災害はいつ起こるかわからないもの。今回は“愛犬の防災”をテーマに、「NPO法人アナイス―動物と共に避難する」代表の平井潤子さんにお話を伺いました。過去の災害を教訓にしながら、自身と愛犬の命を守る防災の重要性について考えていきましょう。
災害にまつわる“数字”を教訓にしよう
過去、実際に起きた災害から学べることはたくさんあります。今回は、災害にまつわる“数字”を追いながら、自分自身や愛犬を含む家族を守るために必要な備えや心得を見直していきましょう。
北海道内で最大約295万世帯が停電※(2018年、北海道胆振東部地震)
停電が起こると、信号やATM、店のレジなどあらゆる生活インフラが機能しなくなります。夏の暑い時期はエアコンが止まり、人だけでなく犬にとっても死活問題です。エアコンが止まり熱中症の危険が高まります。
※内閣府防災情報「2018年(平成30年)北海道胆振東部地震」より
ガソリンは満タン給油を心がけて
停電のとき、愛犬を暑さから守れるのがエアコンの効いた車の中。日頃からガソリンは満タン給油を習慣にしましょう。車がない場合は、停電エリア外の知人宅などに愛犬を預けられると安心ですね。
内科的治療を要した被災犬は1635頭※1(1995年、阪神・淡路大震災)
震災後、地震と長引く避難生活によって、犬も強いストレスを受けます。震災後の調査では、嘔吐・下痢・食欲不振など体調を崩す犬が多くいたことが示されました(※2)
※1兵庫県南部地震動物救援本部「大震災の被災動物を救うために 兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録」より
※2震災直後(1月17日)から神戸・三田動物救護センター設立までの間に、神戸市内の動物病院(調査件数52)において内科的治療を要した被災犬の総数
クレートトレーニングで、安心できる居場所を確保
災害時の動物保護シェルターでは、基本的に犬はクレートの中で過ごさせることになります。ふだんからクレートに慣れさせ、「ここにいると安心」と犬自身が思えるようにしておくことが大切。災害時どこにいても、愛犬のストレス軽減につながります。
ペットの支援物資が届くまで6カ月かかった地域も※(2011年、東日本大震災)
平井さんによる現地調査では、東日本大震災後、ペット用の支援物資が6カ月届かなかった地域もあったとのこと。物資や救助の手が届かない孤立集落となれば、その期間は自身の備えだけが頼りになります。
※「NPO法人アナイスー動物と共に避難する」被災地調査より
人と犬で共有できるものを備えよう
自宅の備えは十分に用意しておくべきですが、荷物が多すぎると避難に時間がかかったり、バランスを崩して転倒したりと、かえってよくない結果を招くことも。軽量なアウトドア用品なども取り入れつつ、人も犬も使えるものを選ぶようにしましょう。
<人と犬で共有できるものの一例>
・水
・トイレシーツ
・ポリ袋(お皿としても使える)
・救急セット
フードの備えはローリングストックで
フードの備えに関しては、昨今はローリングストック(日常備蓄)が一般的です。ふだんから多めに買い置きして古いものから消費し、常に最低1カ月分のストックがある状態を保ちます。また、療法食や薬は災害時に手に入りにくくなるため、獣医師に相談して多めに持っておくようにしましょう。
災害対策は、愛犬の大きさや頭数、ふだんの生活パターンや居住地などによっても、必要なものが異なります。各家庭にあった内容を考え、必要な対策を行いましょう。
お話を伺った先生/平井潤子さん(「NPO法人アナイス―動物と共に避難する」代表)
参考/「いぬのきもち」2024年3月号『必要な備えや心得が見えてきた! 災害の数字から考える愛犬の防災』
文/柏田ゆき
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。