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【ホントにあった犬の事件簿⑥】山中で出くわした猟犬に愛犬を襲われた! 気になる判決は?
ホントにあった、犬にまつわる事件簿を紹介!
この連載では、過去に実際に起こった犬がらみのトラブルと、それに対して裁判所から下された判決について解説します。同じような事件が起こった場合の参考になります。
今回ご紹介するのは、東京地方裁判所で平成27年2月3日に判決が出た事例です。
※この記事の解説は、ひとつの例にすぎず、まったく同一の解決・判決を保証するものではありません。個々の事件の判決については裁判所に、解決策はその当事者に委ねられます。
お話してくれたのは……渋谷 寛先生
弁護士/渋谷総合法律事務所。ペット法学会事務局次長。動物の医療過誤訴訟を担当するなど、ペットと法律の問題に力を注ぐ。共著に『Q&A ペットのトラブル110番』(民事法研究会)など。
山中で猟犬に愛犬を襲われ、猟師を訴えた!
愛犬2頭は襲われて殺傷。止めて負傷したBさんは精神的なダメージも

Aさんの愛犬2頭はケアーン・テリアで、当時8カ月のメスと4才のオスでした。海外のブリーダーから迎え入れた雌犬には、多額の訓練費用をかけてショードッグとして育てるためのトレーニングをさせていました。ところが、AさんとBさんは2頭を散歩させていた山中で、猟師のCさんがイノシシ猟のため放していた8頭の猟犬のうちの3頭と出くわしてしまったのです。
メス犬は猟犬に襲われて致命的なケガを負い、その日のうちに死亡。オス犬も顔面骨折などの大ケガを負いました。愛犬に襲いかかる猟犬を止めようとしたBさんは、ふくらはぎや手を噛まれたうえに転倒し、捻挫や打撲、切り傷など約3カ月の通院治療を要するケガを負いました。また、愛犬を目の前で殺傷され、自らも3頭の猟犬に取り囲まれて襲われたショックにより、Bさんにはうつ病など精神的な疾患の症状もあらわれてしまいます。
Aさんは愛犬が殺傷されたことによる損害賠償を、Bさんはケガを負わされ精神的な苦痛を受けた損害賠償をそれぞれ求めて、Cさんを訴える裁判を起こしました。
愛犬を失った損害の大きさと、猟犬を放っていた過失が認められた
裁判所は、人が通る可能性がある場所で注意を払わず猟犬を放っていたCさんの過失は大きいと判断。かけがえのない存在である愛犬を殺傷された精神的、財産的損害は賠償されるべきだとして、Aさんに約197万円、Bさんに20万円の損害賠償を支払うよう、Cさんに命じました。
判決は……Aさんに約197万円、Bさんに20万円を支払うよう命じられた

判決では、猟犬を放っていた猟師の過失は大きいとされ、損害賠償としてAさんに約197万円、Bさんに20万円の支払いが命じられました。
狩猟シーズンの山中では、時として猟犬や獰猛な動物に出くわしてしまう可能性も。愛犬と山に出かけるときは、近隣で猟が行われていたり獣が多く出没したりしていないか事前に調べておくと安心です。
参考/『いぬのきもち』2016年11月号「ホントにあった犬の事件簿」
イラスト/別府麻衣
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