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【獣医師監修】犬のマイクロチップ義務化|装着や登録・変更手続きの方法は?

犬や猫へのマイクロチップ装着は、2022年(令和4年)6月1日から販売業者に対して義務化されます。一般の飼い主による愛犬や愛猫へのマイクロチップの装着は努力義務となりますが、登録内容に変更があった場合は変更届けを行うことが義務付けられます。

犬のマイクロチップ装着は、迷子や盗難被害、災害時の身元確認、動物の遺棄の防止において重要な役割をします。この記事では、犬のマイクロチップの装着や日本獣医師会への登録申請、変更手続き、IDの照会方法など一連の流れをご紹介します。

加藤 憲一 先生

 獣医師
 相模原プリモ動物医療センター院長

 日本大学生物資源科学部獣医学科卒業
 麻布大学附属動物病院腫瘍科専科研修医
●資格:獣医師/日本獣医がん学会獣医腫瘍科認定医II種

●所属:日本獣医がん学会

●主な診療科目:一般診療(外科・内科)/腫瘍科/画像診断科

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犬のマイクロチップとは?

人間の指の上にのせた犬や猫、ペットのためのマイクロチップのクローズアップ写真
Todorean Gabriel/gettyimages
まず最初に、犬や猫に装着するマイクロチップがどのようなものなのかをみていきましょう。

犬のマイクロチップの大きさや耐久年数は?

犬や猫などに埋め込むマイクロチップは、長さは8~12mm程度、直径は2mm程度の円筒型の電子標識器具で、指先に乗るくらいの非常に小さな「電子タグ」です。

内部はIC、コンデンサ、電極コイルからなり、外側は生体適合ガラスまたはポリマーで覆われているもので、チップひとつひとつには世界で唯一の15桁の数字(ID番号)が記録されています。

この数字が記録されているマイクロチップを体内に装着した動物は、専用の読み取りリーダーを用いて15桁の数字(ID番号)を読み取り、その数字を登録団体に問い合わせることで、個体識別や飼い主の情報を確認できる、世界中で採用されているシステムです。

マイクロチップの耐久年数は30年程度といわれており、チップ側には電池を必要としないため、一度犬の体内に埋め込めば半永久的に機能します。さらに、一度皮下に挿入したマイクロチップは体外に出てしまうこともありませんし、データを書き換えられる心配もほとんどありません。現状では動物の個体識別を行う方法として、もっとも精度が高いといえるでしょう。

犬のマイクロチップの装着方法

マイクロチップは、犬の体内(皮下)に直接埋め込みます。装着には手術の必要はなく、一般的な注射針より少し太めの注入針のついた「インジェクター」や「インプランター」と呼ばれる使い捨てのチップ注入器を使って体内に注入します。

このとき、麻酔や鎮静剤の必要はなく、犬が感じる痛みも通常の注射器の使用と変わりはありません。犬や猫の場合は、頸部背側(首の後ろ)の皮下に埋め込むことが多いです。犬の場合は、生後2週齢頃から埋め込みができるといわれています。

また、動物へのマイクロチップ注入は、医療行為にあたるため、必ず獣医師が行う必要があります。

犬のマイクロチップを読み取る方法

マイクロチップに記録された15桁の数字(ID番号)を読み取るには、専用のマイクロチップ読み取り機である「マイクロチップリーダー」を使用して、動物の体にかざすことで、番号の確認やマイクロチップの装着の有無を確認できます。

マイクロチップリーダーは、全国の動物愛護センターや動物病院、保健所などに常設されていて、行政の担当者や獣医師などによってID番号をオンラインや電話、FAXでデータベースへの照会を行い、所有者の連絡先や犬の情報を確認します。

犬や猫のマイクロチップ装着義務化で変わること

犬のマイクロチップ装着 インジェクター
Fly_dragonfly/gettyimages
2019年6月に改正動物愛護管理法が成立し、犬や猫へのマイクロチップ装着が義務化されることが決まりました。これにより、犬や猫の繁殖業者など(ペットショップやブリーダー含む)へのマイクロチップの装着・登録が義務付けられます。このため、改正動物愛護管理法が施行される2022年6月1日以降は、ペットショップやブリーダーから迎え入れた犬の体内にはマイクロチップが装着されていることになります。

また、マイクロチップが装着された犬を迎え入れた飼い主には、マイクロチップの登録内容変更届出を行うことが義務付けられるため、登録内容に変更があった場合は飼い主自身が登録情報の変更手続きをしなければなりません。

すでに飼っている犬にもマイクロチップを装着するかについては、努力義務となります。現時点では、所有する犬や猫にマイクロチップを装着していない飼い主に対する罰則の規定はありません。

また、マイクロチップ登録については、環境大臣が日本獣医師会を指定登録機関として指定しており、動物愛護管理法に基づき日本獣医師会が登録関係事務を行うこととなります。

犬のマイクロチップの義務化はいつから?

改正動物愛護管理法は2019年(令和元年)6月19日に公布されており、2022年(令和4年)6月1日に施行となります。

このため、2022年6月1日以降、犬猫等販売業者については取得した犬・猫への個体識別のためのマイクロチップの装着と、所有する犬・猫にマイクロチップを装着した者について、飼い主情報とマイクロチップの識別番号等を環境大臣に登録することが義務付けられます。

また、先ほどお伝えした通り、一般の飼い主についても所有する犬・猫へのマイクロチップの装着の努力義務が課せられます。

犬のマイクロチップのメリットとデメリット

獣医による犬のマイクロチップリーダーでの読み取り
olgagorovenko/gettyimages
では、ここからは、犬の体内にマイクロチップを装着することのメリットとデメリットについてみていきましょう。

マイクロチップを装着するメリット

犬の体にマイクロチップを装着するメリットは「個体識別」を行う際に役立ちます。もし、愛犬が脱走したり迷子になった際、あるいは、地震などによる災害が発生した際に、愛護センターや保護施設などに引き取られていたとしても、マイクロチップに記録されたID番号を読み取り、日本獣医師会に照会することで、飼い主の情報(名前、住所、連絡先など)を確認できるため、正式なルートで自宅へ返還されることが期待できます。

迷子や災害、事故、盗難などで飼い主や家族とはぐれてしまったとしても、愛犬のマイクロチップ番号が確認でき身元が分かれば、早期に再会できる可能性が高まることでしょう。犬と暮らす方の防災の観点からもとても大切なことです。

また、マイクロチップの番号から飼い主が特定されることから、愛護センターへの収容や飼い主不明の犬の殺処分を減らすことにもつながりますし、動物を遺棄する飼い主の抑止力にもなるといわれています。

ただし、マイクロチップリーダーがなければ、ID番号の確認を行なうことができません。また、ID番号をオンラインや電話・ファックスでデータベースへの紹介を行なうため、それらがダウンしてしまうような、大災害のような状況には、時間がかかることが想定されます。従来の迷子札との併用が必要です。

マイクロチップを装着するデメリット

犬の体にマイクロチップを装着することは動物の命に関する多くのメリットがあります。しかし、デメリットが全くないというわけではありません。

マイクロチップを装着するデメリットとしては、体内(皮下)に注入する際に通常の注射程度の痛みがあること、もし犬が保護されたとしても、読み取るためのマイクロチップリーダーがなければ、ID番号の確認の照会を行うことができません。

マイクロチップの安全性

犬のマイクロチップを装着による副反応については、マイクロチップは生体適合素材が使用されているため、アレルギー反応が起こることは稀であると考えられています。これまでにマイクロチップを装着したことで大きな問題となった事例は見つかっておらず、外部からの衝撃による破損の報告もないそうです。

また、レントゲンやCT、MRIなどの検査も行うことができますが、MRIの場合はマイクロチップのある場所で画像が乱れるなどの影響が出る場合があります。

その他に稀なケースとしては、犬の体内でマイクロチップが移動する事例が報告されていますが、皮下組織内での移動に留まり、筋肉組織に入り込むわけではなく、読み取りができなくなる可能性は考えにくいといわれてます。皮下に注入したマイクロチップの箇所を触るとわかることがありますが、摘んだり触って刺激を与えると場所が移動してしまう可能性があるので触らないようにしましょう。

海外と日本のマイクロチップ事情の違い

新鮮な緑の草の芝生と花の中で遊んで幸せな犬
alexei_tm/gettyimages
海外では犬や猫などの動物に対するマイクロチップ装着がすでに義務化されている国もあります。ここでは、日本と海外のマイクロチップ事情についてみていきましょう。

日本のマイクロチップ普及状況

日本においては、動物園や水族館などではほとんどの動物にマイクロチップが装着されるようになりましたが、一般家庭には当初はなかなか浸透しなかったといわれています。環境省がペットの飼い主を対象に行った平成23年(2011年)の調査によると、ペットの首輪および名札の装着率が85.4%だったのに対し、マイクロチップの装着率はわずか7.8%でした。

しかしその後、自治体などの呼びかけの成果もあり、2021年11月現在、公益社団法人日本獣医師会(以下、日本獣医師会)がマイクロチップの情報管理を行っている「動物IDデータベースシステム」には犬のみで205万件以上もの登録数が確認できるようになりました。2010年末時点では約45万件だったため、着々と数が増えてきています。

2022年6月1日の改正動物愛護管理法の施行で販売される犬や猫などへのマイクロチップ装着とが義務化されることで、今後は登録数がさらに増加することでしょう。

海外のマイクロチップ普及状況

海外では、犬のマイクロチップ装着が浸透している国もあります。たとえばフランスやスイス、ベルギー、イギリス、イタリア、オーストラリアなどは、以前からマイクロチップの装着が飼い主の義務として定められていました。

中には、日本から海外に犬を連れて行く際にもマイクロチップの装着を求めている国もあります。また、日本に帰国する場合は輸入検疫を受けなければなりませんが、輸入される犬にはマイクロチップの装着が既に義務化されています。

このため、マイクロチップを装着しないで日本に到着した場合は、動物の個体識別措置が講じられていないとみなされ、動物検疫所で180日の係留期間が必要となります。国を越える犬の輸送が必要な場合は、動物検疫所や大使館に事前に確認をされるとよいでしょう。

犬のマイクロチップ装着にかかる費用

マイクロチップの装着にかかる費用は動物病院によって異なりますが、一般的には数千円から一万円程度となっています。さらにマイクロチップへの情報登録料として別途1,050円がかかります。(※マイクロチップの義務化によって登録料に変更があることが環境省より発表されています。)中にはマイクロチップ装着費用を一部助成してくれる自治体もあるので、事前に調べておくのもおすすめです。

装着するマイクロチップのメーカーによっては、登録料が含まれているケースもあるので動物病院にかかる費用はどれくらいか事前に確認しておくとよいでしょう。

ペット保険の種類によってはマイクロチップを装着していることで保険料の割引が行われる商品もあります。

犬のマイクロチップ装着から、登録変更手続きの流れ

犬と一緒に日本の女性医師
violet-blue/gettyimages
次に、犬へのマイクロチップ装着と日本獣医師会へのデータ(ID番号や飼い主情報など)の登録方法の流れについてみていきましょう。

マイクロチップの装着

動物病院で獣医師にマイクロチップを装着してもらいます。読み取り機であるマイクロチップリーダーを体にかざして15桁のID番号を確認できれば装着は完了です。

装着後に、動物病院で日本獣医師会への登録申請書と発送用の封筒をもらいます。

登録料の支払いと登録手続き

装着後、クレジットカード払いかコンビニエンスストア支払いでデータ登録料1,050円を支払います。

飼い主が飼育者(登録申請者)欄に連絡先を記入、獣医師が犬の名前や生年月日、動物の種類などを記入した動物個体識別記号(マイクロチップ・動物ID)登録申込書を動物病院でもらった封筒を使って日本獣医師会に郵送します。このとき複写の控えを保管しておきましょう。

また、インターネットを使用した「公益財団法人日本獣医師会:マイクロチップ登録申請システム」ではオンラインでのWEB登録が可能です。(※登録申請書の画像データなどが必要です。)

※現在の登録料と変更登録料は郵送申請・WEB申請ともに1,050円となっておりますが、2022年(令和4年)6月1日の改正法の施行に伴い、施行後は指定登録機関となる日本獣医師会へオンライン申請による登録・変更登録を行った場合の登録料は300円、書類申請を行った場合は1,000円となることが環境省から発表されています。(2021年9月24日現在)

登録完了

登録申請後、申請内容に不備がなければ2週間程度で日本獣医師会からマイクロチップデータ登録完了通知書のハガキが届き、登録が完了となります。

登録の変更・削除手続きの手順

マイクロチップが装着されている犬を購入した場合や引っ越しなどで飼い主の情報が変更になった場合、犬を譲り受けて所有者が変わった場合などは、マイクロチップを装着している動物の変更申請を行わなければなりません。

変更届けが必要な場合は
  1. 飼育者が代わった場合
  2. 飼育者の住所・連絡先が変わった場合
  3. 動物が死亡した場合
  4. となります。

登録内容に変更があった場合は「日本獣医師会マイクロチップ登録申請システム」にてオンライン手続きを利用するか、窓口である日本獣医師会へ郵送、FAX、メールにて手続きが可能ですが、犬の譲渡があった場合は、以前の飼い主さんから日本獣医師会へ連絡を入れた上で、変更の手続きを進める形となります。

変更の際には、マイクロチップ登録時の控えや登録完了ハガキが必要です。紛失した、あるいは登録内容がわからないことがある場合は、日本獣医師会に相談するとよいでしょう。

マイクロチップは飼い主と愛犬を繋ぐ大切なデータシステム

愛犬が迷子になったとき、地震などの災害が発生したとき、盗難や事故などによって、飼い主さんと愛犬がはなればなれになって、行方がわからなくなってしまうことも考えられます。

愛犬がどこかで保護されたとき、マイクロチップを装着していれば、マイクロチップリーダーによってID番号を確認することができます。ただし、行政の担当者や獣医師などがID番号をデータベースに照会を行ったとき、飼い主の情報を登録していないと、愛犬の情報を把握することはできません。

マイクロチップは皮下に埋め込んだだけでは、所有者の情報が把握できません。装着後は必ずマイクロチップのID番号と飼い主情報の登録手続きを行いましょう。特に引っ越しなどによる変更手続きは忘れないよう注意してください。

「マイクロチップにはGPS機能がついているの?」という飼い主さんもいるようですが、現在動物に埋め込まれているマイクロチップにはGPS機能は備わっておりません。IT技術も進む中、今後はGPS機能のついた首輪のように、迷子になった犬の追跡がマイクロチップでできるかも?という未来がやってくるかもしれませんね。

今回は、法改正に伴い犬の飼い主が知っておきたい犬のマイクロチップの義務化についてお伝えしました。

環境省 動物の愛護と適切な管理 マイクロチップを入れていますか?

農林水産省 動物検疫所 海外から日本への犬、猫持ち込みについて

監修/加藤憲一先生(相模原プリモ動物医療センター院長)
文/maki
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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