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【獣医が教える】オス犬の去勢手術にかかる費用と留意点

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男の子の犬を飼うと、動物病院から勧められることが多い去勢手術。病気の予防のためにも、適切な時期に手術を受けておきたいところです。今回はこの去勢手術にかかる費用とその留意点についてお話しします。

オス犬の去勢手術の相場

去勢手術を受けたいなと思っても、実際にいくらぐらい費用がかかるのか見当がつかないと不安になってしまいます。動物病院は自由診療なので、病院によって手術費・入院費等が異なります。去勢手術も同様に、病院によって費用が異なります。だいたいの相場は、小型犬で30,000〜50,000円、大型犬で50,000〜70,000円です。
かなり幅はありますが、手術前後の検査や処置・抜糸などを含めると、このような価格帯の病院が多いです。探してみると、より安い病院もありますし、病院によっては、小型犬の去勢手術で100,000円を超えることもあります。

高額の手術費をとる病院は、ぼったくり?

なぜ動物病院によって、こんなにも費用に幅が出てきてしまうのでしょうか。最初にみなさんの頭に浮かぶのは、高額な手術費をとる病院は、悪質なぼったくりをしているのではないか、という疑念だと思います。このような高額な手術費をとる病院は、都心部に多い傾向が見受けられます。ただ、最近は都心部を中心に動物病院の数が増え、動物病院の生き残り競争が激しくなってきていますので、そのような状況下では、悪質なぼったくりをするような病院は患者さんが来なくなり、あっという間に閉院に追い込まれてしまうはずです。そうなっていないということは、ちゃんと高額になるだけの理由があり、需要があるということなのです。

手術費が高額になる理由

手術費が高額になる理由には、どういったことがあるのでしょうか。いくつかの観点から考えていきましょう。

1.地域

その土地で動物病院を経営すること自体に、高いコストがかかっている場合です。動物病院に限らず、飲食店などあらゆる業界で言えることですが、都心部では、地方と比べ病院や駐車場の土地に要する経費が格段に高くなります。そのため、病院での経費支出は大きくなり、治療費を高くしないと採算が合わなくなってしまうのです。

2.手術前後の処置の違い

動物病院によって、手術前・手術後の処置や準備には若干の差があります。手術前の準備には、血液検査・レントゲン検査・超音波検査・点滴・麻酔前投与薬などがあります。手術後の処置には、抗生剤・エリザベスカラー・手術服・一泊の入院・抜糸などがあります。犬の状態にもよりますが、これらの処置は必ず全てやらなくてはいけないものではありません。動物病院の方針、飼い主の意向によって選択されます。

3.手術内容の違い

オス犬の去勢手術の術式(手順・方法)は、どの動物病院でも大きくは変わりません。しかし、手術に使用する手術器具や縫合糸は、動物病院によって異なります。縫合糸ひとつとっても、安価なものと高価なものの差はとても大きなものです。また、電気メスをはじめ、より安全に負担の少ない手術を行うために、高額な医療機器を設置する病院が多くなってきました。これらの医療機器を使用するには、その医療機器を購入する費用に加え、使用するたびに行う滅菌作業や消耗品の部品に対する費用が発生します。これらのコストを補うため、手術費が高額になることがあります。病院によっては、縫合糸の種類や高度医療機器の使用の有無をオプションとして選択し、別途費用としているところもあります。

4.患者の「状態」の違い

犬によっては、精巣が陰嚢の中に下りてきていないこと(停留睾丸)があります。その場合の精巣は、下腹部の皮下や腹腔内にあります。皮下にある場合は、手術創がやや大きくなるもしくは2つにすることで摘出することができます。しかし、腹腔内にある場合は、女の子の避妊手術と同様に、開腹して腸や膀胱の裏から探し出して摘出する必要があります。手術の手技が大きく変わってくるため、費用も高くなります。
また、精巣の状態に関わらず、犬の健康状態によっても左右されます。手術で必ず通らなければならない道、それが全身麻酔です。近年は獣医医療の進歩により、全身麻酔の安全性は大きく向上しました。しかし、たとえば心臓病や腎臓病を患っているような高齢の犬と健康な若い犬とでは、麻酔リスクに差が出てきます。その大きくなったリスクを少しでも減らすため、持病がある犬では追加検査や追加薬剤を使用します。検査や薬剤の種類が増えれば増えるほどコストは高くなり、費用もそれに伴って高くなります。

5.患者の「体格」の違い

人間とは違い、犬猫ではほとんどの薬において、投薬量が体重に比例して変化します。例えば、3kgの犬に1mlの薬を投薬する場合、30kgの犬では10mlの投薬が必要になります。去勢手術でも麻酔薬を始め、複数種類の薬を使用します。麻酔薬は胃薬や抗生剤などと比べると高価な薬品です。体重の大きな犬猫、特に大型犬ではそれだけ費用が高くなります。

6.価値観の違い

ここまでの観点とは少し違った観点になりますが、実際に私が経験したことをご紹介させていただきます。
私はいくつかの動物病院勤務を経て現在に至りますが、ある病院で勤務していたとき、ある飼い主様から次のような意見をいただきました。
「この病院はスタッフの感じもいいし、評判もいい。治療はよく効くし、いつも本当に助けていただいています。でも、価格が安いことだけが心配なので、手術や入院が必要になったときは、治療費が高い病院に行きたいと考えています。申し訳ないのですが、よろしくお願いいたします。」
牛丼屋さんではありませんが、獣医医療も丁寧・愛情に加えて上手い・安い・早いが求められているものと考えていた私は、勤務医ながらにはっとさせられました。安すぎる費用は、飼い主に不安を与えることもあるのです。
多くの動物病院は、飼い主の負担が大きくならないよう、治療のクオリティを高く維持しつつ、なるべくコストを抑えて医療費に反映しようと努力しています。したがって、安価でも高いクオリティの治療をしている動物病院はたくさんあります。しかし、時と場合によっては、同じクオリティでも少し高めの費用にした方がいい事情があるのかもしれません。

オス犬の去勢手術の補助金・助成金

去勢手術の費用を抑えたいと考えた時に、助成金という言葉を聞いたことはありますでしょうか。住んでいる、または犬を飼育している地域の市区町村が、去勢手術に対して費用の一部もしくは全額を負担してくれる制度です。この制度は、もともと捨て犬問題への対策から取り組まれるようになりました。現在では犬を捨てることは立派な犯罪であり、動物愛護の思想が強くなったためほとんど見られなくなりましたが、以前は望まれない出産で生まれた子犬が捨て犬になってしまうという社会問題があったのです。
飼育しているオス犬の去勢手術を考えている家庭にとっては、大変うれしい制度です。しかし、近年ではほとんどの自治体で助成金制度の見直しがなされており、対象が「飼い主のいない猫」に限られてきています。飼い犬のことは飼い主の責任。税金で負担することではないという考え方かもしれません。
居住している地域によって制度は異なりますので、助成金を検討している場合は住んでいる市区町村に問い合わせてみましょう。

例:三重県、桑名市
 条件:市への犬飼育登録済み、年度内に狂犬病を接種済み
 方法:補助金申請書、獣医師の手術実施証明書を指定の役所へ提出する
 期間:手術後1年以内
 金額:1500円

ペット保険の適用の有無

よくある質問のひとつに、去勢手術はペット保険の対象になるかどうかというものがあります。基本的に去勢手術にかかった費用は保険の適用外となります。理由としては、保険とは定期的に費用を支払った人に対し、予期せぬ病気や怪我をしたときにその治療費を補償するものであり(※保険会社によって補償の範囲は異なります)、自発的に行った治療もしくは予防に対しては保証できないからです。
近年、ペット保険の種類が飛躍的に多くなり、様々な条件のもと治療費を保証する保険会社が増えてきました。補償内容について詳しく知りたいという場合は、保険会社に問い合わせてみましょう。
余談ではありますが、適切な時期に去勢手術を受けていることで、その後のペット保険の保険料が割引されるケースがあります。これは、去勢手術を受けることで、将来的に一部の病気になるリスクが減るためです。ペット保険を検討している場合は、このことについても問い合わせてみましょう。

納得できる費用で去勢手術を受けるには

去勢手術の費用を抑える工夫としては、助成金もペット保険もほとんど使えないというのが現状です。となると、実際に動物病院から請求される費用が納得できる費用であることが唯一の納得解になります。そのためにはどうすればいいのか、いくつかの観点から考えていきましょう。

1.電話で費用を確認する

ホームページなどで去勢手術費用の公開をしていない動物病院には、電話で費用の概算を聞いてしまうのが手っ取り早いでしょう。前述したように、その子の状態によって費用は変動しますが、一般的な状態の子の去勢手術の施術費については教えてくれるはずです。
ちなみに、ホームページなどで費用の公開をしない理由としては、動物病院の価格競争を防ぐためということがあります。病院によってその費用に設定する事情がありますので、価格優先社会となり医療に支障をきたす事態は避けたいところです。

2.費用の内訳表示の有無を確認する

動物病院では、費用がかかる項目の設定について規制がありません。明細書が去勢手術の総額だけの表示であることもあれば、費用が処置や薬の項目によって細かく分けられている場合もあります。項目が細分化されている方が納得いくようであれば、どのような項目に分かれているかも質問してみましょう。
項目が細分化されている場合には、以下のような項目があります。
診察料/採血料/血液検査(血球検査、生化学検査)/レントゲン検査/注射料/抗生剤薬価/血管確保/静脈点滴/麻酔前投与薬/麻酔/手術/内服薬/抜糸料
ただし、細分化されていれば安いというわけではないので、注意しましょう。

3.信頼のおける動物病院を選択する

いかに安い費用であっても、信頼関係のない動物病院であれば納得できないかもしれませんし、いかに高い費用であっても、信頼関係のある動物病院であれば納得できることもあります。些細なことでも相談し、日頃から信頼のおける行きつけの動物病院をつくっておくことが、大切です。

まとめ

去勢手術の費用は動物病院によって様々であり、その価格設定には事情があるということをご説明しました。獣医医療は、飼い主と病院との信頼関係なくては成り立ちません。去勢手術の費用に対してよほどの不満がなければ、普段から付き合いのある、信頼関係を築いている動物病院で施術を受けるのが最も良い選択だと思います。些細なことでも相談できる、かかりつけ医を作りましょう。

監修/滝田雄磨(SHIBUYAフレンズ動物病院 院長)

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「オス犬の去勢手術後のケア方法や注意点、術後におこる変化について」

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