愛犬のマウンティング行動にお悩みの飼い主さんも多いでしょう。今回は、犬のマウンティングの基礎知識と意味や理由、やめさせる方法について解説。また、実際に愛犬のマウンティングで困った経験がある飼い主さんの体験談もご紹介します。
犬のマウンティングとは
英語のマウント(mount)には、主に「登る、乗る、またがる」といった意味があり、犬のマウンティングは、このマウントという言葉に由来するといわれています。主にほかの犬や人の足や身体、またはお気に入りのクッションやぬいぐるみに覆いかぶさり、小刻みに腰を振る行為のことです。
犬のマウンティングが始まる時期は?
犬がマウンティングをし始めるのは、生後6か月くらいからといわれていますが、これには個体差があり、なかには生後2~3か月ごろからマウンティングをし始める犬もいるようです。
ただし、このような性成熟する前の子犬のマウンティングは、成長過程で見られる「社会化行動」のひとつと考えられているため、その後の去勢手術などをきっかけにやめることもあるでしょう。
メス犬でもマウンティングをする?
メス犬でも、ほかの犬やぬいぐるみ、人などに対してマウンティングすることがあります。これにはさまざまな理由が考えられますが、なかには発情期(ヒート)の行動のひとつとして、マウンティングをする犬もいるようです。ただし、メス犬のマウンティングには、性的な意味合いは含まれていないと考えられています。
出てくる液体は何?
オス犬がマウンティングをしている最中に、何か液体が出ているのを発見したことのある飼い主さんもいるでしょう。この正体は、尿もしくは精液を含む分泌液と考えられています。
女性はマウンティングされやすいって本当?
女性、また生理中の女性に犬がマウンティングしがちということがいわれますが、特に根拠はありません。基本的に、飼い主さん以外の人にマウンティングする場合は遊びの要素が強いと考えられます。
犬がほかの犬にマウンティングする意味や理由
続いて、犬がほかの犬にマウンティングする理由を見ていきましょう。犬同士で行われる場合は、大きく分けて2つの理由があると考えられます。
理由① 性的な意味
性的な意味をもつマウンティング、つまり、“子孫を残すための行為”としてのマウンティングです。ただし、これは交尾行為なので、相手が発情期のメス犬の場合は、妊娠させてしまう可能性も。去勢手術をしていないオス犬の飼い主さんは、むやみにメス犬に近付かせないよう注意しましょう。
理由② 上下関係の誇示
犬社会の中では、マウンティングすることで「自分の方が上だ」とアピールすることがあります。この場合は、オス犬・メス犬ともに性別に関係なく上になることがあり、同性同士ですることも少なくありません。
犬が飼い主さんにマウンティングする意味や理由
先述したように、犬が飼い主さんにマウンティングを行うことも。しかしその理由は、ほかの犬にマウンティングをする場合とは少し異なります。
理由① 飼い主さんの気を引くため
犬が飼い主さんの足などにマウンティングするのは、飼い主さんの関心を引くためというケースが多いです。マウンティングされたときに、飼い主さんが「やめて」などと反応してしまうと、犬は「マウンティングすると、飼い主さんがかまってくれる」と勘違いし、繰り返すようになることがあるので注意しましょう。
理由② 遊びや喜びの表現
うれしいときや興奮したときなども、飼い主さんに対してマウンティングすることがあるようです。飼い主さんと遊んでいる最中にいきなりマウンティングを始めたら、「遊んでもらってうれしい」という気持ちが高まってしまったのかもしれません。エスカレートすると問題行動につながることもあるので、遊びを中断して興奮を落ち着かせましょう。
犬がクッション・ぬいぐるみなどにマウンティングする意味や理由
最後に、犬がクッションやぬいぐるみなどに物に対してマウンティングするケースです。この行動には、大きく分けて3つの理由が考えられます。
理由① 支配欲によるもの
犬がクッションやぬいぐるみなどに対してマウンティングするときは、支配欲が関係していることがあるようです。「お気に入りのものを誰にも取られたくない」という気持ちからマウンティングをするのでしょう。
理由② エネルギー・ストレスの発散
クッションやぬいぐるみなどに限ったことではありませんが、運動不足の解消やストレスの発散のために、身近なものでマウンティングをすることもあります。クセになってしまうおそれがあるので注意しましょう。
理由③ 遊びや暇つぶし
ほかにすることがなく、クッションやぬいぐるみにマウンティングをしてみたら楽しくなってしまったというケースも。この場合も、繰り返すとクセになることがあるので注意してください。
ケース別!マウンティングをやめさせる方法
マウンティングに関する基本事項がわかったところで、続いては、犬がマウンティングをする対象別に、やめさせる方法について見ていきましょう。
ほかの犬にマウンティングするときの対処法
犬がほかの犬にマウンティングしそうになったら、「おすわり」や「まて」で落ち着かせるようにしてください。散歩中にすれ違う犬に対してしてしまうときは、あらかじめ道の端に寄せ、「おすわり」や「まて」の指示を出して、相手が通り過ぎるのを待ちましょう。
また、性的な意味合いでマウンティングする場合は、去勢手術を行うことで軽減される可能性があります。ただし、効果には個体差があり、去勢手術のタイミングも関係してくるといわれているので、まずは獣医師に相談してみましょう。
飼い主さんにマウンティングするのをやめさせる方法
犬が飼い主さんにマウンティングを始めたら、犬の身体を引き離して徹底的に無視しましょう。このとき声をかけてしまうと、たとえ「だめよ」と注意していたとしても、犬は「飼い主さんにかまってもらえた」と誤解してしまうので、無言を貫くのがポイントです。
なお、同居している家族がいる場合は、家族にも同じように無視してもらってください。飼い主さんや家族から相手にされないとわかれば、愛犬はマウンティングを繰り返さないようになるでしょう。
クッションやぬいぐるみにマウンティングするのをやめさせる方法
エネルギー発散のためにしてしまう場合は、散歩の量や遊ぶ時間を増やすなどして、エネルギーを消耗させてください。また、支配欲や暇つぶしからクッションやぬいぐるみにマウンティングしてしまう場合は、その対象となるものを取り上げてしまうのも手です。
飼い主さんは、犬のマウンティングをどう思っているの?
最後に、いぬのきもちアプリで行ったアンケート結果を見ていきましょう。
愛犬がマウンティングをした経験がある飼い主さんは、全体の8割にのぼり、そのうち5割の飼い主さんは「マウンティングをやめさせたい」と感じたそうです。
また、「仕方がない」と感じたほか、「恥ずかしい」「下に見られていると感じる」などの声も目立ちました。
愛犬のマウンティングをやめさせることができたのは……?
それでは、「やめさせたい」と感じた飼い主さんのうち、実際にどのくらいの飼い主さんがやめさせることができたのでしょうか?
アンケート結果を見てみると、やめさせることができたのは、挑戦した飼い主さんの3割程度。犬のマウンティングをやめさせるためには、地道な努力が必要になりそうですね。
実際にマウンティングをやめさせた飼い主さんの体験談
最後に、実際にマウンティングをやめさせることができた、飼い主さんの体験談をご紹介します。
- 「最初はぬいぐるみにしていたので、ぬいぐるみを片付けました。次はドッグランでほかの犬にしたので、とにかくダメと伝え、その犬から離す、を繰り返しました。だんだんしなくなりました」
- 「6ヶ月を過ぎていたのですが、去勢手術をしました。術後は全くしなくなりました」
- 「ダメって言って、ふりほどいて、一匹だけにさせた。それを続けたら一応私の足にはしてこなくなった。でもときどきしたくてウズウズしている時がある」
- 「大きなぬいぐるみやベッドに対してマウンティングするのですぐに片付けたり、気を逸らせたりしていたらほぼしなくなった」
- 「他のおもちゃなどで気をひき、遊んであげたり名前を呼んで気をそらしたりした」
マウンティングの理由や犬の性格によって、効果的な方法はさまざまなよう。愛犬のマウンティング対策の参考にしてみてくださいね。
犬のマウンティングをやめさせるには理由にあったしつけ・対処法を!
犬がマウンティングをする背景には、さまざまな理由があることがわかりました。自然界で生きる犬にとってマウンティングは自然の行為ですが、飼い犬として暮らしていればマナー違反になってしまいます。また、マウンティングはクセになりやすいので、早い段階でやめさせることが大切です。
マウンティングをやめさせるのは少し時間がかかるといわれていますが、飼い主さんが愛犬をきちんとコントロールし、それぞれの理由に沿った方法で対策をしていきましょう。
参考/「いぬのきもち」2016年10月号『身体の変化や去勢・避妊手術の知識も身につく 男子犬 女子犬 違いを生かす育て方』
監修/石田陽子先生(石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長)
文/kagio
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。