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獣医師監修|犬の腎臓病とは?症状や原因、治療法、食事管理について解説

腎臓病は「犬の3大死因」のひとつといわれているので注意が必要です。そこで今回は、犬の腎臓病の症状や原因、治療法、予防法について解説します。慢性腎臓病の食事管理(食事療法)のポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

徳本 一義 先生

 獣医師
 有限会社ハーモニー代表取締役
 日本ペット栄養学会理事
 ペットフード協会新資格検定制度実行委員会委員長
 日本獣医生命科学大学非常勤講師
 帝京科学大学非常勤講師
 など

●資格:獣医師 経営学修士(MBA)

●所属:日本ペット栄養学会

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犬の腎臓病ってどんな病気?主な症状とは?

プードル
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
腎臓は主に血液をろ過しておしっこをつくっている臓器で、老廃物を体外に送り出す働きや赤血球を作る指令を出すホルモンを作る働きなどを担っています。腎臓病とは、この働きが何らかの原因で弱まり、老廃物がうまく排泄できずに体にたまってしまったり、貧血などの症状が現れたりする病気です。

腎臓病は大きく「急性」と「慢性」に分けられ、それぞれ以下のような症状が見られます。

急性腎臓病

急性腎臓病は、数時間~数日という短期間で腎臓の働きが低下する病気です。急激な腎機能の低下により死に至ることもありますが、適切な治療を行うことで腎機能が回復する可能性もあります。

急性腎臓病の主な症状

  • 突然ぐったりする
  • 嘔吐・下痢
  • 意識が低下する
  • 呼吸が荒くなる
  • おしっこが出なくなる

慢性腎臓病

慢性腎臓病は、数か月~数年かけて徐々に腎機能が低下する病気です。初期症状はほとんど見られず、この病気がわかったときにはすでにかなり進行しているケースも少なくありません。
なお、犬の慢性腎臓病は、進行度合いによって以下の4つのステージに分類されます。

慢性腎臓病の主な症状

  • ステージ1……残存腎機能約33%
腎機能はすでに正常の3分の1程度にまで低下していますが、この段階では目立った症状は見られず、血液検査でも異常を示さないことが多いです。ただし、尿検査では尿比重の低下やたんぱく尿が見られ、腎臓の形状の異常が認められることも。
  • ステージ2……残存腎機能約33~25%
ステージ2に入ると、慢性腎臓病の代表的な初期症状ともいえる多飲多尿が起きるようになります。血液検査では、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)が軽度に上昇することもあります。ただし、この段階ではまだ食欲や元気がある犬も多く、異変に気付かない飼い主さんも少なくありません。
  • ステージ3……残存腎機能約25~10%
ステージ3になると、食欲がない・体重減少・嘔吐・貧血などの症状が見られるようになります。そのため、飼い主さんが愛犬の異変に気付くのは、この段階になってからが多いようです。

なお、血液検査では腎機能の指標となる数値である、CREA(血清クレアチニン)・SDMA・BUN(血清尿素窒素)の上昇が見られるほか、血圧の検査では高血圧の症状が見られるようになるでしょう。
  • ステージ4……残存腎機能約10%以下
腎臓がほとんど機能していない段階です。老廃物や有害物質の排泄ができなくなり、尿毒症に進行すると、口臭(アンモニア臭)や口内炎、胃炎、痙攣(けいれん)などの症状を引き起こすことも。積極的な治療をしなければ、死に至るでしょう。

犬の腎臓病の原因とは?

マルチーズ
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続いて、腎臓病の原因について確認していきましょう。

急性腎臓病の原因

  • 人用の薬品やぶどう、レーズンといった腎毒性がある物質の摂取や、急性の腎炎・感染症などで腎臓が急激に障害を受けた

  • 大量の出血や血圧の急激な低下、強い脱水、血栓などによって腎臓に血液供給ができなくなった

  • 結石や腫瘍などによる尿道閉塞、事故による膀胱破裂などで排尿できなくなった など

慢性腎臓病の原因

糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)や腎盂腎炎(じんうじんえん)など、腎臓に障害を起こすさまざまな疾患が原因という説が一般的です。また、猫ほどではありませんが、犬も7才以上の老犬になると発症率が上がるため、加齢との関係が深いとも考えられています。

腎臓病にかかりやすい犬種は?

シャー・ペイ、ブル・テリア、イングリッシュ・コッカー・スパニエル、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、ボクサーなどの犬種は腎臓病にかかりやすいとされています。

犬の腎臓病の治療法とは?

柴
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急性腎臓病の主な治療法

急性腎臓病の治療では、腎機能を低下させている原因を取り除き、できるだけ早くおしっこを体外へ排出させることが優先されます。

そのため、体内の水分を増やすために血管から輸液を点滴し、それと並行して原因となっている病気がわかればその治療を行うのが一般的です。点滴後もおしっこが出ない場合は、利尿剤を投与することもあるでしょう。

なお、完全に腎機能が回復しない場合は、慢性腎臓病へと移行することもあります。

慢性腎臓病の主な治療法

慢性腎臓病の場合、残念ながら治療をしても完治は望めません。そのため、症状の進行をできるだけ遅らせ、今出ている症状を軽減してあげることが治療の主体となります。

進行度合いによっても異なりますが、一般的には腎臓に負担をかけないようにするため、療法食と投薬による治療が行われます。また、脱水などの症状が見られる際は、輸液療法などが行われることもあるでしょう。

慢性腎臓病の犬の食事管理(食事療法)はどうしたらいい?

ポメラニアン
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慢性腎臓病の治療で不可欠となる、療法食を用いた食事管理のポイントについて詳しく解説します。

できるだけ早い時期に始める

栄養管理は慢性腎臓病に対する最も効果的な治療法で、生存期間の延長と生活の質の改善に役立ちます。つまり、慢性腎臓病の最も重要なケアは、動物病院スタッフではなく、飼い主さん家族にしかできないことであるといえるでしょう。

尿毒症の症状が現れるような段階にまで至ってしまうと、食事の切り替えが困難になり、栄養療法の効果も薄くなってしまいます。そのため、できるだけ早い時期に栄養管理を始めることが大切です。
ただし、すでに吐き気や脱水がみられる場合、栄養療法を導入するのは難しいので、同時に治療も行う必要があります。

必ず専用の療法食を与える

慢性腎臓病の進行を遅らせるためには、腎臓病を悪化させる「リン」や、老廃物をつくるもととなる「たんぱく質」の量などを調整したうえで、必要なカロリーを効率的に補給させることが欠かせません。そのため、これらの点に配慮してつくられた、専用の療法食を与えて食事管理をすることが重要です。
動物病院で取り扱われている療法食には、生存期間を延長する科学的根拠があります。「食べないから」といって療法食の使用をあきらめることなく、根気強く食事の変更に取り組んでください。

なお、療法食はさまざまなメーカーから販売されているため、獣医師とよく相談したうえで与える種類を決めることが大切です。また、療法食は必ず獣医師の指示に従った方法で与え、飼い主さんの判断で中断したり、種類を替えたりするのはやめましょう。

徐々に新しい食事に移行する

移行期間は少なくとも7日かけましょう。犬によっては食事の切り替えを嫌がり、3~4週間以上かかるケースもあります。
現行の食事と新しい食事を混ぜ、時間をかけて新しい食事の割合を増やしていく方法が一般的ですが、新旧両方の食事を隣り合わせの食器に入れて与える二皿給与法という選択肢もあります。

吐き気がある場合やストレス状態にある場合は療法食の給与を避ける

入院中に強制給与をすると、状態が回復したときに食事嫌悪が発生し、療法食を食べなくなるおそれがあります。その場合、犬の体調がよくなるまでは過剰なタンパク質、リン、およびナトリウムを避けた維持食(例えば良質な高齢期用の総合栄養食)を与え、徐々に療法食に移行していくのもひとつの手です。

食欲がない場合は工夫も大切

慢性腎臓病が進行し、食欲の低下が見られる場合は、療法食の与え方にも見直しが必要です。
以下のような工夫を試してみてください。

・ 消化吸収をよくするために、毎日の食事を3~4回に分けて与える

・ 愛犬が好む形状の食器を使う

・ 食感やタイプの異なる食事を与える

・ 新鮮な食事を室温で与える

一般的に、ウエットフードは40℃弱程度まで温めると嗜好性が高まります。フードを冷蔵保存する場合は、冷たいフードを好まない動物が多いことと、鮮度を気にする動物に受け入れられない可能性があることに注意しましょう。

・ 好みの風味やトッピングを加える

療法食に無塩のチキンスープなどの調味料や、少量の維持食を加える方法です。ただし、量は必要最小限にとどめましょう。
また、フードにトッピングをする方法もありますが、加えてもよい食材や量については事前に必ず獣医師に確認してください。

腎臓病の犬に与えてもいい食材は?手作りフードはOK?

ビーグルのまこちゃん
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腎臓病の犬に与えても大丈夫?よくある食材についてチェック

フードのトッピングなどに特定の食材を用いたい場合、それが与えても大丈夫なものなのかどうか、しっかりとチェックする必要があります。
今回はそのなかでも、飼い主さんが特に気になる食材についてみていきましょう。
なお、一般的に問題ないといわれている食材でも、必ず獣医師によく確認してから取り入れてください。

・ かぼちゃ

かぼちゃは市販の犬用のおやつにもよく使用されている食材のひとつで、健康な犬であれば与えても問題ありません。
しかし、かぼちゃにはカリウムが多く含まれています。腎機能が弱っているとカリウムが代謝しきれずに蓄積してしまい、不整脈などを起こす要因にもなりかねません。腎臓病の犬の場合は与えない方がいいでしょう。

・ キャベツ

キャベツも基本的には犬に与えて問題のない食材です。ただし腎臓病の犬の場合、キャベツに含まれているシュウ酸によって腎機能に負担がかかってしまうおそれがあるため、避けたほうがいいでしょう。

・ サツマイモ

サツマイモは犬に与えても問題のない食材ですが、量や与え方には注意が必要です。特に生のサツマイモは消化に悪いため、ゆでたり蒸したりしてやわらかくしたものを与えましょう。
なお、サツマイモにもカリウムが含まれているため、腎臓病の犬の場合は避けたほうが無難です。

・ リンゴ

リンゴには豊富な栄養素が含まれており、健康な犬の場合は種や芯を取り除けば与えても問題ないでしょう。
しかしリンゴもカリウムを多く含んでいます。カリウムは腎臓病の予防には役立つものの、発症している犬にとって注意が必要です。

・ ささみ

ささみは消化しやすく高たんぱくのため、健康な犬のおやつなどにはもってこいの食材です。
しかし、腎臓病の犬にとって避けたいリンが多く含まれているため、与えない方がいいでしょう。もし食欲増進などにどうしても使いたいようであれば、ゆで汁を用いるほうがベター。この場合も必ず獣医師に相談してください。

手作りのフードは与えてもいいの?

先述したように、腎臓病の犬に与えるフードは療法食が最も適しています。手作り食で栄養のバランスをとるためには、多くの知識と労力が必要となるため、避けたほうがいいでしょう。

犬の腎臓病は予防できる?

チワワ
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急性腎臓病の予防法

結石や腫瘍などによる尿道閉塞が原因となるケースがあるため、日ごろから排尿時の様子や尿の色・量を確認する習慣をつけ、気になる症状が見られたらなるべく早く動物病院を受診するようにしましょう。
そのほか、犬が誤って腎毒性がある物質を口にしてしまわないよう、環境を整えることも予防につながります。

慢性腎臓病の予防法

今のところ、慢性腎臓病を直接的に予防する方法はありません。そのため、できるだけ早く発見して治療を開始し、症状の進行をゆるやかにすることが重要になります。

早期発見のために、定期的な動物病院での健康診断はもちろん、自宅では犬の飲水量やおしっこの量をこまめにチェックするようにし、多飲多尿が疑われる場合は早めに動物病院を受診しましょう。
栄養バランスのとれた食事を与え、新鮮な水がいつでも飲める環境を保つように心がけることも大切です。
腎臓病は死に至ることもある恐ろしい病気です。こまめな健康観察で早期発見につなげましょう。
もし愛犬が発症してしまった場合は、食事療法を含めどのような対応をとっていくか、獣医師とよく相談しながら、愛犬にとっていい方法を模索していきたいですね。
監修/徳本一義先生(有限会社ハーモニー代表取締役)
文/田山郁
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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