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【専門家が解説】タバコを吸う飼い主さん必読! 犬が受動喫煙するリスク、知ってる?
日頃から愛犬のために対策をしているという人もいるかもしれませんが、思いのほか犬への影響度は高いようです。
タバコを吸う飼い主さんに知ってほしい事実を、いぬのきもち獣医師相談室の先生に聞いてみました。
タバコの副流煙・受動喫煙 犬への影響は?
「まず、タバコの『主流煙と副流煙の違い』を知る必要がありますね。
主流煙とは喫煙者が吸い込む煙のことで、副流煙とはタバコの先から出る煙のことを言います。
また、受動喫煙とは室内またはこれに準ずる環境において、他人のタバコの煙を吸わされることを言います。
厚生労働省によると、副流煙に含まれる有害物質は主流煙よりもニコチンは2.8倍、タールは3.4倍、一酸化炭素は4.7倍多く含まれ、また発がん性のある化学物質であるベンゾピレン、ニトロソアミンなども含まれています。
人において受動喫煙による肺がんと虚血性心疾患の死亡数は年間約6,800人と言われています」
「そうですね。このように人では注目されていますが、犬ではどのような影響があるのかを考えてみましょう。
犬では受動喫煙により、『肺がん』『鼻腔がん』『副鼻腔がん』などの発生率の増加が報告されています」
犬の特徴によって、なりやすいがんの種類にも差が
「長頭種では、発がん物質にさらされる鼻の面積が広いため『鼻のがん』にかかることが多く、短頭種〜中頭種では多くの発がん物質が肺に到達するため、『肺がん』に罹患することが多いようです。(※1)
また、喘息や気管支炎などの呼吸器疾患のリスクも高まります。犬とタバコの煙に関する報告は古くからありますが、最近では犬のリンパ腫とタバコの煙の関連性についての興味深い論文も報告されています(※2)」
タバコを吸う飼い主さんは、愛犬のためにどんな配慮をするべき?
「タバコの煙は有害物質の粒子が含まれるため重いので、空間の下にたまります。つまり、喫煙者がいるご家庭の犬たちは、有害物質の暴露の多い場所で生活せざるをえないのです」
「また、三次喫煙という言葉をご存知でしょうか。これはタバコの煙の成分が衣服や壁、カーテン、じゅうたんなどに付着して、その残留物が再び直接・間接的に被害をもたらすというものです。
つまり、飼い主さんが犬とは別の場所でタバコを吸っていたとしても、犬は有害物質が付着した衣服で抱っこされたり、物質が付着した部分をなめたりすることで、有害物質を口にしてしまうのです」
愛犬の体のためには、禁煙することが一番の対策に
「そうですね。2018年4月から奈良県生駒市では受動喫煙対策として、喫煙後も45分間は喫煙者の呼気に有害物質が含まれることから、喫煙後45分間はエレベーターの利用を制限し始めました。誰もが気持ち良く過ごせるようにと考えられたものだそうです。
このように、受動喫煙、そして三次喫煙まで考えると、たとえ空間分煙をしたり、空気清浄機などを設置したとしても、タバコの害は決して無視できるものではないでしょう。
愛犬の健康を考えてあげることは自分たち人間の健康にもつながりますから、禁煙することをおすすめいたします。
愛犬のために、今日から禁煙を始めてみませんか?」
愛犬が健康に長生きできるためにも、今一度タバコを吸うことについて、考えてみてくださいね。
※2 K.C.Pinello ,M.Santos,L.Leite-Martins,J.Niza-Ribeiro,and A.J.de Matos.Immunocytochemical study of canine lymphomas and its correlation with exposure to tobacco smoke.2017
※写真はアプリ「まいにちのいぬ・ねこのきもち」にご投稿いただいたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
取材・文/凜香
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