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【獣医師監修】犬にリンゴを与えても大丈夫。リンゴを食べるメリットと与え方を解説

リンゴは犬が食べてもOKです。犬の体に害を及ぼすような成分は含まれていないので、おやつとして与えても問題ありません。ペクチンやポリフェノール、ビタミン、カリウムなど、犬の健康に役立つ栄養素がたくさん含まれています。犬にリンゴを与えるメリットと与え方を紹介します。

犬は適量ならリンゴを食べても大丈夫

リンゴを食べる小さな犬
Eeli Purola/gettyimages
本来は、秋から冬に旬を迎えるリンゴ。今では一年中スーパーなどで手軽に手に入るので、日本の家庭でもっとも親しまれている果物のひとつといえるでしょう。

そんなリンゴを愛犬にも与えたいと考える飼い主さんは多いようです。
結論からいえば、リンゴは犬に与えても大丈夫です。人にとって美味しくても、犬には危険な「ぶどう」のような果物とは違い、リンゴには犬の体に有害な成分は含まれていません。甘い香りとシャリシャリした食感を好む犬もいるので、おやつに取り入れてもよいでしょう。

英国のウエールズ地方には、古くから「1日1個のリンゴは医者を遠ざける(An apple a day keeps the doctor away)」といういい伝えがあるそうです。それほど、リンゴには人の体に役立つさまざまな栄養素が含まれているということです。
たとえば、腸内環境を正常に保つ食物繊維「ペクチン」、強い抗酸化作用を持つポリフェノール、ビタミンC、A、B6、葉酸などのビタミン類、カリウムやカルシウムなどのミネラル類。それらは、人の体だけでなく、犬の体を健康に保つために大いに役立つものです。

ただし、いくら体によい食べ物でも、たくさん与えればその分よい結果が得られるというわけではありません。犬の体に期待できるリンゴのメリットと適量、与え方について理解しておきましょう。

リンゴのおもな栄養素|約83%が水分、炭水化物が約16%

リンゴのおもちゃをかじって上目遣いでこちらを見ている白いチワワ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
リンゴに含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー56kal
水分83.1
タンパク質0.2g
脂質0.3g
炭水化物16.2g
灰分(無機質)0.2g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬がリンゴを食べるメリット|体調を整え、疲労を回復。病気予防と老化防止にも期待

りんごの後ろでりんごの被り物をして正面を向いてる白いマルチーズ。
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
リンゴには豊富な栄養素が含まれています。犬の健康に役立つおもなものを紹介します。

食物繊維|整腸作用、免疫力UP

リンゴには「ペクチン」という水溶性食物繊維が含まれています。ペクチンは、腸内に溜まった不要物を体外に排出する働きがあり、整腸作用が期待されます。また、ペクチンには腸内の悪玉菌を減らして善玉菌を増やす働きがあるので、腸内環境を改善することで、便秘や軟便の解消が期待できるでしょう。さらに、腸内環境がよくなれば、免疫力もアップすると考えられます。

リンゴ酸・クエン酸|疲労回復

リンゴに含まれている「クエン酸」や「リンゴ酸」には、体内の代謝を促し、体に溜まった疲労物質の乳酸を分解する作用があります。運動後のおやつにリンゴとして与えることで、疲労回復に役立つと考えられます。
また、これらはシュウ酸カルシウム尿石の予防にも有効だといわれています。

ポリフェノール|強い抗酸化作用で病気予防とアンチエイジング

ポリフェノールには強い抗酸化作用があり、病気の予防や老化防止に役立つと考えられます。りんごの皮にはポリフェノールが多く含まれているので、皮のまま犬に与えることで、より多くのポリフェノールを摂取させることができます。
ちなみに最近の研究では、ポリフェノールが筋肉の強化や脂肪の減少にも効果がある結果が得られているそうですが、犬への効能は明らかになっていません。

カリウム|不要な塩分の排出と高血圧の予防

リンゴにはミネラルのひとつであるカリウムが多く含まれています。カリウムには、浸透圧を調整する作用があり、体内に溜まった塩分を尿と一緒に体外に排出することで、血圧が高くなるのを防ぎ、腎臓病の予防にも役立ちます。また、カリウムは神経の伝達や筋肉の収縮にも深く関わっていいます。

ただし、加齢や腎臓病で腎臓の機能が低下していると、余分なカリウムを上手に体外に排出できなくなり、血液中のカリウム濃度が上がる「高カリウム血症」になる心配があります。高カリウム血症は、痙攣や頻脈、不整脈などを引き起こす原因になり、重篤になると命に関わることも。シニア犬や腎臓病のある犬、心機能が低下している犬にリンゴを与えるときは注意が必要です。

ビタミン|体の調子を整え、病気予防、老化防止

リンゴには、ビタミンA(βカロテン)、B1、B2、B12 、葉酸などのB群、ビタミンC、ビタミンEが含まれています。さまざまなビタミンは、相互作用によって犬の体調を整え、病気を予防し、老化の抑制にも役立ってくれます。それぞれの作用は以下の通りです。

◆ビタミンA(βカロテン)
βカロテンは、犬の体内でビタミンAに変換されて活用されます。
ビタミンAは、おもに視力、皮膚、被毛を健康な状態に保つほか、丈夫な粘膜や歯をつくるのに役立ちます。
さらに、βカロテンはそれ自体で強い抗酸化作用を持っているので、犬の体内に発生した有害な活性酸素を除去してくれます。

◆ビタミンB群
脂肪・炭水化物・タンパク質・糖の代謝をサポートし、エネルギーを生成。

◆葉酸
リンゴには、ビタミンB群のひとつである葉酸も含まれています。葉酸はDNAの合成に関わる栄養素。妊娠中の母犬や、成長期の犬にはとくに必要であると考えられます。また、葉酸が不足すると、貧血や口内炎の原因になります

◆ビタミンC
コラーゲンの合成に深く関わるほか、鉄分の吸収促進や解毒、ホルモン代謝をサポート。また、強い抗酸化作用があるので、病気の予防やアンチエイジングも期待されます。

なお、健康な犬は自分の体内でブドウ糖からビタミンCを合成することができるため、犬にはビタミンCの摂取は必要ないと考えられていました。しかし、最近の研究結果から犬にも「ビタミンC欠乏症」があることがわかってきました。健康な犬でも5歳を過ぎれば体内のビタミンC合成能力が低下するとも考えられているので、シニア犬などはリンゴからビタミンCの補給を図ってもよいでしょう。

◆ビタミンE
ビタミンEに含まれる「トコフェロール」と呼ばれている栄養素には、細胞膜が酸化するのを防ぐ作用があります。ビタミンEはビタミンCと一緒に摂ることで、より効率的にその作用を発揮するといわれています。リンゴには、ビタミンCとEの両方が含まれているので、強い抗酸化作用を期待できるでしょう。

胆泥症の犬にリンゴがよいという説はホント?

WEBなどで「胆泥症(たんでいしょう)の犬にはリンゴを与えるとよい」という情報を見かけます。胆泥症は、胆のうに胆汁がドロドロの状態で詰まってしまう病気ですが、現在、胆泥症の明らかな原因はわかっていません。おもな原因として、犬種によるもの、ほかの病気によるものが考えられていて、「病気ではない」という説と「ほかの病気につながる可能性がある」説があります。
治療法としては、食事療法と内服治療がありますが、食事療法では低脂肪で消化のよいものを与えるのが基本なので、脂質が少ないリンゴなら適量を守って与える分には問題ないでしょう。

犬にリンゴを与えるときの注意ポイント|皮はよく洗い、種や芯は取り除く

フローリングの床に置いてあるリンゴの後ろに座って、飼い主を仰ぎ見ている白いウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬にリンゴを与えるときは、以下の注意点を守ってください。

与えてよい部位

皮や皮と実の間には、ポリフェノールやペクチンが多く含まれているので、剥かずに与えて大丈夫です。

なお、リンゴの種や芯には、ごく微量ですが「アミグダリン」という有毒な成分が含まれています。このアミグダリンは、犬の腸内で分解されると「シアン化水素」を発生させ、「アミグダリン中毒」を引き起こす原因となります。

犬の大きさや体調などにもよりますが、中毒を起こすと、食後30分〜1時間くらいで嘔吐や痙攣などを起こすことがあるので、犬にリンゴを与えるときは種や芯はきれいに取り除いてください。

与えるときの適量

犬にリンゴを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。

犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)34g~67g(中1/7個~中2/7個)
中型(6~15kg)77g~153g(中1/3~中4/6個)
大型(20~50kg)189g~376g(小1個~中1.5個)

※りんご中270g(可食部230g) 、小200g(可食部170g)として算出
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理方法

皮には汚れだけでなく、農薬が残っている場合があるので、よく洗ってからカットしてください。種と芯を取り除き、皮ごと小さく刻んであげましょう。

タンパク質にアレルギー反応が生じることも

アレルギーは、体内の免疫機能がタンパク質に対して異常に反応することで起こるものです。リンゴには、少量ですがタンパク質が含まれているので、アレルギー源になる可能性はゼロではありません。リンゴを初めて与えるときは、少し与えて様子を観察してください。皮膚の痒みや下痢や嘔吐があったら、その後はリンゴを与えるのはやめて、獣医師の診察を受けましょう。

りんごジュースやりんご味のアイスなどは与えてもよい?

りんごの加工品は愛犬にあげないほうがよいとされていますが、原材料や製法をよく見れば与えても大丈夫な場合があります。

◆りんごジュース
砂糖無添加のもののみOK。ミックスジュースなど他の果物が混ざっているものはNGです。

◆リンゴチップ
ただ乾燥させたものならOK。油で揚げてあるものや、砂糖がまぶしてあるものはNGです。

◆りんごケーキ
糖分が多いのでNGです。

◆りんご味のアイス
ケーキと同じく、糖分が多いのでNGです。

◆りんご味のゼリー
無添加で砂糖を使用していないシンプルなゼリーのみOK。添加物が多く、糖分が高いものはNGです。また、喉に詰まらせないよう、ぐちゃぐちゃにしてから与えたほうがよいでしょう。

加工度が高いほど多くの成分が使用されているため、アレルギーなどの観点から見ても注意が必要です。

ビタミン、ミネラルが豊富なリンゴは犬のおやつに与えてOK!

さまざまな栄養素がバランスよく含まれ、一年中手に入れやすいリンゴ。甘い香りとシャリシャリした食感を好む犬なら、おやつに取り入れてみるのもよいかもしれません。品種によっては糖分の多いリンゴもありますので、与え過ぎにはくれぐれも注意を。おやつとしての適量を守り、愛犬が大きな塊を喉に詰まらせないよう、小さく刻んでから与えましょう。
犬には与えてはいけない食べ物や、注意したい食べ物があります。確認しておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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