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【獣医師Q&A】犬の便秘は何日から?なったときのホームケアなど
犬の健康トラブルのひとつに便秘があります。そこで今回は、犬の便秘の基準や原因、便秘になりやすい犬の特徴、犬が便秘になったときの対処法や、便秘改善に効果的な食べ物などについて、獣医師の先生にお話をうかがいました。
いぬのきもち獣医師相談室
そもそも何日ウンチが出ないと犬は便秘なの?
獣医師:
「具体的な基準はありません。しかし、丸1日排便しないことはあっても、2日間連続で排便しないというのは、明らかに異常といえるでしょう。
愛犬の便秘の兆候に早く気づくためには、愛犬が1日に何回ウンチをするのか記録しておくのがおすすめです」
病気が引き金になることも? 犬の便秘の原因は大きく分けて6つ
獣医師:
「犬の便秘の原因としては、主に次の6つのことが考えられます。
- ウンチが硬い
体の機能は正常であるものの、腸の中の便が硬すぎるため、ウンチが通過できない状態。便が硬くなる原因としては、食物繊維の過剰摂取や水分不足などが挙げられます。 - 排便時に痛みがある
排便時の痛みによる苦痛からウンチが出せない状態。肛門周辺の傷や肛門嚢炎(のうえん)、直腸内の異物、骨盤や後足の骨折、腫瘍、脱肛など、排便痛の原因はさまざまです。 - 蠕動(ぜんどう)運動の低下
大腸はウンチを押し出す蠕動運動をしていますが、この蠕動運動が十分に起こらないと大腸の中にウンチがたまって便秘になります。蠕動運動が低下する原因としては、加老齢による筋力不足、繊維質不足、低カリウム血症、低カルシウム血症、甲状腺機能低下症、馬尾(ばび)症候群などが考えられます。 - 結腸の閉塞
便を通過させる結腸の中に障壁があり、便通がブロックされた状態。腫瘍、ポリープ、会陰(えいん)ヘルニア、直腸憩室、前立腺肥大などの病気が原因となるケースが見られます。 - 薬剤
ある種の薬が便秘を誘発した状態で、「医原性便秘」とも呼ばれています。犬の体質にもよりますが、鎮痛剤、硫酸バリウム、スクラルファート、抗コリン剤、抗ヒスタミン剤、制酸剤、利尿剤などの薬剤を服用すると便秘になることがあるでしょう。 - ストレス
なんらかの精神的なストレスが、便秘を招くこともあります。
このように、犬の便秘の原因はさまざまです。病気が原因の場合はなるべく早く気づいてあげることが大切ですから、日ごろから愛犬の様子をよく観察しておきましょう」
便秘になりやすい犬はいるの?
獣医師:
「便秘になりやすい犬種などは特にありませんが、シニア犬は運動不足や消化管運動の低下が原因で、便秘が起こりやすい傾向にあります。また、以下のような習慣のある犬も便秘になりやすいといえるでしょう。
- ドライフードが好きで水分をあまり摂らない犬
水分不足が原因で便秘になりやすくなります。 - 散歩を好まない犬
運動不足になりやすく、便秘になりやすい傾向があります。 - ダイエットフードを食べている肥満気味の犬
ダイエットフードは、カロリーを抑えるために食物繊維を多く入れているので、便の量が増えて硬くなります。そのため、もともと消化機能がよくない犬の場合は、フードが原因で余計に便秘になってしまうことも。
愛犬がこれらの特徴に当てはまる場合は、特にふだんから排便の様子をよく確認しておくといいでしょう」
犬が便秘になってしまったときの対処法は?
獣医師:
「基本的には、かかりつけの先生に診ていただくことをおすすめします。病気が原因で便秘になっている場合は、早期発見が治療のカギを握ることもあるので、まずは診察を受けましょう」
――動物病院を受診した結果、特に悪いところもなく愛犬が便秘になっている場合、飼い主さんはどのようなお世話をしてあげればよいのでしょうか?
獣医師:
「特に悪いところもなく愛犬が便秘になっている場合は、以下の方法を試してみるとよいでしょう。
- 水分の摂取量を増やす
ドライフードを与えている場合は、フードにお湯を少しかけるなどして、水分の摂取量を増やすとよいでしょう。また、ウエットフードは水分を豊富に含んでいるので、効果的に利用すると便秘改善につながります。 - フードの見直しをする
ドッグフードとの相性が悪いと便秘になりやすくなります。また、カルシウムは摂りすぎることによって、便秘を引き起こすおそれがあるので注意が必要です。
なお、便秘に効くとされる食物繊維ですが、やみくもに多ければよいというわけではありません。可溶性繊維(水分を保持する)と、不溶性繊維(ウンチをかさましする)のバランスが取れた市販フードを利用しましょう。
そのほか、よく運動させて、腸の蠕動運動を活発にする、動物病院で消化管の動きを活発にする薬の処方を相談してみる、便秘に効くサプリメントや食べ物などを摂取してみるのも一案です」
犬の便秘に効くサプリメントや食べ物とは?
獣医師:
「犬の便秘には、乳酸菌やビフィズス菌、オリゴ糖などが配合されたペット用サプリメントをおすすめします。食べ物は基本的にはウエットフードや療法食などのドッグフードがよいですが、常態化しないのであれば、無糖のプレーンヨーグルトやオリーブオイル、納豆などを少量与えてみてもいいでしょう」
――犬にヨーグルトやオリーブオイル、納豆を与えるときの注意点を教えてください。
獣医師:
「ヨーグルトやオリーブオイル、納豆は、犬の体質によっては合う合わないがあり、嘔吐や下痢などを誘発するおそれもあります。そのため、初めて犬に与えるときは、ほんの少量(ティースプーン1杯程度)から始めるようにしてください。
また繰り返しになりますが、常にそれらを与え続けるのはやめましょう。特にヨーグルトは脂肪分も高いので、ほかの病気の誘因になりかねません」
犬の便秘にマッサージが効果的って本当?
獣医師:
「ある程度の効果は期待できると思います。ただし、細かいマッサージの仕方やツボは、かかりつけ医や専門家に習ったほうがいいでしょう。
自宅でどうしてもやってあげたいという飼い主さんには、下腹部の頭側から尻尾側にかけて、上から下にやさしくさすってあげてと指導します」
――ありがとうございました。
愛犬の便秘が気になるときは動物病院を受診しよう
以下の記事でも、犬の便秘について解説していますので、あわせて参考にしてみてください。
取材・文/ハセベサチコ
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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