この特集では、難病や障がいをもった愛犬とその飼い主さんの、闘病や暮らしの様子をレポートします。
今回ご紹介するのは、腎機能が低下し、認知症の症状が出ても健気に散歩を楽しむアイちゃんのお話です。
歩くのが何よりも好きで活発だったアイちゃん
東京都にお住まいのKさん宅のアイちゃんは、12才の定期健診のときに腎機能の低下が見られましたが、目立った症状もなく元気に過ごしていました。その後、14才後半から認知症の症状が出始め、徐々に食欲の低下が見られるように。それでも、Kさん家族の献身的な介護とケアによって、16才を過ぎた今も、外での散歩を楽しみ、ゴハンもしっかり食べることができています。
アイちゃんは2007年5月、生後2カ月のころ、Kさん家に迎えられました。当時まだ小学生だったKさんの娘さんとともにアイちゃんは元気いっぱいに育っていきました。
「今、娘は25才の社会人になっているので、アイが家族になってからの長い年月をしみじみ実感しています。アイは、とても賢くて穏やかな性格で、外出が大好き。活発だったころは、キャリーバッグを用意すると喜んで飛びこみ、電車やバスでいろいろな場所に出かけました。とにかく歩くのが大好きで、毎日1時間は散歩をしていました」と話すKさん。大の愛犬家で、犬との暮らしの素晴らしさ、適正飼育の大切さを多くの人に広めたいという思いから、愛玩動物飼養管理士の資格をもち、また、東京都の動物愛護推進員としても活動しています。
犬のお世話に関する知識が豊富なKさんのきめ細かなケアもあり、アイちゃんは12才を過ぎるまで、大きな病気もなく活発に毎日を過ごしてきました。そんななか、かかりつけの動物病院で定期健診をしたとき、腎機能の低下が見られ、12才で慢性腎機能低下のステージ2と告げられました。
13才を過ぎたころから腎機能の低下が進む
「高齢に伴う腎機能低下ということでしたが、とくに症状があらわれることもなく、食欲も旺盛でいつもどおり元気に過ごしていました。13才になったときにはさらに腎臓の数値は悪化し、ステージ3になったのですが、このときも表立った変化は見られませんでした」とKさん。ただ、フードを腎臓ケア用の療法食に切り替え、定期的に血液検査を行うことにしたそう。
「数値は悪化しているのに、食欲が落ちずに体重も増えていることに、かかりつけ医の先生も驚いていました。なので、私の場合、数値だけを見て落ちこむことはやめにして、アイ自身が今どんな状態なのか、ゴハンをちゃんと食べてくれるかといったことを重視してケアをするよう心がけました」
次回は認知症の症状が出始めたアイちゃんの毎日のお世話についてレポートします。
出典/「いぬのきもち」2023年7月号『困難と闘う!……その先のしあわせへ』
取材協力/ハートフルおおもりのどうぶつ病院
写真/尾﨑たまき
取材・文/袴 もな
※掲載の情報は「いぬのきもち」2023年7月号発売時のものです。