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11才の愛犬が「がん」に。飼い主さんが、放射線治療を選んだ理由<前編>

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この特集では、難病や障がいをもった愛犬と暮らしている飼い主さんの、闘病や暮らしの様子をレポートします。今回ご紹介するのは、11才のときに、鼻のがんと診断されたラッキーくん。飼い主さんがリスクの高い放射線治療に踏み切った経緯や、治療中、治療後の経緯をご紹介します。

愛犬の白いベッドに、点々と鼻血が……

Dさん・Tさん夫妻と暮らすラッキーくん。11才のときに、鼻のがんと診断されました。
Dさん・Tさん夫妻と暮らすラッキーくん。11才のときに、鼻のがんと診断されました。

ラッキーくん(オス・12才/ウェルシュ・コーギー・ペンブローク)は2016年12月、11才のときに鼻のがんと診断されました。目が充血し、顔の右側が腫れて熱をもち、元気がなく、触ろうとすると嫌がります。かかりつけの獣医師に診てもらうと「鼻のがんの可能性が高い」と言われ、すぐに全身麻酔で検査。「鼻のがんはやっかいだから……、鼻は……」という先生の言葉から、飼い主のTさんは「ラッキーの命はもう長くないのかもしれない」と思ったそうです。


思い返せば2016年に入ってから、クシャミと鼻水が増えたというラッキーくん。夏には右目だけ充血し、抗生物質の投与でよくなったものの、冬にはクシャミと同時に鼻血が出て、白いベッドに血が飛び散った跡が。Tさんは胸騒ぎがして、かかりつけの先生のところに駆けこみました。

検査の結果は、「鼻腺がん」という鼻のがんでした。ラッキーくんの場合、放射線治療しか方法がなかったため、数日後には住んでいる地域で数少ない、放射線治療を行う紹介先の大学の動物病院を受診。担当の獣医師から説明された放射線治療のリスクは、「右目が失明する可能性が高いこと」と、「がん細胞が増殖する可能性があること」、「副作用とラッキーくんの体力によっては、治療を途中で中止せざるをえない場合もある」ということでした。

すでにかかりつけ医から説明は受けていたものの、改めて大きなリスクを突きつけられて動揺するDさん・Tさん夫妻。とはいえ、すでにがんが進行しているため、猶予もない――。「ラッキーと1日でも長くいっしょにいたい」、夫妻はリスクよりも延命を希望し、放射線治療を受ける決断をしました。

そのころラッキーくんの住む地域は雪深い季節。自宅から大学の動物病院まで、毎週往復400㎞車を走らせて治療に通うのは難しく、入院をお願いしました。

治療をしても生存率は50%……飼い主さんの選択は

後ろを振り向くラッキーくん。目線の先には大好きな飼い主さんが。
後ろを振り向くラッキーくん。目線の先には大好きな飼い主さんが。

ラッキーくんを襲った「鼻腺がん」とは、鼻の粘膜などにある、鼻水をつくる腺細胞のがんです。初期症状はクシャミで、しだいに鼻血が出ます。早期発見が難しく、診断時にある程度進行しており、完全治癒は困難。進行すると鼻の骨を溶かして顔面が変形したり、鼻と脳を隔てる骨を壊して脳に浸潤します。鼻の構造の複雑さと、脳に近いため完全に切除する難しさ、治療成績などから外科手術よりも放射線治療が優先されることが多いです。ただ、放射線治療を行っても1年生存率は約50%と言われています。

放射線治療は成功したものの、食い止められるのは約1年との予測

失明してからは積極的に散歩に出る機会は減ったものの、体調がいいときは散歩に出ることも。左目で光を感じながら、比較的まっすぐに歩きます。
失明してからは積極的に散歩に出る機会は減ったものの、体調がいいときは散歩に出ることも。左目で光を感じながら、比較的まっすぐに歩きます。

Dさん・Tさん夫妻がリスクの高い放射線治療に踏み切ったのは、理由がありました。それは、2011年3月に起きた東日本大震災です。津波で家を失い、今までの暮らしが一変。すべてが落ち着くまで長い道のりを歩んできました。そして、ご主人のDさんに新しい仕事が決まり、これから新しい生活が始められるというタイミングで、ラッキーくんのがんが発覚。

「やっとスタートを切れると思った矢先だったので、ラッキーがいない生活は考えられなかったのです。たとえ失明しても、一日でも長く私たちといっしょに生きてほしい。ただ普通に暮らしたい。そのためにはやるしかないんだなって」(Tさん)

放射線治療は週1回、全身麻酔をかけて行われました。初回の照射後に腫れ、がん細胞の増殖が心配されたものの、腫れが引いてひと安心。また、先生からは「放射線を当てた部分は毛が抜けて顔が変わるから、徐々に変わっていく姿を飼い主さんは見たほうがいいと思う」と言われ、夫妻はたびたび面会に訪れました。

予定していた4回の照射を終え、約1カ月半後に退院。ただ、先生からは「がん組織が小さくなっても細胞レベルでは残ってしまうのと、残ったがんを抑えこむことが年齢的に難しいケースも多いので、食い止められるのは1年くらい」と言われたといいます。

退院後、3カ月で鼻に異変が……

現在、右目が見えないラッキーくん。しかし「ミテ」と言うと、飼い主さんがいるほうを向きます。子犬のころしつけをがんばったおかげで、失明してもコミュニケーションがとれるのです。
現在、右目が見えないラッキーくん。しかし「ミテ」と言うと、飼い主さんがいるほうを向きます。子犬のころしつけをがんばったおかげで、失明してもコミュニケーションがとれるのです。


退院後は、何事もなく過ごしていたラッキーくん。ところが3カ月ほどたった6月頃、鼻水が出始めました。このときはただの鼻水と思い、深刻にはとらえていませんでした。しばらく元気でしたが、秋ごろには徐々に眼圧が高くなり、臭い鼻水が。10月中旬には、頭をなでようとすると嫌がり、威嚇するようになってしまいました。

「放射線治療を終えたという油断と日々の忙しさに追われつつも、生きてほしいと必死になり強い薬を飲ませた結果、副作用で元気も食欲もなくなり……。もっと寄り添ってあげればよかった」(Tさん)


辛い放射線治療を乗り越えたにもかかわらず、再び不調におちいってしまったラッキーくん。「再発」という2文字が、飼い主さんの脳裏をよぎったのは、想像に難くありません。次回は、その後のラッキーくんの現在の状態と暮らしぶりについて紹介します。

出典/「いぬのきもち」2019年1月号『困難と闘う!……その先のしあわせへ』
写真/佐藤正之

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