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【獣医師監修】犬の膀胱炎 膀胱炎の種類によって異なる原因は
犬のオシッコがいつもと違ったら、膀胱炎のサインかもしれません。膀胱炎は慢性化しやすい病気で、ひどい痛みを伴う場合もあります。この記事では犬の膀胱炎の症状や原因を解説し、抗生物質などの薬や食事での治療方法、予防するためにできることを紹介します。
この記事の監修

三浦 貴裕 先生
町田森野プリモ動物病院院長
相模大野プリモ動物病院院長
酪農学園大学獣医学部獣医学科卒業
●資格:獣医師/日本小動物歯科研究会 歯科認定レベル全過程修了
●所属:日本小動物歯科研究会/比較統合医療学会
●主な診療科目:一般診療(外科・内科)/救急診療/歯科・口腔外科
犬の膀胱炎って、どんな病気?

膀胱炎とは、尿道から細菌が侵入して繁殖することにより、膀胱に炎症が起きる病気のことです。主な症状には、トイレに行く回数が極端に多くなる、一回の排尿量が少なくなる、血尿が出る、などが挙げられます。中には排尿時に痛みを感じ、鳴き声をあげる犬も。メスはオスより尿道が短いため、細菌が入りやすく膀胱炎になる可能性が高いといわれています。
膀胱炎を放っておくと慢性化したり、尿路結石などの病気につながったりするおそれもあります。「もしかして膀胱炎かな?」と思ったら、早めに動物病院を受診しましょう。
いぬのきもち WEB MAGAZINE「病気・症状データベース(膀胱炎)」
犬の膀胱炎の原因は?

犬の膀胱炎には原因がいくつかあります。治療法は原因によって異なるため、「どのタイプの膀胱炎なのか」を知るためにも病院で診てもらう必要があります。
細菌性膀胱炎
尿道から細菌が侵入して炎症が起きるタイプの膀胱炎です。オスに比べて尿道の短いメス、免疫力の低いシニア犬などがかかりやすい傾向にあります。
膀胱結石
膀胱の中に結石や結晶ができ、粘膜を傷つけることで炎症が起きるタイプです。水分不足によって排尿量が減ると、尿が濃縮して結石・結晶が作られることがあります。また犬の体質が関係している可能性も考えられます。
その他、ストレスなどが原因で膀胱炎が発症することもあります。
“いつもと違うオシッコ”は膀胱炎のサインかも

もし愛犬のオシッコがいつもと違ったら、それは膀胱炎のサインかもしれません。「オシッコの色・ニオイ・頻度・排尿時の様子」の4つのポイントをチェックしてみましょう。もし疑わしい症状がある場合は、すぐに病院へ連れて行ってあげてください。
オシッコの色は?
オシッコの色を見分けるポイントは、白いトイレシーツを使うこと、明るい場所で色を確認することです。
淡く濁りのない黄色
オシッコが淡く濁りのない黄色だったときは健康のしるしです。
濃い黄色
いつもよりも濃い黄色だったときは、尿の中で細菌が繁殖しているかもしれません。膀胱炎や肝臓の病気など様々なことが考えられますので、病院で診てもらった方が安心でしょう。
赤色・ピンク色
全体的に赤かったり、ピンク色だったり、ところどころ血が混じっているようであれば危険です。こちらもすぐに病院に行きましょう。
オシッコのニオイは?
かすかなアンモニア臭
健康的なオシッコ。人間と同じようなアンモニア臭がかすかにする程度が正常です。
ツンと鼻をつくきついニオイ・生臭いニオイ
アンモニア臭が強いような、鼻を刺激するニオイは要注意。2日以上続くようであれば病院に行ってください。
強烈なニオイ・いつもと明らかに違うニオイ
オシッコとは思えないニオイがしたら危険信号です。膀胱内が膿んでしまっている可能性も。すぐに病院に行きましょう。
オシッコの頻度・量は?
頻尿
何度もトイレに行くにもかかわらずオシッコが少量しか出ていない場合は、膀胱内や尿道の異常、結石による排尿障害の可能性もあります。なるべく早めに病院で診てもらいましょう。
まったく出ない
オシッコの姿勢をしているのにまったく出ていないのは、かなり危険な状態です。結石が尿道をふさいでいるおそれがあるので、すぐに病院に連れて行ってください。
また、腎臓病が重度で尿が作られないこともあります。
排尿時の様子は?
いきんでいる・粗相をする
オシッコが出づらそうなときや、しつけはできているのにトイレ以外の場所で粗相をしてしまうときは、注意して経過を見ましょう。続くようだと膀胱炎の疑いがあります。
痛そうにしている
オシッコをしながら痛そうに「キャン!」と鳴いたり、震えていたりすると、尿道や膀胱に結石がある可能性が。排尿時に時間がかかるのも、痛くてなかなかオシッコが出せないのかもしれません。
膀胱炎の治療方法

細菌やストレスが原因の場合
細菌やストレスが原因の膀胱炎は、お薬で治療するのが一般的です。細菌が原因の場合は膀胱内の細菌に効く抗生物質、炎症を抑えるための消炎剤などが使われます。
結石が原因の場合
結石や結晶が原因になっている場合は、結石を取り除く手術や食事療法で治療します。結石の種類によっては医療用フードで結石を溶かすこともできますが、結石の中にはフードでも消えないものが存在し、その場合は手術になることも。また再発防止のため、治療後も結石のできにくいフードを続ける必要があります。
膀胱炎を防ぐために飼い主さんができることは?

膀胱炎を予防するためには、次の2つのポイントに気をつけましょう。
意識して水分をとらせる
愛犬が水を飲んでいるかは、こまめに確認しましょう。もしあまり飲んでいないようであれば、意識して水分をとらせてあげることが大事です。水分補給にはウェットフードの使用も効果的です。
運動量が少ないと水を飲む回数も減ってしまうので、散歩やおもちゃなどで体を動かす環境を作ってあげてください。特に冬場は、水の減り具合を注意して見ておきましょう。
オシッコの回数を確認する
膀胱内にオシッコが溜まっている状態が長いと、細菌が繁殖しやすくなります。規則正しい排尿は膀胱炎の予防にもつながるので、なかなかオシッコしない犬は散歩などで外に出して排尿を促しましょう。
オシッコの回数は、成犬で1日3~5回、子犬で2~4時間に1回、シニア犬で1日3回以上を目安にしてください。
犬は痛みを感じても、言葉で伝えることができません。飼い主さんがオシッコの状態や愛犬の様子をしっかりチェックすることで、膀胱炎の予防や早期発見・改善につながります。気になる症状があったという方は、病院で詳しく診てもらいましょう。
参考/「いぬのきもち」2014年7月号『いつもと違う!オシッコは病気のサイン』(監修:若山動物病院院長 若山正之先生)
「いぬのきもち」2015年1月号『冬に発症しやすい5大疾患』(監修:東京動物医療センター 南直秀先生)
「いぬのきもち」2017年5月号『健康?病気?4つのポイントですぐわかる!愛犬のオシッコチェック やってみよう』(監修:若山動物病院院長 若山正之先生)
「いぬのきもち」WEB MAGAZINE『病気・症状データベース(膀胱炎)』
監修/三浦貴裕先生(町田森野プリモ動物病院院長/相模大野プリモ動物病院院長)
文/松本マユ
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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