ホントにあった、犬にまつわる事件簿を紹介!
過去に実際に起こった犬がらみのトラブルと、それに対して裁判所から下された判決について解説します。同じような事件が起こった場合の参考になります。
今回ご紹介するのは、大阪高等裁判所で平成23年12月9日に判決が出た事例です。
※この記事の解説は、ひとつの例にすぎず、まったく同一の解決・判決を保証するものではありません。個々の事件の判決については裁判所に、解決策はその当事者に委ねられます。
お話してくれたのは……渋谷 寛先生
弁護士/渋谷総合法律事務所。ペット法学会事務局次長。動物の医療過誤訴訟を担当するなど、ペットと法律の問題に力を注ぐ。共著に『Q&A ペットのトラブル110番』(民事法研究会)など。
動物愛護団体の活動に、愛犬家たちが不信感をもった!
犬のために、全国から1億円以上の募金が集まった
事件の発端は、ある犬のテーマパークが経営難に陥り、500頭もの犬が飢餓状態になったこと。Aさんが運営する動物愛護団体は、犬たちの保護活動に名乗りを上げ、1億円もの巨額の寄付や物資を集めることに成功しました。しかし、愛護団体に支援金や物資を提供したり、団体を通じて犬のために働いていたBさんらは、Aさんの募金の使い道が不透明なことや、弱った犬へのずさんな治療に対し、不信感をいだきます。Bさんらは、Aさんが人々を欺いて募金を集め、犬のために使用せずに、私的に流用していると主張し、裁判を起こしました。
犬のために心を砕いた原告らの精神的苦痛を配慮した判決に
地方裁判所で行われた第一審では、Aさんには、資金管理にずさんな面があるにしろ、人々を欺く目的で募金を集めていたとは認められないとして、Bさんらの訴えは棄却されました。しかし、第二審で高等裁判所は、Aさんには、犬を救うためにお金が使われると期待して寄付をしたBさんらに対し、すみやかかつ正確にお金の使い道などに関する会計報告をするべき「信義則上の義務」があると認定。Aさんは、不透明な収支報告を行うなどの過程で、Bさんらに精神的苦痛を与えたとして、計47万円の慰謝料支払いを命じる判決を下しました。
判決は……計47万円の慰謝料が認められた
募金の使い道に関して、法律上、罰則や決まりはとくに設けられていません。Aさんに「信義則上の義務」があるとして、Bさんらへの慰謝料支払いを認めたこの判決は、犬思いの人々に配慮した画期的なものといえるでしょう。せっかく犬のために募金をしたなら、そのお金はきちんと犬たちのために役立ててもらいたいもの。募金をするときは、あらかじめ、明確に会計報告をしているかどうかを調べるなどとして、良心的な募金先を選ぶようにしましょう。
参考/『いぬのきもち』2016年4月号「ホントにあった犬の事件簿」
イラスト/別府麻衣