犬に洋服を着せる機会があると思いますが、どのような目的で着せていますか? 犬に洋服を着せることはストレスになることもあるので、着せる目的とそのコの気質を考えてあげなければいけません。
この記事では、「犬に洋服を着せる目的」や「犬が快適に思う洋服の特徴」などについて、いぬのきもち獣医師相談室の先生が解説します。
犬に洋服を着せる3つの目的
犬に洋服を着せる主な目的は、体温調節の補助や患部・皮膚の保護、雨天時の汚れ防止です。それぞれくわしく見ていきましょう。
①体温調節の補助
体の小さな犬や被毛が短い犬は、寒さにあまり強くない傾向があります。そのため、とくに寒い冬場の外出時など冷えが厳しく、愛犬がつらそうな様子であれば、防寒の目的で洋服を使用します。
また、近年は暑さ対策として気化熱を利用し、体温調節を補助するような犬用の洋服もあります。このような洋服は、小型犬に限らず中~大型犬でも状況に合わせて使用することが可能です。
②患部や皮膚の保護
患部や皮膚の保護については、たとえば手術後の縫合部の保護や皮膚の乾燥、舐め防止のための利用があります。そのほか、筋肉量が低下した老犬などで背中や四肢の冷えからくる節々の痛みなどに対して、筋肉や関節を保温して症状を緩和する目的で洋服を使用することもあります。
③雨天時の汚れ防止
犬は湿った地面を歩く際には、とくにお腹に泥はね汚れが付きやすいです。体が小さく地面に近い小型犬や、被毛が長く腹部にも被毛が多い犬では、お腹の部分を保護できるようなレインウェアを併用すると帰宅後の被毛のケアがしやすくなります。
上記のような目的と、愛犬が洋服を嫌がらないか、ストレスにならないかを考えた上で、洋服を着せることでより快適な生活を愛犬が送れそうな状況なのであれば、それが個々の家庭の状況に応じた「愛犬に洋服を着せるといい場合」だといえるでしょう。
その折には、愛犬との生活に洋服を上手に取り入れていただければと思います。
犬に長時間、服を着せることはストレスになるので注意
なお、長時間継続しての洋服の着用は、犬にストレスを与えることがあります。犬に洋服を着せるのは、それが必要なタイミングだけにとどめましょう。
また、日ごろは洋服を受け入れている愛犬が、急に着用を嫌がってしまう場合もあります。このような際には、無理強いすることはおすすめしません。
犬にとって快適だといえる洋服の特徴
被毛に何かが触れていると、犬は違和感を抱きやすくなります。体にぴったり張り付くようなフィット感のあるデザインの洋服は、初めは受け入れにくいことも少なくありません。ふんわり羽織って、四肢の動きを遮らないマントやポンチョのようなデザインのものから試してみるとよいでしょう。
また、袖がなく前足の肩回りにゆとりがあるランニングのようなデザインのほうが、足の動きを遮りにくくストレスになりにくい傾向があります。
素材は、静電気が起こりにくく伸縮性のあるものを選ぶようにするとよいでしょう。
犬に洋服を着せる際の「季節による注意点」
どの季節であっても、洋服の影響で体温が上がりすぎないように調節することが大切です。
冬場の寒さ対策として着用させていても、着込みすぎたり、運動したりなどでかえって暑くなりすぎてしまうこともあります。愛犬の様子を見ながら、こまめに着脱して加減するなどの工夫をしましょう。
また、気化熱を利用するタイプの暑さ対策ウェアは、湿度が高すぎると十分な気化熱を得にくくなる可能性があります。梅雨時などの湿度が高くなりやすいときに使用する場合は、効果を確認しながら着用するほうがよいでしょう。
患部・皮膚の保護を目的としている場合も、梅雨時~夏、初秋ごろまでは湿度や暑さの影響で服を着ていると熱がこもり、体温調節がしにくくなることがあります。
愛犬の「暑い」のサインを見逃さないで
いずれにしても、激しいパンティングや水をたくさん飲むなど、暑くなりすぎている際のサインを愛犬が出していないかを見たり、体が熱くなりすぎていないか触って確認するなど、こまめな配慮をしながら調節することをおすすめします。
乾燥しやすい時期には対策を
また、乾燥しやすい季節には犬が静電気に驚いてしまい、それを境に洋服を受け入れなくなってしまうことが稀にあります。静電気に対する対策なども、季節や環境に応じて併用するとよいでしょう。
今は可愛いデザインの犬の洋服も多いですが、本当にそのコにとって必要なものであるのか、着ることでストレスになっていないかを飼い主さんは見極めてあげましょう。洋服を着せる目的や、愛犬に合った洋服について考えるようにしたいですね。
(監修:いぬのきもち・ねこのきもち獣医師相談室 担当獣医師)
※写真は「いぬ・ねこのきもちアプリ」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください
取材・文/sorami