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犬に「歯磨き」は大切だけど、やり方によっては歯肉に負担も…獣医師が注意点を解説
この記事では、犬の歯磨きの重要性や歯磨きの際の注意点について、いぬのきもち獣医師相談室の先生が解説します。
犬にとって歯磨きが重要な理由は?
「歯周病を予防するためにも、日頃の歯磨きはとても重要です。犬の歯周病の多くは、歯に付いた歯石が、歯肉やその周辺の組織へ負担や刺激を与えることで発症し、重症化します。
歯石の付着は、歯茎から見える歯の表面だけではなく、歯肉の奥の歯周ポケットの中や、さらに奥の歯根の表面など、見えない部分にまで進行する経過をたどる場合も多いです。
その過程で、歯肉だけでなく歯根や歯槽骨(歯を支えている骨)を傷め、歯のぐらつきや強い炎症、細菌感染や化膿などを伴う、重度の歯周病へと進行します」
3才以上の犬の80%が歯周病とその予備軍に!
「日本では、3才以上の犬の80%が歯周病とその予備軍だといわれています。歯周病をケアしないまま、重症化するケースも増えています。
また、歯周病菌が心臓や肺などの病気の発症にかかわっていることもわかってきているので、歯周病を予防することが重要です」
犬に歯石が付いてしまう過程とは?
「歯に付着した柔らかな歯垢が、唾液の影響でセメントのように硬く変化したものが歯石です。
歯石になる前の歯垢の状態であれば、歯磨きで取り除くことができますが、固い歯石に変化すると、その後は歯磨きでは取り除くことができません」
「犬の場合は、溜まった歯垢が硬い歯石になるまでにかかる期間は、わずか数日間と短いです。そのため、こまめに歯磨きをして歯垢を取り除くケアはとても大切です」
かえって犬の負担になる歯磨きとは?
「歯磨きそのものは、歯石の付きやすさから考えると、毎日の習慣にしていただくほうが、口腔ケアとしては適切です。
飼い主さんが歯磨きに一生懸命になりすぎた際にしがちな対応としては…
- 歯肉を傷つけてしまうほど過剰に強く力を入れて磨きすぎてしまう
- 愛犬の我慢の限界を超えるほど長時間の歯磨きをしてしまう
「そうですね。ただ、いったん付いてしまった歯石は、ご家庭での歯磨きのケアでは取れません。
家での歯磨きの際には…
- 歯肉を傷つけないように優しく力を加減すること
- 歯のすき間やくぼみに歯垢ができるだけ残らないようにすること
- 愛犬が歯磨き嫌いにならないよう、一回の歯磨きのケアは短時間で済ませ、終わったらたくさん褒めてあげること
犬の歯磨きをする際の注意点は?
「まず、愛犬が歯磨きのケアを受け入れやすいよう、口回りを触ることに慣らす練習から始めましょう。
たとえば、おいしい味や匂いがする犬専用の歯磨きペーストなどをご褒美として利用し、口や歯を触ることに慣らすのも、受け入れやすくなりおすすめです。
実際の歯磨きの際には、歯磨きクロスでも歯ブラシでも、力を入れすぎずにおこなうのが大切です。歯茎と歯の境目や、歯のすき間に歯垢が残らないよう、歯の根元から先端に向けてブラッシングをしてあげましょう」
「愛犬が歯磨きを受け入れてくれる時間が短く、一回ですべての歯を磨き切れないなどの事情がある際には、回数を分けて歯磨きのケアをしてみましょう。
磨き残しも減らしやすく、また無理なく受け入れやすくなることも期待できるので、良い工夫です。歯磨きをする際は、力加減に十分気を付けながらこまめに実施し、その都度褒めてあげるとよいでしょう」
「歯石が付きやすい場所は、『磨きにくい場所』もしくは『歯垢が付着しやすい場所』であることが多いです。
歯石そのものも表面がザラザラしているため、いったん歯石が付いてしまった場所の表面や周囲には、細菌や歯垢がさらに残りやすくなります。
そういった点からは、歯石が付きやすい部位(もしくは、既に少量付いているような部位)は、さらに歯石が付かないように特に丁寧に磨くケアを心がけるとよいでしょう」
犬に歯石が付いてしまったときのケアは?
「歯石そのものを取り除くケアについては、簡易な方法だと歯の表面に細かな傷が残りやすく、後々さらに同じ場所に歯石が付きやすくなってしまう場合もあるため、対応には注意が必要です。
歯石が気になった際には、まずはかかりつけの動物病院に歯石の除去についてきちんと相談することをおすすめします」
※写真はアプリ「まいにちのいぬ・ねこのきもち」にご投稿いただいたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
取材・文/sorami
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