも必要ありません。
手順3:2回目の仕上げ洗い
1回目の泡を完全に流しきったら、再度泡立てたシャンプー液を全身につけます。耳の裏・わき・内股・指の間を念入りに洗って、しっかり流しましょう。
手順4:トリートメント
トリートメントはもしあればでOKです。直接皮膚にはつけず、お湯で薄めたものを少しずつ全体にかける、またはスポンジに含ませて毛につけましょう。
手順5:洗い流す
最後は頭から流し、シャンプー液などをしっかりと取り除いてください。目に多少のお湯がかかっても、そこまで気にする必要はありません。
2度洗いする理由とは? シャンプーする際の注意点
荒木さんに2度洗いする理由や、愛犬をシャンプーする際の注意点を伺いました。
2度洗いが必要な理由とは?
「犬の皮膚はとてもデリケートなので、泡で汚れを浮かせて、自分の髪を洗う以上にやさしく丁寧に洗って乾かしてあげる必要があるのです。
1回目は全体、2回目は汚れがたまりやすい箇所と分けて洗うことで汚れ落ちもよくなり、効率よくスムーズに進められます。ただし、シニア犬は負担が大きいので一度洗いで大丈夫です」(荒木さん)
無理にシャンプーするのはNG
「自宅で無理にシャンプーをして、シャンプー苦手意識が高くなるのもいけないので、シャンプー嫌いな犬や、飼い主さんが難しい場合はサロンへ頼むといいでしょう。また、シャンプーは犬の負担にならないよう、10~15分くらいで切り上げることも大切です」(荒木さん)
犬が滑りにくくなる工夫をしよう
「浴室は滑りやすいので、マットやバスタオルを敷いてシャンプーするようにしましょう。足元が不安定なことは犬にとって不安要素のひとつです」(荒木さん)
犬のシャンプー後の拭き方&乾かし方のコツ
次はシャンプー後の乾かしのコツを見ていきましょう。
手順1:タオルで水分を吸い取る
まず、大判のタオルをシャワー後の犬の体全体におおいかぶせて、上から軽く押して水分を吸わせましょう。マイクロファイバー素材は、吸収が速く便利です。
タオルドライは浴室で
犬がブルブルッと全身を震わせると水分が飛び散るので、タオルドライは浴室内で行うのがおすすめです。タオルをこまめに換えると、乾きも早くなりますよ。
ワシャワシャとこすらない
タオルでこすると、摩擦で毛玉ができやすくなってしまうので注意しましょう。また、かためのタオルも皮膚への刺激が強いため、やわらかいものを使ってあげてください。
手順2:ドライヤーで乾かす
浴室から移動して、スリッカーブラシでとかしながらドライヤーを当てて乾かします。犬が逃げて走り回らないよう、室内用リードで固定するといいでしょう。
乾かす順番は、おなか→背中→足→顔
冷えを防ぐため、内臓に近いところから乾かしてください。ドライヤーは15cm以上離して、犬がやけどしないように気をつけましょう。
毛の流れと逆に風を当てよう
中に空気を含ませるように毛の流れと逆に風を当て、スリッカーブラシでブラッシングしましょう。地肌からしっかりと乾かすことができます。
手順3:乾きムラがないかチェック
手のひらで体全体を触り、冷たいところがないか確認してください。毛が湿ったままだと皮膚トラブルになりやすいため、完全に乾かしましょう。
手順4:最後に耳そうじをして完了
耳の中の汚れは、犬がブルブルッとした際に表面に浮き上がっているもの。コットンなどで軽く拭き取ればOKです。奥まで拭かないように注意してください。
犬のシャンプーにまつわる疑問を解決!
ここからは、荒木さんに伺った「犬のシャンプーにまつわる疑問」をご紹介します。
犬がシャンプーを嫌がる原因とは?
「犬がシャンプーを嫌がる原因としては、シャワーの音や水圧など考慮せず、いきなり頭からかけたり、洗うことに専念して力が入ったりした、また、やさしい声掛けがかかったなどが考えられます」(荒木さん)
初めて愛犬をシャンプーするときに大切なことは?
「まず『きれいにしようね』『偉いね』とやさしく声をかけるのは必須です。浴室は楽しい場所だと思ってもらうために、浴室でおもちゃで遊んだり、おやつをあげたりしてもいいと思います。
シャワーの音はビックリしてしまうので、初めての場合は弱い水圧に。弱い水圧にすると温度が下がることもあるので、水圧はそのままでシャワーヘッドにタオルを巻いて音を消すのもいいと思います。ペット用のタブにお湯をためて、スポンジに含ませてかけるのもおすすめです」(荒木さん)
シャンプーの頻度はどのくらい? 犬種での頻度の違いは?
「シャンプーは多くて1ヶ月に2回がいいと思います。犬種での差は聞いたことがありません。皮膚疾患があれば、かかりつけの先生のご指導のもと、決められたシャンプー液や、頻度でケアする必要があります」(荒木さん)
長毛種と短毛種でシャンプーやり方は異なる?
「長毛種も短毛種もブラッシング、シャンプー、ドライが基本です。使用するシャンプーで仕上がりに差があるものもありますが、それはおそらく、サロン用としてしか販売されないと思います」(荒木さん)
子犬はいつからシャンプーできるの?
「子犬はブリーダーさんのもとで1回目のワクチンを接種したあと、ワクチンから期間空けてからすでに1回くらいはシャンプーしていると思いますので、ブリーダーさんから迎えてお家に慣れてきた頃からならしてもいいのではないでしょうか。サロンでもワクチン接種から1週間〜2週間空いていればシャンプーはお受けしています」(荒木さん)
顔まわりを洗うときに気を付けることは?
「トリマーなどが手際よくシャンプをする場合と違って、一般の飼い主さんの場合は、目や耳にシャンプーが入らないようにしたほうがいいでしょう。目に入った場合はすぐ洗い流してください。耳はコットンで耳栓をするとシャンプー剤が入ることを防げます」(荒木さん)
シャンプーするときにあったほうがいい道具とは?
「シャンプーする際に狭く囲われていると犬が暴れにくくなるので、ベビーバスやペット用のバスはあるといいと思います。また、お話ししたとおり、浴室で犬が滑らないように敷く、タオルやマットがあると安心です。
そのほか、泡立てポンプの泡をその都度押してつけていては時間がかかりすぎるので、始めに桶にたっぷり泡を出して用意するなど、時短の工夫をしてあげるといいでしょう」(荒木さん)
乾かすときのコツを教えてください
「シャンプーの時点できちんと汚れを落として、タオルでしっかり拭くことが大切です。自宅用ドライヤーは選べるのであれば、なるべく風力が強いものを選ぶといいでしょう」(荒木さん)
人用のシャンプーは使ってもいい?
「人の皮膚は弱酸性で、犬の皮膚は中性~アルカリ性ですので、犬用のシャンプーを使ってください。ベビー用のシャンプーならいいのでは?と思う人もいるかもしれませんが、犬の皮膚は人の赤ちゃんの皮膚より弱いので、やはりNGです。
どうしても洗いたいけれど、手元に犬用のシャンプーがない場合は、お湯でしっかり洗うだけでもだいぶ汚れは落ちますよ」(荒木さん)
シャンプーに含まれる香料の犬へのストレスは?
「犬用シャンプーはそもそも、香料へのストレスなども考慮して作られていると思いますので、基本的には問題ないでしょう。ないとは思いますが、犬の苦手な柑橘系のニオイのものがあった場合は、使用を避けてください。
ちなみに、サロンで使うシャンプーはニオイで選ぶことはありません。シャンプーはニオイを消すためのものではなく、あくまでも、皮膚や被毛の健康を保つためのものです。大抵のサロンでは犬の皮膚や被毛のコンディションに合わせて選んでいますよ」(荒木さん)
「いぬのきもちSTORE」が選ぶ! おすすめ商品ランキング
最後に「いぬのきもちSTORE」が選んだおすすめ商品をランキング形式でご紹介します。ぜひ今後の商品選びの参考にしてみてくださいね。
シャンプーで愛犬の健康をサポートしましょう
定期的なシャンプーは、愛犬の健康を保つためにも大切なお手入れのひとつです。今回ご紹介した内などをも参考にシャンプーのコツをつかんで、スムーズにお世話ができるといいですね。
参考・写真/「いぬのきもち」2018年6月号『しつけ 健康管理 お世話……今さら聞けない!○○の仕方、こっそり教えます!』
監修/いぬのきもち相談室獣医師
お話を伺った人/荒木美千子さん(トリマー トリミングサロン「GroomingroomMoe」主宰)
取材/いぬのきもちWeb編集室
文/kagio
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と一部写真に関連性はありませんので予めご了承ください。