愛犬の「かゆがるしぐさ」が続く場合、なんらかの病気を疑う必要があります。一定の部位を激しく何度もかいたり皮膚が赤くなるほどなめ続けているのはSOSのサインです。
その場合、どういった病気が考えられるのか。今回は、‟かゆみ”を伴う代表的な病気をいくつか紹介します。
代表的な「かゆい」病気
愛犬がどこをよくかいているか、観察するのが重要です
アレルギー性皮膚炎
食べ物が原因となる食物アレルギー、ノミの唾液が原因のノミアレルギーなど、アレルゲンに反応して起こる皮膚炎。カビや花粉などさまざまなものに反応しやすい場合には、免疫や皮膚バリアに問題があるアトピー性皮膚炎のことも。
◆かゆみの特徴
原因によりかゆがる部位や季節はさまざま。皮膚検査で他の皮膚炎が除外された場合に疑われる。
マラセチア皮膚炎
マラセチアという皮膚に常在する酵母菌(カビの一種)が増殖することで発症する皮膚炎。指の間やわきなど蒸れやすいところに部分的に発症することも。
◆かゆみの特徴
ベタベタした皮脂になってニオイが増したり、フケが多く出て強いかゆみを引き起こす。
膿皮症
細菌が原因の皮膚炎。体幹(背中、おなか)、足のつけ根、わきなど、いろいろなところにあらわれる。よくなっては別の部分にできる、を繰り返すことも。
◆かゆみの特徴
ポツポツとした赤い発疹ができかさぶたになり、強いかゆみを伴う。
疥癬(かいせん)
通常は犬にいないヒゼンダニが寄生することで起こる皮膚病。あまりのかゆさに、皮膚をかきこわしてしまうことも。
◆かゆみの特徴
耳やひじ、顔のまわりに激しいかゆみが起こり、脱毛や発疹が見られる
肛門周囲のトラブル
肛門腺が詰まって肛門炎などの炎症を起こしている、肛門にしこりができているなどの原因でお尻にかゆみや痛みが出る。
◆かゆみの特徴
お尻のまわりが腫れたりお尻自体が赤くなる。お尻に届かず、しっぽを追いかけるしぐさを見せることも。
結膜炎
細菌やウイルス、アレルギーなどにより起こる目の病気。かゆみで目をこするしぐさのため角膜に傷がついてしまうこともあるので注意。
◆かゆみの特徴
目が充血したり、涙や目ヤニが増える。かゆくて顔を床にこすりつけるしぐさも。
毛包虫症
ふだんから犬の毛穴に寄生している毛包虫(ニキビダニ)が、免疫力が落ちたときに異常発生し、かゆみや脱毛など皮膚のトラブルを起こす病気。幼犬や高齢犬、全身的な病気にかかっている犬に起きることが多いです。
◆かゆみの特徴
口や目のまわり、四肢などに見られる。
外耳炎
耳ダニの寄生や菌類が耳アカで繁殖することによって起こる外耳炎。しきりに耳元をひっかくため、耳の後ろに毛玉ができて気がつくことも。耳アカが増えたり異臭がすることも特徴。
◆かゆみの特徴
耳の中が赤くなり、かゆみと痛みを伴う。
心の病気も疑おう
気になる部位を舌で舐めることも、「かゆがるしぐさ」の一つです
体に異常がないのにストレスでかき続けることもあります。精神的な原因でかき続ける場合、根本にあるストレスを取り除かないと、なめたり噛んだりする行為が皮膚の炎症へとつながり、さらにかゆみを悪化させることに。そういった場合は、行動学に精通した獣医師へ相談しましょう。
「かゆがるしぐさ」が気になった場合、どういう状況でかゆがるか、どこをよくかいているか、どの程度かゆがるか(頻度やかき続ける時間など)観察して、獣医師に伝えましょう。
参考/愛犬との暮らしをもっと楽しむ『いぬのきもち』2017年4月号「犬のかゆがるしぐさの理由」特集(監修:獣医行動診療科認定医 荒田明香先生)
撮影/佐藤正之、尾﨑たまき、殿村忠博
文/ichi