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【獣医師が教える】犬の風邪ってどんな病気? 犬は風邪をひくの? 人にうつるの?

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犬の風邪とはどんな病気なのでしょうか? 実は「風邪」というのは病名ではなく、ウィルスや細菌によって引き起こされる感染症のことを「風邪」と呼んでいます。この定義で言えば人も犬も病気の考えかたとしては同じものと言えます。今回は犬の風邪について、予防のポイントなども含めて詳しく解説していきます。

1. 犬の風邪の原因は?

※写真は演出です。

人にうつるウイルスとは?

風邪は犬の場合も人と同じようにウイルスや細菌によって引き起こされますが、一般的にウイルスによるものが多いと言われています。もちろんウイルスとひとことに言っても、いろんな種類があるため全てに当てはまるわけではありませんが、基本的に犬のウイルスは犬に、人のウイルスは人にしか感染しません。動物から人にうつるウィルスで有名なものとして鳥のインフルエンザや狂犬病ウイルスがありますが、それらは本当にごく一部と言えます。

犬同士でうつるウイルスとは?

犬同士でうつりやすく、最悪の場合、死に至る可能性のあるウイルスのうちのいくつかはワクチンが広く普及しています。ワクチン接種では病気の感染を予防することはできませんが、発症した際の症状を軽くすることができます。地域や暮らす環境によって推奨されるワクチンが変わってくるので、かかりつけの獣医師と相談して接種しましょう。

2. 犬の風邪ってどんな症状?

犬の風邪の症状も、人の風邪と同じように様々です。人では、のど風邪、鼻風邪、熱風邪、お腹の風邪などがありますが犬にも似たような症状が出ることがあります。

私たち獣医師がよく遭遇する症状として以下のものがあります。
(1)咳が出る
(2)鼻水・くしゃみが出る
(3)熱が出る(犬の平熱は39.5度ぐらいまでです。)
(4)下痢をする
(5)悪心、嘔吐
(6)元気、食欲の低下

どの症状もそうですが、人だと「熱がありそうだな」、「昨日から咳が出ているな」と自分で把握することが出来ますが、言葉を話すことのできない犬たちの症状は気づくことが難しい場合があります。「だるさがあるのか」、「いつからなのか」、もっと言えば「本当に咳なのか」、「具合が悪いせいなのか、わがままでご飯を食べないのか」など、わからないことだらけです。普段から動物のことを良く見て、触って、何か変だと感じたら家族に相談してみるのもいいでしょう。「そういえば昨日から同じような咳をしていたよ」など、より詳しく状況を把握することができるかもしれません。

「その症状がいつからなのか」、「どのくらいの頻度か」、「どの程度普段と違うのか」などの情報は、私たち獣医師が病気を診断する上でもとても重要です。体温計などの特別な道具がなくても、安静にしている動物の耳や体など複数の場所を触るだけで飼い主さんでもわかる症状があります。なんだか元気がないなぁと感じたら、いつもより熱っぽくないか、お腹が張っていないかなどをご自宅でみていただくことが、病気の早期発見につながります。

3.この症状、おうちで様子を見ていいのかな?

家で様子を見て大丈夫? 病院に連れて行った方がいい?

風邪の症状がある場合、ご自宅で様子を見ようか、病院に連れて行こうか迷うことは多いと思います。もちろん症状が重いのであれば病院に連れて行くべきですが、症状が重いかどうかはどう判断すればいいのでしょうか? どのような時に獣医師に相談したほうがいいでしょうか?
まず症状に関係なく、犬が辛そうにしているときは要注意です。動物は少しくらいの症状では辛さを表現しないことが多いため、ご家族からみて犬が辛そうにしているときは症状が重いと考えていいでしょう。そして症状がひっきりなしに続いているか、または2−3日経っても改善が見られない場合も注意が必要です。急に激しく症状がでるものや長引く症状のものは、合併症を起こしていたり、風邪ではない病気の可能性があります。ご自宅では判断が難しい場合もありますので、どんな変化でも心配なことがあれば獣医師に相談してみましょう。

ここからは獣医師からみて、病院受診をお勧めする症状について簡単にご説明したいと思います。もちろんこれに当てはまらなくても、ご家族が「変だな」「辛そうだな」と感じたら病院に連れて行ってください。

咳が出る

・咳をしていない時も呼吸が荒い/舌の色が青い
・咳と一緒に色のついた(緑や黄や赤の)痰が出る
・咳をしたあと頻繁にペロペロしたり嚥下(飲み込む動作)をする

鼻水・くしゃみが出る

・色のついた(緑や黄や赤の)鼻汁が出る
・鼻血が出る
・顔が腫れている

熱が出る

・高熱が1日以上続く(時間をおいて測っても、40度以上など)
・ワクチンを接種した日に熱がでる
・散歩中に虫に刺されたり何かを口にした可能性があるとき

嘔吐をする(吐き気がある)

・1日で3回以上の嘔吐
・食べるたび、飲むたびに嘔吐する
・嘔吐のあとずっと口の周りが唾液で濡れている(吐き気が続いている)

4. この症状、本当に風邪かな?

上に挙げたような症状は、実は風邪ではない病気にも当てはまることがあります。似たようなものにはどんな病気があり、どんな検査が必要か解説します。

咳が出る

・肺炎や気管支炎・気管虚脱などの呼吸器の病気
・「僧帽弁閉鎖不全症」をはじめとした心臓病による咳

呼吸器や循環器(心臓や血管)の病気は命に関わる病気が少なくありません。咳がとまらない時や、はぁはぁとした荒い呼吸が続く場合はあまり様子を見ず、動物病院にご相談ください。

検査は心臓の音や呼吸の音を聴き、必要に応じてレントゲン検査・超音波検査・血液検査などをして原因を探ることになります。

鼻水・くしゃみが出る

・鼻腔内の異物や腫瘍
・歯周病に関連した炎症

鼻水が出ている場合は、色に注意して見てみましょう。異物や腫瘍に関連したものでは透明や血混じりの鼻水、感染や炎症がある状態では黄色い膿のようなものが混ざった鼻水が見られることがあります。特にシニア犬では歯周病にかかっている犬が多いので、日頃からお口の様子を見ておくことも大切です。

検査は視診で口腔内の状態を確認し、レントゲン検査を行ったり、場合によっては鼻腔鏡検査や気管支鏡検査を行い原因を探ります。口の中の検査はストレスが強く、困難なことが多いので状況によっては鎮静や全身麻酔が必要となることがあります。

熱が出る(犬の平熱は39.5度ぐらいまで)

・アレルギー(アナフィラキシー)
・自己免疫性疾患
・重篤な全身性炎症や感染症

熱も見過ごしやすく、また見過ごすと危険なことがある症状のひとつです。特に熱っぽくぐったりしているときや、呼吸が荒いときはあまり様子をみない方がいいでしょう。食べ物やワクチンに対するアレルギー反応(アナフィラキシー)だったり、自己免疫性貧血などの自己免疫性疾患、様々なことに起因する全身性炎症や感染症は、症状が出始めてから急激に悪化し命に関わることがあります。

検査は一般的な身体検査と血球計算やCRPを含む血液検査をして、貧血や白血球数・炎症の程度などを見て重症度や原因を探ります。

下痢をする

・寄生虫や腸内細菌叢の変化などによる下痢
・炎症性腸疾患

なかなか治らない下痢や軟便はただの風邪ではなく、他に原因があることが少なくありません。寄生虫であれば同居の犬や猫、人にも感染することがあります。また炎症性腸疾患も時には命に関わることもあります。検査はまず糞便検査を行い、必要に応じて血液検査や画像検査、内視鏡検査を行って原因を探ります。

嘔吐をする(吐き気がある)

・おもちゃなどの異物誤食による消化管閉塞
・食物・薬物などによる中毒
・胃捻転・腸重積などによる閉塞
・風邪の範疇を超える腸炎・胃炎・食道炎

まずは誤食の可能性がないかをよく考え、おもちゃなど無くなっているものがないかをチェックしてください。またどんな症状がいつから、どんな風に出ているのかなどの飼い主様のお話が、検査や治療を勧めていく上で重要となります。検査はレントゲン検査や超音波検査で消化管の状態を観察したり、全身状態を把握するための血液検査を行います。全身麻酔下での内視鏡による処置や検査、または開腹手術が必要な場合もあります。

食欲や元気がなくなる(低下する)

・様々な病気によって起こる

これらの症状は客観的に評価することが難しく、また色々な病気に伴って起こります。精神的なストレスなどに関連して認められることもありますが、病気のサインであることが多いため普段と比較して明らかに元気・食欲がないのであれば必要に応じて検査をしてもらいましょう。

5. 風邪をひいた時はどう対処する?

では風邪をひいてしまった時はどうすればいいでしょうか。人の風邪でも、軽い症状であれば十分な栄養と休養をとれば、自身の免疫力でウイルスや細菌を撃退して体調を回復させることができます。それは動物も同じです。軽い症状であればしっかりと栄養と水分をとり、適切な環境で安静にしていれば数日で改善が認められるでしょう。栄養については嘔吐や下痢がなく、食欲がある場合は普段のフードから他のものへ変える必要はありません。お散歩は控えるか、排泄を済ませる程度にし、お部屋を清潔に保ち、温度や湿度も適切に保ちましょう。特にくしゃみや咳は乾燥によって悪化することがあるので、十分に気をつけましょう。

嘔吐や下痢が見られる場合は、消化器が正常な働きをできていないことが考えられます。症状が出ている時に食事を与えてもきちんと栄養を吸収できず、さらに負担をかけることになってしまう可能性があるので、絶食絶水が必要になるかもしれません。5−6時間ほどの絶飲食中に消化器症状がない場合は、様子を見ながらお水や水分の多い食餌を少量づつ与えるようにしましょう。ただし頻繁な嘔吐や下痢がある場合は脱水症状をおこすことがありますので、早めに病院を受診しましょう。病気は悪化させてしまうと本来の身体のチカラだけでは治りにくくなります。症状によっては早めに病院で点滴をしたり、お薬を処方してもらうことが大切です。

6. 風邪をひくまえに

もちろん、そもそも風邪をひく前に予防をすることはとても大切です。風邪を予防するためにすることは、基本的には人と一緒です。バランスのとれた栄養を摂り、適度な運動と休息をとり、寒すぎたり暑すぎたりしないように温度や湿度を適切に保ち、寝床などを清潔に保つことです。また、原因についての項目でも触れたように一部の危険なウイルスに関してはワクチンを接種することが重要です。

また、予防ではありませんが普段から良く犬を見て、触れて、コミュニケーションをとることも重要です。病気のサインに早く気付けることももちろん大切ですが、コミュニケーションをとったり、遊ぶために頭を使ったりする刺激は免疫力を高めるとも言われていますので一石二鳥ですね。

7. まとめ

・犬にも人の風邪に似た病気は存在する
・人と同じでウイルスや細菌が原因となる
・免疫力の低下などで病気を引き起こしやすくなるため、予防のためには正しい生活やバランスの取れた食餌、適切な環境(湿度や温度)に気をつける
・症状に気づきにくく、重症度の判断が難しいことが多い
・経過観察で重篤化することがあるので、改善がない場合は早めに病院を受診
 する

監修/大塚元貴(獣医師・かつまペットクリニック

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