柴犬と秋田犬は同じ日本犬ですが、見た目やルーツがまったく異なります。今回は、スマホアプリ「まいにちのいぬのきもち」への投稿写真と共に、柴犬と秋田犬の違いについて解説。それぞれの性格の特徴、飼育に向いている人の条件もあわせてご紹介します。
柴犬と秋田犬のそれぞれの特徴と見分け方
柴犬と秋田犬は大きさがまったく違う!
柴犬(しばいぬ)の標準体重はオスとメスで異なりますが、8kg~10.5kgとされています。一方で秋田犬(あきたいぬ)の標準体重は、38kg~45kg。体の大きさに違いがあることは一目瞭然ですね。
ちなみに、秋田犬は「大型犬」に分類されるのに対し、柴犬は犬全体で見ると「中型犬」、日本犬の中では「小型犬」に属するという点でも異なります。
柴犬と秋田犬はプロポーションも違う!
柴犬は、堂々と張った胸に発達した筋肉、しっかりとした骨格を持ち合わせており、バランスよく引き締まった体型をしています。そして太く巻き上がった尻尾も、柴犬の外見の特徴のひとつ。なんと尻尾の種類は、9種類もあるのだそう。
- 左巻
- 右巻
- 左二重巻
- 右二重巻
- 車巻
- 半巻
- 半差尾
- 差尾
- 太刀尾
一方で秋田犬は、日本犬の中では唯一大型犬に属しており、頑丈な骨格と、太くたくましい首が特徴的です。また、腰は幅広で背中は水平に広がっているので、全体的にがっしりと大きな体格をしています。柴犬よりもしっぽの付け根の位置が高く、背中側に向かってくるっと巻いている点も違いのひとつといえるでしょう。
柴犬と秋田犬、顔立ちだってまったく違う!
柴犬は八角形の顔と、三角形に近い切れ長で黒目がちの目、暗めの色をした鼻、マズルは長めで締まった口元をしているのが特徴です。そして耳は前傾で、きれいな三角形をしており、個体差はありますが、オスはキリッと、メスは優しい顔つきをしているといわれています。
秋田犬の顔つきは、柴犬に比べると目がアーモンド型で小さく、目・鼻・口が中央に寄っていて三角形に近い形をしているのが特徴です。この素朴な顔つきに魅了される人も多いようです。耳の先端に丸みがある点も、柴犬の顔つきとは異なりますね。また、密集した被毛に覆われています。
性格もこんなに違う!
柴犬やも秋田犬がも愛玩犬のイメージが強いため、どちらも人懐っこい性格をしていると思っている方も多いですが、実はそういうわけではありません。人への接し方ひとつをとっても、微妙な違いがあるんですよ。
柴犬の性格の特徴
柴犬の性格の特徴といえば、誰にでも愛嬌を振りまくのではなく、飼い主さんに対して非常に忠実であることでしょう。また、独立心が強くマイペースな一面もあるので、べったりとした接し方は苦手なようです。そして警戒心が強いので、きちんとしつけなければ吠えやすくなってしまうこともあります。
秋田犬の性格の特徴
秋田犬は優しくて情が深く、温和な性格。知的で飼い主さんだけに従順という特徴もあります。比較的限られた人との関係を大切にし、その関係性に属さない人や犬には、警戒心を向けることもあります。その他にも、子犬のころからコミュニケーションや運動量が不足していると、それがストレスとなって人に噛み付くなどのトラブルを起こすことも。飼育過程で注意が必要です。
実は寿命も違う!
一般的に犬の寿命は、小型犬の方が長く、大型犬の方が短いと言われています。中型犬(日本犬としては小型犬)の柴犬の寿命は約15年、大型犬の秋田犬の寿命は約10年。平均して5年前後の寿命の差があることが分かります。
違いは見た目や性格以外にも!それぞれかかりやすい病気の違い
柴犬と秋田犬の身体的な違いには、発症する病気の面にもおよびます。それぞれがかかりやすい病気は以下の通りです。
柴犬がかかりやすい病気
- アレルギー性皮膚炎
- 外耳炎
- 緑内障
- 認知症
- 白内障
- 歯周病
- 股関節形成不全
- 膝蓋骨脱臼
秋田犬がかかりやすい病気
- 股関節形成不全
- 心室中隔欠損
- 落葉状天疱瘡
- 眼瞼内反症
- 進行性網膜委縮症
- 胃捻転
- 腸重積
柴犬と秋田犬は歴史(ルーツ)も大きく異なる!
柴犬と秋田犬は、見た目だけでなく、誕生のルーツやたどってきた歴史も異なります。
柴犬の歴史・ルーツ
柴犬の歴史は、縄文時代まで遡ります。当時の日本に渡来した縄文人が連れてきた犬が柴犬のルーツとされており、かつては日本の山陰地方に生息していたと考えられています。明治時代になると洋犬の輸入がはじまるのですが、異種交配が流行したことなどが原因で、純粋な柴犬が激減した時期もありました。
しかし、昭和に入ると、「日本犬を守ろう」という人々の意識が高まりはじめます。そして、1936年「日本の文化を担う存在」として柴犬が天然記念物に指定され、絶滅の危機を乗り越えました。
その後は、昭和23年に誕生した「中号」という柴犬からたくさんの名犬も生まれ、現在もその血筋が絶えることなく、家族の一員として愛されています。
秋田犬の歴史・ルーツ
秋田犬は秋田県大館市(おおだてし)の山間部で、ツキノワグマの猟の際に活躍していた「大館犬(おおだていぬ)」がルーツとされています。その後、江戸時代に流行した「闘犬」を目的に、ほかの犬種と交配させる過程で大型になりました。
それからさらに体を大きくするため、ジャーマン・シェパードやグレート・デーンなどの洋犬や土佐犬との交配が進み、現在の秋田犬の姿になったのです。1931年には、国内犬種初の天然記念物に指定されました。
このように柴犬と秋田犬は、ともに「天然記念物である」という共通点はありますが、現在に至るまでの歴史やルーツはまったく異なります。両者の違いがわかったところで、今度はどちらの飼育に向いているのか、それぞれの性格の特徴や値段とあわせてチェックしましょう!
飼う上で知っておきたい価格相場の違い
ペットショップ、ブリーダー、保護犬など、犬の迎え入れ方はさまざまですが、ペットショップの場合、柴犬は約18万円、秋田犬は約28万円の価格相場となっています。しかし、これはあくまでも目安であり、年齢はもちろん、毛色の違いによっても価格は大きく変わるので注意してください。
柴犬が向いているのはこんな人!飼い方のポイントと注意点は?
柴犬の飼育に向いている人
適度な距離感を保ちながら、しっかりとしつけができる人が向いています。飼い主さんに対する忠誠心が強い犬種ですが、しつけができずに適切な関係性をつくれないと、飼い主さんの指示に従わないワガママな犬に育ってしまうことがあります。かつては猟犬だったこともあり、活発な性格をした犬種です。最低1日2回の散歩など、運動時間の確保も柴犬の飼育の必須条件といえるでしょう。
柴犬の飼育のコツ・注意点
柴犬を飼育する際は、以下の点に注意してください。
- 総合栄養食と記載されているフードを、年齢や体重に応じて量を調整しながら与える
- 抜け毛が多いので毎日ブラッシングを行い、換毛期はマメにシャンプーも行う
- ものへのいたずらや噛みの対策をしておく
- ひとり静かに過ごせるように、クレートなどのハウスを用意する
- 認知症にかかりやすい犬種なので、遊びなどで認知症対策を取り入れる
秋田犬が向いているのはこんな人!飼い方のポイントと注意点は?
秋田犬の飼育に向いている人
活動的な犬種なので、ストレスをためないためにも、かなりの運動量が必要です。そのため散歩などの運動時間をきちんと確保できないと、飼うのは難しい犬種でしょう。さらに体が大きいため、押し倒されたり、引っ張られたりすることも。秋田犬を制御できる体力や、技術に自信があることも飼育条件のひとつです。
他にも、大型犬は食費や医療費、介護費などのコストが、他の犬よりも多くかかるケースがほとんどです。こういった金銭面の問題をクリアできるかどうかも、必須条件といえるでしょう。
秋田犬の飼育のコツ・注意点
また、秋田犬を飼育する際は以下の点にも注意してください。
- 散歩は朝夕2回・それぞれ1時間程度行う
- 総合栄養食と記載されているフードを、年齢や体重に応じて量を調整しながら与える
- 換毛期の春と夏には、ブラッシングやシャンプーなどのケアをしっかり行う
- 関節等に負担がかからないよう、生活環境の床に滑らない処置を施す
- 夏場は、ハアハアとした呼吸にならないよう、室内気温を低く保つ
かわいさだけではなく、飼い方やしつけ方の大変さも把握しよう!
柴犬と秋田犬は、似ているようでまったく違う犬だということがわかりました。どちらも魅力的な犬種ではありますが、他の愛玩犬と比べるとしつけの難易度が少し高く、一定の運動量の確保が必要です。「かわいいから」という理由だけで飼ってしまうと、飼いきれなくなって悲しい結末を迎える可能性もあります。
もし柴犬や秋田犬を飼ってみたいとお考えの場合は、運動量、食事量、値段、しつけ方などの飼育条件をクリアできるかどうか、今一度考えてみてください。そのうえで、愛情をもって最後までお世話ができると確信できるのなら、迎え入れる準備をしてみてはいかがでしょうか。きっと楽しい愛犬ライフを送れるはずですよ!
参考/「いぬのきもち」特別編集『柴犬の飼い主さん3万人の体験から作った!柴犬との暮らしがもっと楽しくなる本』(監修:「Can!Do!Pet Dog School」代表 日本動物病院福祉協会認定家庭犬しつけインストラクター 西川文二先生、東京農業大学農学部教授 長島孝行先生)
「いぬのきもち」WEB MAGAZINE 『柴の特徴と性格・価格相場|犬図鑑』
「いぬのきもち」WEB MAGAZINE 『秋田犬の特徴と性格・価格相場|犬図鑑』
「いぬのきもち」WEB MAGAZINE 『柴犬の特徴・性格・飼い方』(監修:ヤマザキ学園大学 講師 危機管理学修士 福山貴昭先生)
「いぬのきもち」WEB MAGAZINE 『秋田犬の特徴・性格・飼い方』(監修:ヤマザキ学園大学 講師 危機管理学修士 福山貴昭先生)
文/pigeon
※写真はスマホアプリ「まいにちのいぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください