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【獣医師監修】犬にトマトを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

基本的には、犬にトマトを食べさせても大丈夫です。トマトには抗酸化作用が強い「リコピン」という成分が含まれています。ただし、葉や茎、未成熟な青いトマトはNGです。犬に有益なトマトの栄養素と与える際の注意点を紹介します。

佐野 忠士 先生

犬にトマトを与えるときは未熟なトマトや葉や茎は避けて

トマトを見つめる犬
jbosley58/gettyimages
トマトは基本的には犬に与えても大丈夫な野菜のひとつです。
露地栽培のトマトは夏が最盛期ですが、今は温室で栽培された大小および種類さまざまなトマトが、一年中市販されています。ヨーロッパでは「トマトが赤くなると医者が青くなる」という格言があるほど、健康に役立つ栄養価の高い野菜として親しまれているようです。

トマトの健康成分として知られているのが、「リコピン」。ポリフェノールの一種で、体を老化させる活性酸素を除去する強い抗酸化作用があることから、人間においてはガンや動脈硬化の予防に役立つといわれています。

また、トマトには「リコピン」のほかにも犬の体に役立つ「カリウム」「βカロテン」「ビタミンC」などの栄養素が豊富に含まれています。水分も多いので、水を飲みたがらない犬の水分補給に役立てれば、熱中症予防に役立つでしょう。

ただし、トマトには微量ですが、中毒性のある物質が含まれています。中毒物質は、トマトの茎やヘタの部分、未成熟の緑色のトマトに多く含まれているので、家庭菜園で収穫したトマトや市販のプチトマトを与える場合は、注意が必要です。

トマトのおもな栄養素|トマトもミニトマトも約94%が水分

床に顎をつけて、横に置いてあるトマトと顔を並べているチワワ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
トマトに含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分

エネルギー20kal
水分94.0g
タンパク質0.7g
脂質0.1g
炭水化物4.7g
灰分(無機質)0.5g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬がトマトを食べるメリット|病気の予防とアンチエイジング、熱中症予防も

木のテーブルの上にある大小3つのトマトに鼻先をつけるようにしてじっと見ている白いトイ・プードル
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬の健康を維持するのに役立つトマトの栄養素を以下に紹介します。

リコピン|抗酸化作用で病気予防と老化防止

植物の赤い色のもとになっている天然カロテノイド色素が「リコピン」。ポリフェノールの一種で、トマトの代表的な栄養素です。
リコピンには強い抗酸化作用が期待されているので、愛犬の健康維持とアンチエイジングに役立つと考えられます。

カリウム|利尿作用、高血圧の予防

トマトにはカリウムも豊富に含まれています。
カリウムには、体液の浸透圧を調整する作用があり、体内に溜まった塩分を尿と一緒に体外に排出することで、高血圧を防ぐ役割を担っています。また、神経の伝達や筋肉の収縮にも深く関わっていて、健康な体の維持にはなくてはならない大事なミネラルのひとつです。

βカロテン|健康な皮膚や被毛、粘膜、歯をつくり、維持する

βカロテンは、犬の体内で必要な分だけのビタミンAに変換され、活用されるもので、トマトの代表的な栄養素のひとつです。

ビタミンAの働きは、おもに皮膚や被毛の健康状態を保ち、丈夫な粘膜や歯をつくること。人の場合には、さらに夜間の視力の維持を助けるといわれていますが、犬の場合にも同じ効果・作用を生じるかどうかはわかっていません。
さらに、βカロテンはビタミンAとして働くだけではなく、それ自体が強い抗酸化作用を持っているので、アンチエイジングや免疫力アップにも役立つと考えられています。

ビタミンC|アンチエイジング、関節炎などの予防も

トマトに含まれるビタミンCには、鉄分の吸収促進や解毒、ホルモン代謝を担う酵素のサポート、コラーゲン合成への関与など、さまざまな働きがあります。愛犬を病気から守るだけでなく、若さを維持し、関節炎を予防するのに役立つと考えられます。

水分|約94%が水分、水分補給で熱中症予防

夏の暑さが厳しくなると、犬も人間同様に夏バテして、水分補給すらまともにできなくなることがあります。そんなときに水分の多いトマトを食べれば、水を飲まない犬に水分を補給することができるでしょう。

犬がトマトを食べるデメリット|葉やヘタ、未熟なトマトには有毒物質

フローリングの床に転がっているプチトマトを、少し離れて不思議そうに見つめるビーグル
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬の体に役立つ栄養素であっても、多量に摂取すればかえって健康を損なう原因にもなりかねません。
また、最近は家庭菜園やベランダ菜園でトマトを育てる家庭も増えているようです。太陽の下で完熟させたトマトは、甘味が増して栄養価も高くなりますが、庭でトマトを栽培している場合などは、少し注意が必要です。

トマトを与える際の注意点と、過剰摂取に注意したい栄養素を紹介します。

アルカロイド、トマチン|中毒性のある有害物質に注意

トマトに微量に含まれる「アルカロイド」は、下痢や嘔吐、さらには痙攣などの中毒症状を引き起こす物質です。とくに、トマトの茎や葉、ヘタの部分に多く含まれているので、愛犬にトマトを与えるときはそれらの部分を取り除いて与えてください。
市販されているトマトであれば、茎や葉がついているものはほとんどないと思われますが、家庭菜園で収穫したものには残っている場合も。プチトマトは市販のものでもヘタがついているので、犬の口に入らないよう注意が必要です。

また、真っ赤に熟していない未成熟のトマトには、「トマチン」という有毒物質が多く含まれています。「トマチン」は「アルカロイド」の一種で、犬の体に悪影響を及ぼす可能性があるので、青いトマトを犬に与えてはいけません。
愛犬と一緒に家庭菜園や農園を訪れた際は、愛犬が畑に落ちている青いトマトを口にしないよう、注意しましょう。

なお、最近は黄色やオレンジ色などカラフルなトマトも市販されていますが、ミニトマトの色の違いは皮や果肉に含まれている色素の違いです。栄養構成はほぼ同じですが、たとえば黒色のミニトマトはブルーベリーに含まれる色素「アントシアニン」、緑色のミニトマトは「トマチン」という栄養素など、犬にとって中毒を引き起こす可能性のある成分が含まれているので、「与えるなら赤いトマト」と覚えておいたほうがよいでしょう。

カリウム|腎臓病の犬は要注意

トマトに含まれる栄養素のひとつ、カリウムは過剰に摂取すると、血液中のカリウム濃度が上がる「高カリウム血症」を引き起こす恐れがあります。血液中のカリウム値が高くなると、四肢のしびれや筋力の低下、嘔吐、不整脈、頻脈などの原因になり、重篤な場合は命を落とす場合もあります。

とくに、腎臓病を患っている犬やシニア犬で腎機能が衰えている場合は、カリウムの排出がうまくできない可能性があります。また心臓の悪い犬も注意が必要です。

なお、カリウムなど、体内の水分に含まれる電解質のバランス影響は、健康だから大丈夫!とは言い切れないことも多いです。とくに高齢の場合は、定期的に血液検査などで体の状態をチェックしてください。

βカロテン|過剰摂取は肝臓に負担

トマトに含まれる豊富栄養素、βカロテンもまた摂取量に気をつけなければならない栄養素です。

従来、「βカロテンは犬の体内で必要な分だけビタミンAに変換して使われるため、βカロテンの過剰摂取による弊害はない」と考えられてきました。しかし、最近の研究で「犬はほかの動物より活発にβカロテンをビタミンAに変換する」ということがわかってきました。
βカロテンを過剰摂取すると「ビタミンA中毒」になりやすく、肝臓病の引き金になる可能性があります。とくに、肝機能が衰えている犬や肝臓病がある犬は、トマトを与え過ぎないよう注意しましょう。

タンパク質に免疫機能が過剰反応する場合も

食物アレルギーは、食べ物に含まれるタンパク質に体内の免疫機能が過剰に反応して起こります。ゴーヤには100g中1gのタンパク質が含まれているので、まれにアレルギー症状を引き起こすことも。食物アレルギーがある犬にトマトを与えるときは、最初は少量から。体の痒みや湿疹、下痢、嘔吐などが起こらないかよく観察してみましょう。

犬にトマトを与えると「涙やけ」が治るって、ホント?

「涙やけ」は、おもに先天的な遺伝と食事や環境要因など様々な原因によって起こるものです。
原因の一つとして考えられている「鼻涙管の詰まり」が軽減されるよう、消化吸収のよい食べ物と水分補給、良質なタンパク質の摂取を心がけることが、改善のポイントとされておりますが、それだけで改善しない症例が多いのも事実です。とくに、トマトに涙やけを治す特有の要素はないので、「トマトで涙やけが治る」という説に信憑性はありません。

犬にトマトを与えるときの注意ポイント|赤い実の部分だけ。皮と種は除くのがベター

鼻先に出された串に刺さった3個のプチトマトを見つめる茶色の柴犬
いぬのきもち投稿写真ギャラリー

与えてよい種類・部位

先述したとおり、青いトマト、熟していても赤以外のトマトは避けてください。糖度の高いフルーツトマトも、肥満の犬や糖尿病の犬には与えないほうがよいでしょう。
茎や葉、ヘタを取り除いて赤い実の部分のみを与えてください。

与えるときの適量

犬にトマトを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。

犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)94g~187g(中0.5個~小1.5個)
中型(6~15kg)215g~427g(中1個~中2個)
大型(20~50kg)530g~1053g(中2.5個~中5個)

※トマト中1個可食部208g、小1個可食部124gとして算出
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理方法

トマトの栄養素を効率的に吸収させるためには、皮や種を除いたほうがよいでしょう。ヘタの部分を取り除いてから、お湯で短時間茹でれば、簡単に皮が剥けます(湯剥き)。生のまま刻んで与えてもOKですが、加熱することでリコピンの吸収率が高まるといわれていますので、湯剥きをしてから与えることをおすすめします。
また、ミニトマトの場合は、そのまま与えると犬が丸呑みして喉につかえる心配があります。大きなトマト同様、小さくカットしてから与えてください。

トマトジュースなどの加工品は与えてOK?

トマトを使った加工品はいろいろありますが、犬に与えてよいものとダメなものがあります。

基本的には塩分や糖分など調味料を加えてあるものはNG。無塩のトマト水煮缶やトマトジュースなら与えてOKです。トマトケチャップや加塩のトマトジュース、トマトソースやトマトゼリーなどは、人間用に味付けされていたり、添加物が加えられたりしているものもあるので、愛犬には与えないでください。

トマトを使ったおすすめ犬おやつレシピ

テーブルの上にある黒い器に入ったプチトマトを舌なめずりして見つめる白いチワワ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
トマトに含まれる栄養素、リコピンは油に溶けやすい性質なので、油と一緒に食べることで吸収率がアップします。トマトは生で与えてももちろんOKですが、せっかく与えるなら
少し手間をかけて、いつもと違うおやつを作ってあげるのもよいですね。

ここでは、ちょっとおしゃれな「ミニトマトのカプレーゼ」のレシピを紹介します。
味付けは一切しない、愛犬のための手づくりメニュー。もちろん飼い主さんも一緒に食べることができます。その際は、飼い主さんが食べる分だけは塩を振って味付けをしましょう。愛犬と一緒にする食事を楽しんでみてくださいね!

ミニカプレーゼ


    <材料>
  • ミニトマト 2個

  • モッツァレラチーズ(丸いチェリータイプ) 2個

  • エキストラバージンオリーブオイル 小さじ1/2

  • 黒すりごま 少々


<作り方>

  1. ミニトマト、モッツァレラチーズを4等分にスライスし、交互に並べる。

  2. そこにオリーブオイルをかけ、ブラックペッパーの代わりに黒すりごまを少々散らして仕上げる。


※同じオイルでも、アボカドオイルやグレープシードオイルは、犬が食べて中毒を起こす可能性があります。油を使うときは、油の種類に注意しましょう。
※モッツァレラチーズも塩分を含みます。与える際には塩分量を計算したうえで、心臓や、腎臓が悪い子には絶対に与えないようにしてください。

トマトは加熱することでも栄養価が上がるので、火を通すのもおすすめです。トマトを軽く茹でてつぶし、適温になるまで冷ましてから与えるのもよいでしょう。なお、砂糖や塩など、味をつけるための調味料は使わないでください。

熟した赤いトマトは犬に与えてOK。適量は守って!

飼い主さんからは、「愛犬が喜んでトマトを食べる」「トマトは好きではないので食べない」という、どちらの声も聞かれます。人間と同じように、犬にも食べ物には好き嫌いがあるようなので、体によいからといって無理に食べさせようとすることはありません。「総合栄養食」のドッグフードを主食に与えていれば、栄養が不足する心配はないので、トマトを好む愛犬に適量の範囲で与えるようにしましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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