愛犬がペロペロと体をなめてくる――。この犬の行動には、どのような意味や理由があるのでしょうか? 今回は、「犬が人をなめる意味や理由と正しい対処法」について獣医師 獣医行動診療科認定医の荒田明香先生に聞きました。
犬が人の体をなめるのは「感情表現」するため
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犬にとって「人の体をなめる」という行動は、コミュニケーション手段のひとつといえます。
人が愛犬をかわいがるときに「手」を使って触ったりなでたりするのと同じように、犬は「舌」を使ってペロペロとなめることで、飼い主さんへの愛情や自分の気持ち、相手への要求などを伝えようとしているのです。
では、犬はどのようなときに人をなめて、どのようなことを伝えようとしているのでしょうか? 次からは、3つのシチュエーション別に、犬が人をなめるときの気持ちと対処法をご紹介します。
(1)飼い主さんの帰宅時やスキンシップ中
「大好き」という気持ちを伝えている
飼い主さんが帰宅したときやスキンシップをとっているときに、愛犬が自ら寄ってきてしっぽを振るなど、リラックスした状態で飼い主さんの手や顔をペロペロとなめる場合は、愛情表現をしているのでしょう。大好きな飼い主さんに会えたうれしさや、一緒にいて楽しい気持ち、相手のことを慕っている気持ちを表現しています。
しつこく顔をなめるときは、手をなめるように誘導しよう!
この場合、飼い主さんとの関係が良好で、ポジティブな気持ちでなめているので無理にやめさせる必要はありません。ただし、顔をなめるのがあまりにしつこい場合は、手で口元をふさいで、手をなめるように誘導するといいでしょう。
(2)お手入れをしているとき
「やめてほしい」と伝えている場合が
犬は相手に対して抵抗するときにも、なめる行動をとることがあります。そのため、例えばブラッシングが苦手な犬が、お手入れ中にブラシを持つ手をペロペロとなめるときは、「もうやめて~」とやさしく訴えている可能性が。ただし、お手入れを気にせずなめている場合は、気持ちよくて思わずなめていることもあります。
短時間でお手入れを終わらせる工夫をしよう!
もともとお手入れが苦手な犬や、緊張しているような様子が見られる場合は、おやつなどで気をそらしつつ、短時間で済ませる工夫をしましょう。
(3)叱られているとき
緊張や「もう叱らないで」という気持ちの表れ
犬も叱られるとストレスを感じます。飼い主さんの怒った表情や怖い雰囲気を感じて、緊張をやわらげるためにペロペロとなめているのでしょう。また、飼い主さんに対して「私は怒っていません(だから穏便にしてね)」と、敵意のなさを表現しているともいえます。
叱るのではなく、問題が起こらない工夫をしよう!
犬の問題行動は叱ってやめさせるのではなく、犬が問題行動を起こさないよう飼い主さんが工夫し、未然に防ぐことが重要です。もちろん、愛犬がなめてきたら、それ以上叱るのはやめましょう。
また「なめるのは反省しているから」と、あえてなめさせる飼い主さんもいますが、無理になめさせようとする行為が、犬を追い詰めてしまうこともあるのでNGです。
犬は「おねだり」で人をなめることも
ほかにも、犬は飼い主さんをなめることで自分に注目してもらい、「一緒に遊んほしい」など、おねだりの気持ちを伝えることがあります。また、飼い主さんの手からおやつをもらう習慣がある場合は、「おやつをちょうだい」という気持ちでなめることも。
この場合、飼い主さんの迷惑になりにくい行動なので、大きな問題はありません。しかし、頻繁になめる場合は、欲求不満や退屈を感じている可能性もあるので、きちんとストレス発散できているか、ふだんの行動を振り返ってみましょう。
衛生面に注意しながら、愛犬の気持ちに寄り添った対応をとろう
なお、犬は体を清潔に保つために、自分の体のさまざまな部位をなめることがあります。また、口腔内には常在菌や歯周病菌がいるので、衛生面から考えると、人の口元を頻繁になめさせるのは、あまりおすすめできません。人獣共通感染症(ズーノーシス)を引き起こすおそれもあるので、先ほどご紹介したように、手で口元をふさいで、手をなめるように誘導するといいでしょう。その際、ペースト状のおやつを手に塗っておくと、誘導しやすくなりますよ。
犬が人をなめるときは、さまざまな気持ちが込められています。愛犬の気持ちに寄り添った対処法をとって、絆を深めましょう。
お話を伺った先生/獣医師 獣医行動診療科認定医 荒田明香先生
参考/「いぬのきもち」2021年1月号『モノ・人・自分をなめるワケが知りたーい! 犬はどんな理由でペロペロするの?』
文/ハセベサチコ
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。