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能天気なようで実は兄思いの弟?【穴澤賢の犬のはなし】

2011年生まれの大吉は、7才半になった。犬的にはもうシニアになる。通常はおもちゃで遊ぶことも、はしゃぐこともほとんどなくなり、こっちから「遊ぼうぜ」と誘っても達観したような冷めた目で見られるようになる。かつての富士丸がそうだったように。
しかし大吉は、未だによく遊ぶほうだと思う。テンション低くソファで寝ていても、相手の態度をまったく気にしない福助は、自分が遊びたいときはちょっかいを出しまくる。いくら大吉が「今はそんな気分じゃないから」という顔をしてもおかまいなしに。
そのうち大吉が「ええ加減にせいよお前!」とスイッチが入ってバトルになる。もしくは、諦めた福助はひとりでおもちゃ遊びをはじめる。しばらくすると、大吉が「さっきから何やってんのお前」と様子を見に行ったりする。結局、おもちゃの引っ張り合いになったりする。
きっと大吉ひとりだったら、もっとテンションが低いやつだったんだろうなと思う。5才にしては能天気すぎる福助がいることで、なんだかんだと付き合ってあげているように見えるが、そのせいで大吉は7才にしてはアグレッシブなほうではないかと思う。
体力もまだあり、先に疲れるのはだいたい福助の方だ。山へ行ったときも、毎回福助が先に疲れて家に入りたがる。いっぽう、大吉はまだ遊び足りないという顔をよくしている。そんな大吉の姿を見ていると嬉しくなる。
それはやっぱり福助のおかげなのだろう。福助を迎えてよかったと改めて思う。最初はトラウマでひどい対人恐怖症だったが、それも大吉を含めて一緒に暮らすうちにすっかり忘れて能天気なやつになった。彼は彼なりに、大吉を慕って感謝しているのだろう。
だからしょっちゅう遊びに誘い、体を使うように仕向けているかもしれない。兄思いの優しい弟だ。たぶん、ただ単純に自分が遊びたいからだと思うが。
なんせ包容力のかけらもないもんね君は。それでいいよ。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。

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