この特集では、難病や障がいをもった愛犬とその飼い主さんの、闘病や暮らしの様子をレポートします。
今回ご紹介するのは、脊髄にできた悪性腫瘍を切除する大手術を乗り越え、車椅子で散歩を楽しむイングリッシュ・コッカー・スパニエルのポッキーくんのお話です。
出会いのきっかけは、祖国ルーマニアでの壮絶な体験だった
東京都・Bさん家のポッキーくん(オス・15才/11.5㎏/イングリッシュ・コッカー・スパニエル/いつも前向きでフレンドリー)
日本に住んで30年以上たつBさんは、妻と愛犬ポッキーくんほか2頭のイングリッシュ・コッカー・スパニエルと暮らしています。ポッキーくんは14才のころ、脊髄に悪性腫瘍ができ、歩行が困難になりました。脊髄腫瘍はまれな病気で、切除するには高度な技術が必要となり、リスクも高いことから、手術をしてくれる動物病院がなかなか見つからなかったそうです。Bさんはそれでもあきらめず、手術を行ってくれる動物病院を探し当て、ポッキーくんは一命をとりとめることになりました。
自宅のリビングでくつろぐBさんとポッキーくん。左はポルくん14才、右奥はぼーくん5才。同じ犬種の3頭です
「ポッキーは、私にとって特別な存在で、日本での生活をずっと支えてきてくれた相棒なんです」と語るBさん。ポッキーくんとの出会いは、Bさんが祖国ルーマニアに住んでいたときの壮絶な体験がきっかけだったそうです。
「私が住んでいた1980年代のルーマニアは独裁政権下にあって、政府による非人道的なことが行われていました。私は反政府の学生運動にかかわっていたことから目をつけられ、家族でかわいがっていたイングリッシュ・コッカー・スパニエルの愛犬を政府によって殺されてしまったのです。そのことは長い間、心の傷となっていました」
ハンガリーから日本に来た生後7か月ごろのポッキーくん
そしてBさんが日本に渡り、10年以上が過ぎたころ、ハンガリーに移り住んだ弟さんから「亡くなった愛犬と雰囲気
が似ている同犬種の子犬を見つけたから、愛犬の死から立ち直るためにも日本でいっしょに暮らしてみたら……」という連絡が。Bさんは、ハンガリーに会いに行き、その犬を日本に連れて帰ることを即決しました。以来、ポッキーくんは日本でBさんと暮らして14年以上になります。
水に入るのが大好きなポッキーくん。病気になる前はよく海に連れていってもらい、たくさん泳いでいました
次回はポッキーくんを襲った異変と、難しい手術を決断したBさんの思いをレポートします。
出典/「いぬのきもち」2024年9月号『困難と闘う!……その先のしあわせへ』
写真/田尻光久
写真提供/Bさん、Nさん
取材協力/相川動物医療センター
取材・文/袴 もな
※掲載の情報は「いぬのきもち」2024年9月号発売時のものです。