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【獣医師監修】犬の膀胱炎とは 原因・症状から治療・食事やお手入れで気を付けること

愛犬のオシッコに異変を感じたら、膀胱炎かもしれません。どのような原因で膀胱炎を発症し、発症するとオシッコや排尿時の様子にどんな異変があらわれるのでしょうか。膀胱炎になったときの治療や予防法、お世話の注意点も交えて、犬の膀胱炎を解説します。

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犬の膀胱炎の種類と原因

ドッグランで走る犬(日本スピッツ、オス)
いぬのきもち投稿写真ギャラリー

細菌性膀胱炎

細菌が侵入することで炎症を起こすタイプの膀胱炎です。通常は防御反応が働いて細菌が膀胱へ侵入できないようになっていますが、何らかの原因で細菌が侵入して繁殖すると、膀胱炎を引き起こします。

結石による膀胱炎

膀胱内に結石や結晶ができると、粘膜を傷つけて炎症を起こすことがあります。結石や結晶ができる原因は犬の体質やフード、水分不足などが関係しています。

そのほかの原因による膀胱炎

先述した2つの理由以外では、膀胱炎になる原因として次のような理由があげられます。

  • ストレスを抱えている

  • 外傷や膀胱腫瘍がある

  • 神経の異常や解剖学的な奇形により膀胱が正常に収縮せず尿が残留する

  • 糖尿病などの基礎疾患がある

  • 免疫を抑える薬を使った治療中である

膀胱炎の症状・サイン

笑顔の犬(ポメラニアン、オス)
いぬのきもち投稿写真ギャラリー

オシッコの色・ニオイ・量

膀胱炎にかかりオシッコの中で細菌が繁殖すると、濁りが出たり、濃い黄色などに変化したりします。膀胱内に傷ができて出血している場合は、ところどころに血が混ざったり、全体的にピンクがかったり、赤くなったりします。

また正常なオシッコは人と同じアンモニア臭がかすかにする程度ですが、健康ではないオシッコは鼻をつくきついニオイや生臭いニオイなどいつもと違うニオイがします。少量のオシッコを1日に何回もする場合も、膀胱炎の可能性がありますので、病院を受診してください。

排尿時の様子

健康な犬の場合は、オシッコの姿勢になるとすんなり出ます。また、排尿時の姿勢もオスは後ろの片足を上げた姿勢が多く、メスや去勢したオス、子犬、シニア犬は多くはお尻を下げた姿勢になりますが、膀胱炎を発症していると次のような変化があらわれるでしょう。

  • いきむ様子が見られる

  • 排尿姿勢の変化

  • 痛そうにしている

  • 1回のトイレ時間が長い

  • まったく出ない

  • オシッコの切れが悪い

  • 何度もトイレに行く

そのほかの様子

そのほかの行動としては、トイレのしつけができているのにおもらしをする、垂れ流すなどの行動変化があらわれることもあるかもしれません。
オシッコの状態や排尿時の様子、ふだんの様子を定期的にチェックして、異変を感じる場合は動物病院を受診してください。

犬の膀胱炎の診断と治療

ドッグランで走る犬(トイ・プードル、メス)
いぬのきもち投稿写真ギャラリー

膀胱炎の診断法

膀胱炎が疑われる場合は、尿検査を行います。この検査で、膀胱炎が細菌や出血、外傷、結晶、膀胱腫瘍など、どの原因によるものか調べます。あわせて、レントゲン検査や超音波検査で、膀胱壁の肥厚や結石の有無など、膀胱内の様子を確認することもあるでしょう。

膀胱炎の治療法

細菌やストレスによる膀胱炎の場合は、薬で治療を行います。尿検査で原因となる細菌を調べることができますので、それに効果がある抗生物質や合成抗菌薬を処方されるでしょう。薬の投与期間は最低でも2~3週間程度は必要といわれていますが、状況によって変わりますので、かかりつけ医の指示に従ってください。

結石や結晶が原因で発症する膀胱炎は食事療法で治療を行うことが多いですが、医療用のフードで溶けない結石がある場合などは、手術で取り除くこともあるでしょう。治療により症状が改善された場合でも、再発防止のために結石ができにくいフードを食べ続けていく必要がでてきます。

犬の膀胱炎の予防法

お散歩する犬たち(チワワ、ほか)
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十分な量の水を飲ませる

飲水量が減ると細菌が膀胱にとどまりやすくなるため、膀胱炎を発症する原因に。オシッコを促すためには、十分な量の水を飲ませることが必要でしょう。

愛犬がいつでも水を飲めるよう、朝・昼・夕方・寝る前に水の残量を確認して、古くなった水は取り換えることを習慣に。室内の水飲み場を増やしたり、ボウルの高さを変えたり、水に愛犬好みのニオイや味をつけたりすると、積極的な水分補給が促せるでしょう。
そのほかにはゴハンをウエットフードに替える、ドライフードをふやかして与えるなどすると、食事しながら水分補給することができます。

愛犬が飲んだ水の量を把握する必要があるので、直接ボウルに注ぐのではなく、ペットボトルにうつしてから注ぐようにすると、減り具合からだいたいの飲水量が把握できるでしょう。犬が1日に飲む水の量の目安は、下記を参考にしてください。

犬が1日に飲む水の量

  • 体重20kg未満の小型犬・中型犬・・・体重1kgあたり30~50ml

  • 体重20kg以上の大型犬・・・体重1kgあたり50~70ml

オシッコを我慢させない

オシッコを我慢しすぎると、膀胱に長い間尿が貯留されることにより細菌が繁殖しやすくなり膀胱炎につながります。次のような場合は、犬がトイレを我慢してしまうことがあるので注意が必要です。

  • いつもいる場所からトイレが遠い

  • トイレが汚れている

  • 屋外でしかオシッコしない


愛犬が好きなときにトイレへ行けるよう、いつでも行ける場所にトイレを設置し、トイレシーツは1回使うごとに交換しましょう。留守番をさせる際は、複数のトイレを用意してあげるとベストです。
散歩中にしか排泄しない犬の場合は、室内のトイレ習慣も身に付けさせたいです。トイレへ連れて行き、オシッコができたらご褒美をあげて訓練しましょう。

しっかりと散歩をさせる

体を動かす習慣は、飲み水の量に関係します。散歩で体を動かさないと、喉が渇かず飲水量が減少するのでオシッコも減ります。膀胱炎を発症しやすい環境ができるので、運動不足にならないように心がけてください。次の自覚がある場合は、散歩量を見直して愛犬の飲水を促しましょう。

  • 散歩が不足している自覚がある

  • 冬になると散歩を減らしている

  • 雨の日は散歩を休みがち

犬の膀胱炎に関するお悩みQ&A

お散歩に出かける犬(柴、オス)
いぬのきもち投稿写真ギャラリー

膀胱炎が治らない・再発するのはなぜ?

犬の膀胱炎の多くが細菌性で、肛門や生殖器周辺の常在菌が原因とされています。一時的な細菌感染であれば抗生物質などの治療で治ることもありますが、基礎疾患などがあると、繰り返し再発しやすいです。

また、治療に時間がかかる場合、抗生物質の長期投与への不安から飼い主さんが自己判断で投薬を中止してしまうケースが見られますが、これも再発の原因になります。必ず獣医師の指示通りに投薬をするようにしましょう。

なお、基礎疾患などにより引き起こされる膀胱炎は完治することが難しいです。膀胱炎を治すのではなく、できるだけ膀胱炎にならないようにコントロールすることを目指す治療がほとんどです。

どんな犬がかかりやすいの?

メスはオスと比べて尿道と膀胱の距離が短いため、陰部から細菌が入り込むと膀胱への影響を受けやすく、炎症を起こしやすい構造になっています。
また、膀胱に結石ができやすいなどの遺伝的な体質から、ダルメシアン、ミニチュア・シュナウザー、ウェルシュ・コーギー・ペンブローク、ミニチュア・ダックスフンド、パグ、シー・ズーは特に膀胱炎に注意が必要といわれています。

排尿・排便後のケアを変えるべき?

膀胱炎を発症したからといって、特別なお手入れをする必要はありません。特に、メスは肛門と陰部が近いので、拭くことで肛門周囲の細菌が陰部へ入り込み膀胱炎の原因を作ってしまう可能性もあります。
ただ、下痢をした場合には、ウエットティッシュや濡らしたタオルできれいにお尻まわりを拭いてあげましょう。その際は陰部には触れず、肛門の周囲だけを注意しながら拭いてあげてください。

長毛で汚れが気になる場合

長毛の犬でお尻まわりや尻尾の内側の汚れが気になる場合には、毛を短くすると拭き取りやすく、清潔を保つことができるでしょう。毛をカットするのはハサミやバリカンを使うので、心配であれば病院にお願いしてください。

シャワーの回数を増やした方がいい?

特にシャワーの回数を増やす必要はありません。膀胱炎はお腹の中にある膀胱内部の病気なので、シャワーで改善することはないからです。
お尻まわりの常在菌が原因になるとはいえ、洗い流すことで効果があるという根拠もありませんので、ふだんと変わらないお手入れを行っていれば問題ないでしょう。

食事内容を見直した方がいい?

膀胱炎において、積極的に与えたい食材などは特にありません。ただ、病院で禁止された食材が口に入らないようにする注意は必要になります。
例えばストラバイト結晶(リン酸アンモニウムマグネシウム結晶)などを伴う膀胱炎の場合には、病院から処方される療法食を与えて結晶を溶かす治療となります。療法食以外のものはおやつなども基本的に禁止されます。にぼしなどはストラバイトの原因になる成分を含むため、与えないようにしてください。ストラバイト結晶の治療中にも与えることができるおやつなども、病院によっては扱っていますので、かかりつけの先生に相談してみてください。
人は違和感を感じると、自ら病院を受診することができますが、犬はそうもいきません。いつもそばで見守っている飼い主さんがいち早く異変に気付いてあげることが、病気の早期発見と早期治療につながるでしょう。愛犬の様子に少しでも異変を感じる場合は、早めにかかりつけの動物病院を受診してください。
参考/「いぬのきもち」2016年1月号『冷え込みが厳しくなる時期は要注意!泌尿器の病気 防ぐために知っておきたい3つのこと』
   「いぬのきもち」2017年5月号『健康?病気?4つのポイントでわかる!愛犬のオシッコチェック やってみよう』
   「いぬのきもち」2020年1月号『冬も上手に水分補給しよう!水を飲む量が減ると起こる不調・病気』
   「いぬのきもち」2021年2月号『何かヘンかも!?気がかりだったアレコレに答えます!トイレのお悩みまるごと解決!(健康編)』
監修/いぬのきもち相談室獣医師
文/こさきはな
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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