犬が吠えるのは、掃除機やバイクの音などを聞いて感じるストレスが原因だったりします。ストレスを追い払いたくて、つい吠えてしまうのです。しかし、犬は、人間社会で暮らすなかで、飼い主さん以外の人、車やバイク、自転車などさまざまな刺激を受けながらも、飼い主さんがうまく導いて徐々にそうした刺激に慣れさせることで、ストレスを感じなくなるようなります。これが「社会化しつけ」です。社会化ができていると、犬は精神的に安定します。刺激が多い環境でも、ストレスで吠えたりすることがありません。
掃除機に吠えない犬にしつけるには?
たとえば掃除機に吠えたてる。こうした困りごとを回避するためには、犬が吠えないうちに掃除機に慣れさせることが肝心です。掃除機に慣れさせるときは、フードやおやつを与え、掃除機に好印象をもたせることがコツです。その手順は次の通りです。
1.動かない掃除機に慣れさせる
電源を入れていない状態の掃除機の近くにフードをばらまき、まずは動かない・オトが出ない状態の掃除機に慣れさせます。
2.音は出さずに掃除機を動かして慣れさせる
電源は入れないまま、片手で掃除機の柄を持ち、もう片方の手でフードをばらまいたら掃除機をゆっくり動かします。これを繰り返し、動く掃除機に慣れさせます。
3.離れた場所で掃除機のスイッチを入れ、音に慣れさせる
動く掃除機に慣れたら、部屋の隅など愛犬から離れた場所で掃除機の電源を入れ、音を出します。フードやおやつを入れたおもちゃを愛犬に与えながら、掃除機を徐々に近づけて慣らします。
4.スイッチを入れ、徐々に愛犬に近づける
3まで順調に進んだら、部屋の隅など愛犬の離れた場所で、電源を入れた掃除機を動かします。フードを犬のそばに投げ、食べられるようであれば、フードを投げる位置を少しずつ掃除機のほうに近づけます。こうして犬が自ら掃除機に近づけるようにします。
このように、「動かない→動く」「無音→音が出る」「遠くにある→近づける」という具合に刺激を徐々に強くしていきながら、刺激に慣れさせるという方法をとります。この方法は、ドライヤーなどほかのものに慣れさせたいときにも応用できます。
吠えない犬にするには、生後4カ月までに社会化できるのが理想
そもそも犬は警戒心が強く、知らないものには近づこうとしない動物。しかし、そのままでは獲物をつかまえることもできないので、そうした警戒心を好奇心が上回る時期があります。それは生後4カ月までで、「社会化期」ともいわれています。この期間に社会化ができていると、警戒心が強まる5カ月以降もストレスなく過ごすことができ、吠えなどの困りごとにもつながりにくくなります。
社会化期に終わりはありません。成犬からでも始めよう
「うちの愛犬はもう4カ月齢を超えてしまった」という飼い主さんもいるでしょう。とはいえ「社会化しつけ」をあきらめないでください。人間社会で暮らすうえで、社会化は犬にとって必要不可欠なもの。今からでも始めましょう。犬の様子をよく見ながら、犬が不安な様子を見せたり、吠えそうになったら、刺激を弱めましょう。たとえば、掃除機の音が強いようなら、掃除機の音をスマホなどで録音し、小さな音を聞かせながらフードを与えるなど、小さな刺激から慣れさせていきましょう。なかにはどうしても犬が苦手に思うものもあるかもしれませんが、慣れさせる努力をし続けていくことが大切です。
いかがでしたか。吠えの原因となるものに徐々に慣らしていくことも、吠えを防ぐ方法のひとつです。いろいろなものに慣らして社会化ができている犬は、よけいな刺激に気をとられず、落ち着いています。そのぶん、飼い主さんをよく見るので、飼い主もしつけがしやすくなり、信頼関係もぐんとアップします。
参考/「いぬのきもち」2016年7月号『はじめてしつけコンプリートドリルvol.5
社会化しつけ』(監修:西川文二先生 Can ! Do ! Pet Dog School代表)
文/犬神マツコ