犬と暮らす
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【獣医師監修】犬がなめる行動の理由 人の口や手、地面、なめる場所による違いは
犬が人とコミュニケーションをはかるときによく見られるのが「なめる」しぐさ。そこにはどんな気持ちが隠れているのでしょうか?今回は、飼い主さんの顔や体、床や地面をなめるときの犬の気持ちや、なめることによる細菌感染の危険性についてご紹介していきます。
草場 宏之 先生
横浜戸塚プリモ動物病院院長
日本大学生物資源科学部獣医学科卒業
●資格:獣医師/東京医科歯科大学医歯学総合研究科 研修生終了
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本小動物歯科研究会
●主な診療科目:一般診療(外科・内科)、救急診療、整形外科、歯科
顔をなめるときの犬の気持ち
口をなめる1:「愛情・信頼・従順」
野生時代の犬は、リーダーを筆頭とした群れ社会でした。そのリーダーに対し「あなたに従います」と表現するしぐさのために、口をなめていたのだそう。今や家族になった愛犬が飼い主さんの口をなめてくるのは「信頼しています」「大好きだよ」という、敬意や愛情を示す表現なのです。留守番という不安から解き放たれた飼い主さんの帰宅時や、ふとした瞬間に口をなめて「嬉しい」という気持ちを示しているのでしょう。
口をなめる2:ごはんをおねだり
鼻や耳をなめる:甘えるときや味が好き!?
犬が顔をなめる多くの場合は愛情表現といえますが、「嬉しい」「大好き」と伝えている最中においしい味やニオイを感じると、味を堪能することへ感情がシフトすることもあります。
体をなめるときの犬の気持ち
手をなめる1:遊んで!と催促
手をなめる2:降参しました!
腕やスネをなめる:ストレスがたまっているかも!?
心因性の精神病である「強迫性障害・常同行動」は、ケージに長時間閉じ込められた、何をやっても叱られた、強い欲求不満にさらされたなど、何らかのストレスに長期間さらされた場合に発症するといわれている障害です。
・自分や飼い主さんの腕やスネ、体の一部をなめ続ける
・同じ場所をグルグル回り続ける
・自分のしっぽをしつこく追う
・見えない獲物を飼い続ける
といった行動を数十分に渡り続けていたら、「強迫性障害・常同行動」かもしれません。獣医師に相談することをおすすめします。
床や地面をなめるときの犬の気持ち
地面やコンクリをなめる:病気の可能性が!?
病気が原因でなめるケースは、飼い主さんが呼んでもなめ続けることが多いようです。地面やコンクリートをなめることは衛生的にも良くないので、ドックフードを見直し不足している栄養分を補う、獣医師の診断を仰ぐなどして改善させましょう。
病気が原因でない場合は、以前に同じような行動をした際に飼い主さんが気にしてくれたことを覚えていて、気を引くために繰り返すようになったのかもしれません。その場合は、飼い主さんが反応しなければ徐々に治まってきます。してほしくない行動をしているときは、騒がずに無視することも大切なしつけです。
体をなめさせるときは、細菌感染に注意!
しかし、菌の中には、人と犬の間で感染して健康に被害を及ぼすものもあり、これらの病気は「人畜共通感染症(ズーノーシス)」と呼ばれています。今回は、犬から人に感染しやすい病気を5つご紹介していきましょう。
パスツレラ症
レプトスピラ症
イヌブルセラ症
カンピロバクター症
人に感染した場合、2~7日間の潜伏期間を経て、発熱や腹痛、頭痛を引き起こします。アメリカでは、飲料水を介して約2,000人が発症した事例があります。
ポルフィロモナス菌感染症
やめさせるときはさりげなく
また、犬がなめ始めたとき「やめて!」と騒ぐと、犬は「飼い主さんは楽しんでいる」と感じます。飼い主さんが喜んでいることは、愛犬にとって嬉しいこと。それではなかなかやめようとはしませんよね。
やめて欲しいときはさりげなく顔をそらし、犬が落ち着くのを静かに待ちましょう。やめて静かになったら、褒めるタイミングです。そのことを続ければ「なめなくても愛情は伝わっているよ」と愛犬に伝えることができるでしょう。
「いぬのきもち」2016年5月号『“動き”でわかる犬の気持ち』(監修:荒井隆嘉先生)
「いぬのきもち」2017年6月号『犬をとりまく菌の世界』(監修:齊藤邦史先生)
「いぬのきもち」2017年1月号『拡大版 いぬのきもち獣医師相談室』
監修/草場宏之先生(横浜戸塚プリモ動物病院院長)
文/HONTAKA
※写真はスマホアプリ「まいにちのいぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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