犬と暮らす
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「犬をほめるときは大げさに」はウソだった!? |連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.78
今回は、犬のほめ方に関するお話。テレビなどさまざまなメディアを通じて、「よ~しよし!」「えらいぞ~!」「なんてイイコなの!」など、大きな声とオーバーリアクションで、大げさにほめたほうが犬に伝わりやすいと刷り込まれている人が多いのではないでしょうか? 西川先生は「大げさにほめる必要はない」と断言します。その理由とは?(編集部)
パーソナリティが何かしらのテーマを挙げ、リスナーからのメールや手紙、ファクスを募る。
先日とある番組で(テーマは覚えていないのですが)、「近所の柴犬が犬のトレーニングをプロに学び始めたらしく、柴犬なのに英語で指示し始めた。見ていて気恥ずかしかった」といった話が取り上げられていました。
それを読み上げたパーソナリティが、「そういえば取材で犬のトレーニング体験をしたことがある、そのときに先生から(トレーナー? インストラクター?)、もっと大げさにほめて、大げさにほめないと犬に伝わらない、と言われたことがある。気恥ずかしかった」と話していた。
実は、私もかつて「もっと大げさにほめて」と言われた一人。気恥ずかしかったというのも、同じく。
はたして、大げさにほめる必要などあるのでしょうか?
ほめるとはどういうことか
ほめ言葉を耳にしたときに、いいことが起きたと感じるかどうかが重要で、ほめ言葉をかけてもいいことが起きたと感じなければ、ほめたことにはならないわけです。
「ドバー・デチコ」
と言われて、あなたはほめられたと感じますか?
「ドバー・デチコ」はクロアチア語で「いい子」の意味らしいです(綴りはdobar dečko。正確な発音はわかりませんが、私にはドバー・デチコと聞こえる)。
すなわち、クロアチア語がわからないあなたにとっては、「ドバー・デチコ」と語りかけられても、ほめられているとは微塵も感じないということです。
ほめ言葉をいいことと理解させる方法
「ドバー・デチコ」と言われても我々日本人はなんだかわからないように、「いい子」だろうと、「Good」だろうと、その言葉の本来の意味は犬にはわかりません。
当然ほめられたと感じるわけではありません。
でも、「いい子」や「Good」に反応して、喜ぶようには簡単にできる。
ほめ言葉を発してから、フードを与える、これを繰り返すだけです。
これ、古典的条件付けと呼ばれているもの。
古典的条件付けは脳科学的にも確認されています。
餌を与えると反応する脳の場所を特定する。任意の音A(ブザーなど)を聞かせても反応しない。しかし、Aを聞かせてから餌を与えるとやがて、Aの音を耳にした時点で餌を与えると反応する脳の場所が反応する。
すなわち、Aの音を耳にすることは、餌をもらうことと同じ反応が脳で起きるということなのです。
ほめ言葉はなんでも構わない。
特定の音の響きの後にフードを与える、そうすると特定の音の響きの後にはフードがもらえることがわかるので喜ぶようになる、という次第です。
クリッカートレーニングに学ぶ
クリッカートレーニングの第一歩は、クリッカーを鳴らしてからフードを与えること。これを繰り返すことで、クリッカー音=「いいことが起きた」、と犬に伝わるようになる(フードは一次性強化子、クリッカー音は二次性強化子といいます。興味のある方は、学習の心理学のお勉強をぜひ)。
クリッカー音は機械的な音です。
気分による違いもなく、余分なノイズもなく(言葉によるほめは、そういい子だね、よしいい子ね、ほんといい子よ、いい子いい子など、余分な言葉が付きがち。余分な言葉がノイズになる)、ほめられているタイミングも的確に伝わる。ゆえに、非常に効果的、かつ効率的に、トレーニングが進められるとも教えられていました。
大げさにクリッカーを鳴らすことなどできません。オーバーアクションも不要です。オーバーアクションはノイズになります。
で、気づいたのです。クリッカートレーニングをお手本とするのなら、ほめるときは大げさに、など無用だということに。
大げさにほめなくてはいけないのか?否か!
ほめることにを気恥ずかしいと感じている皆様、ご安心くださいということです。
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
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