この特集では、難病や障がいをもった愛犬とその飼い主さんの、闘病や暮らしの様子をレポートします。今回ご紹介するのは、生まれつき耳が聞こえない病気になったベルちゃんと、そのご家族である小野さんご一家。耳が聞こえないという障がいがあっても、「オスワリ」などの指示がわかるベルちゃんの生活をご紹介します。
耳が聞こえないと、車や自動車などの音に気づけない
耳が聞こえない犬は、車や自転車などの音に気づけないので、散歩のときは注意が必要です。人や車の往来が多い道などでは愛犬をいったん「オスワリ」や「マッテ」させたりできると安全です。ただ、声でコミュニケーションできない犬にそうした指示しつけをきちんと教えらえるのか? そんなふうに思い悩むこともつかの間、小野達也さんは、耳の聞こえない愛犬のベルちゃんに「オスワリ」「マッテ」を試してみました。
「オスワリ」「マッテ」の指示を理解したベルちゃん
「聞こえないとわかっていても、オスワリをさせたいときに、つい『オスワリ』などと声を出してしまいます(笑)。でも、大げさに手の動作を入れれば、見てわかるんじゃないかという一念でした。何度かトライしているうちに、ベルは覚えてくれました。初めて成功したときはうれしかったですね」と達也さん。ちなみに「オスワリ」は人差し指を立てる、「マッテ」は手のひらを向けることで、ベルちゃんに指示を与えます。それが手話の役目を果たし、ベルちゃんは「オスワリ」や「マッテ」の姿勢がとれます。
先天性のアレルギー性皮膚炎を発症
ベルちゃんの耳が聞こえないことは、手の動作による指示しつけで補うことができた小野さん一家。ただ、「今後、ほかの先天性の病気が出てくるかもしれない」と動物病院で言われたことが現実になってきました。毎年春過ぎになると、アレルギー性皮膚炎や外耳炎を発症するようになりました。そのため、食事にも気をつけています。食物アレルギーになりにくい食材を使用したドッグフードは欠かせません。ベルちゃんの食欲が増すよう与えるふりかけは無添加のものを使っています。
てんかんの発作にはびっくり
アレルギー性皮膚炎に加えてもうひとつ先天性の病気も発症しました。それは、てんかん。
今年2月、ベルちゃんはてんかんの発作に襲われました。発作は1分くらいで収まるもので、命に別状はありませんが、今後も発作が起こる可能性があります。心配なのはベルちゃんが留守番をしているとき。発作の拍子にケガをする恐れがないともいえません。発作を予防するため、ベルちゃんには抗てんかん薬を毎日投与することになりました。また、見守りカメラを室内に設置し、万一のときは小野さん夫妻がスマートフォンで様子を確認できるようにしています。
次回は、耳の聞こえないながらも日々を楽しむベルちゃんの暮らしぶりを紹介します。
出典/「いぬのきもち」2019年7月号『困難と闘う!……その先のしあわせへ』
写真/尾﨑たまき
文/犬神マツコ