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【獣医が教える】オス犬の前立腺肥大について

前立腺肥大は、人間だけでなく犬にもよく見られる病気です。また、特徴的な症状が見られる病気でもあります。今回のコラムで前立腺肥大について学んで、いち早く愛犬の異常に気づけるよう、適切な知識を増やしましょう。

八木田 智洋 先生

 獣医師
 かんもん動物病院副院長

 麻布大学獣医放射線学研究室卒業
 大学時代に麻布大学附属動物病院の放射線科と腫瘍科で研修

●資格:獣医師

●主な診療科目:内科〜外科まで全般(画像診断と腫瘍に力を入れています)

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前立腺とは

前立腺は、前立腺液を分泌し、射精に関与するオス特有の器官です。膀胱にくっつくように存在しており、尿道は前立腺の中を通ります。また、前立腺の上(背中側)には、直腸があります。つまり、前立腺は膀胱と直腸に囲まれているのです。そのため、前立腺が大きくなると、排尿や排便に影響が及ぶようになります。

前立腺肥大とは

前立腺肥大とは、文字通り前立腺が大きくなった状態です。前立腺肥大は大きく分けて、腫瘍を原因とするものと、腫瘍以外に起因するものとの2つがあります。
ほとんどのケースは、腫瘍以外ですが、腫瘍も発生します。

前立腺肥大の症状

尿が出にくい、排尿時に痛がる、血尿が出る

前立腺が大きくなると、前立腺の中を通っている尿道が圧迫され、尿が出にくくなったり、排尿時に痛みを伴うことがあります。また、血尿がでることもあります。

便が出にくい、きしめんのような平たい便が出る

前立腺が大きくなると、前立腺の上(背中側)に存在する直腸が圧迫されるため、便が出にくくなります。
また、圧迫された直腸を便が通過するため、きしめんのような平たい便が出ることがあります。

後ろ足の跛行(はこう)

前立腺が大きくなることによって、骨や神経が圧迫されて、後ろ足に跛行(はこう)が生じることがあります。
*跛行(はこう):つりあいがとれないまま進む状態

前立腺肥大の原因

前立腺肥大の原因は、男性ホルモンによる過形成(腫瘍以外)と、男性ホルモンに関係しない腫瘍の2つです。
●腫瘍以外:
前立腺は、男性ホルモンの影響により加齢とともに大きくなります。そのため、去勢をしていない場合、前立腺は大きくなります。男性ホルモンによる前立腺の肥大は、良性の前立腺過形成とよばれます。良性の前立腺過形成は腫瘍ではありません。
●腫瘍:
腫瘍の場合は、ホルモンの影響と関係なく前立腺は大きくなります。そのため、去勢しているのに前立腺が肥大した場合は、腫瘍である可能性が高くなります。

前立腺肥大の検査方法

X線検査

前立腺全体の大きさの把握や、前立腺肥大によって周りの臓器(特に膀胱)がどれだけ圧迫されているかを確認します。
・検査費用の目安:5000~6000円程度

超音波検査

X線検査と異なり、超音波検査では前立腺内部の状態の確認ができます。また、前立腺の大きさや形を確認できます。前立腺の検査としては、最も実施されることの多い検査です。
・検査費用の目安:3000~4000円程度

直腸検査

肛門から、指を直腸内に入れ、直腸越しに前立腺を触る検査です。前立腺の形や硬さを直接触って診断します。とても有益な情報が得られる検査ですが、嫌がる子もいるので、実施できない場合もあります。
・検査費用の目安:1000円程度

CT・MRI検査

前立腺腫瘍の場合は悪性のことが多く、CT検査やMRI検査を用いて、他臓器への転移などを調べます。上記の検査とは異なり、全身麻酔が必要となります。
・検査費用の目安:全身麻酔代も含めて50000円以上

前立腺肥大の治療方法・費用

<テキスト>
前立腺の過形成(腫瘍以外)は、男性ホルモンの影響によって生じるため、去勢手術をすることで、前立腺を小さくすることができます。また、麻酔が困難な場合は、内服薬で前立腺を小さくすることもできます。しかし、内服薬での治療は根本的な治療ではないので、再発する可能性もあります。
去勢手術費用は、病院によってまちまちですが、10kgぐらいの犬で20000~30000円程度です。ただし、大型犬では、30000円以上かかる場合もあります。
また、内服薬での治療費用は、2000~3000円程度です。
一方、前立腺腫瘍の場合は、男性ホルモンの影響を受けないため、去勢手術をしても前立腺を小さくすることはできません。治療としては、前立腺の摘出手術や放射線治療が実施されることがありますが、あまり長く生きることができないのが現状です。また、前立腺腫瘍は悪性のことが多く、来院時にはすでにかなり進行しており、治療が難しい場合が多いです。
前立腺摘出手術費用は、50000円以上かかる場合がほとんどです。

前立腺肥大の予防法

良性の前立腺過形成の場合は、男性ホルモンの影響で生じるため、去勢をすることで、発生を予防することができます。
前立腺腫瘍の場合は、男性ホルモンの影響ではないので、去勢手術で予防することはできません。

まとめ

・前立腺肥大は、犬によく見られる病気の1つで、「腫瘍以外」か「腫瘍」の2つに分けることができます。
・腫瘍以外の前立腺肥大は、男性ホルモンが原因のため、去勢手術を実施することで予防できます。かかりつけの獣医さんとしっかり相談をして、去勢手術を受けることをオススメします。
・腫瘍の場合、予防はできません。また、悪性腫瘍であることがほとんどで、治療困難となるケースもあります。
・前立腺肥大では、血尿が出たり、きしめんのような平たい便が出るなどの特徴的な症状が出ることがあります。これらの症状が見られた場合は、前立腺肥大の可能性があるため、早めに動物病院を受診しましょう。
監修/八木田智洋先生(かんもん動物病院副院長)

※掲載した治療費についてはおよその目安です。病院にご確認ください。

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