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犬の顔に穴があく!?骨がとける!? 犬の歯のケア不足が招く、恐ろしい病気とは

3才以上の犬の約80%に、歯肉炎や歯周炎といった、なんらかの口内疾患が見られるという事実をご存じでしょうか。また、獣医師が日々診察にあたる犬の9割以上のケースは、飼い主さんが考えている以上に口内環境が悪化しているそう。

飼い主さんが思っている以上に、日々の食事で犬の歯についた食べカスや菌が歯垢になるスピードは速く、あっという間に歯周病を招いてしまいます。そうならないために心がけたいのは、やはりおうちでの歯みがき。

ここでは、飼い主さんがケアで見落としがちな例をご紹介します。愛犬の歯みがきを怠りがちな方も、不安がある方も、今一度、正しいデンタルケアをおさらいして、愛犬の歯の健康を守りましょう。
※この記事では、重度の症例写真も掲載しています。閲覧にはご注意ください。

定期的に歯石取りをしていても歯周病に!

イラスト/福田玲子
イラスト/福田玲子
トリミングサロンなどで歯石取りをしているからと安心している飼い主さんは多いものですが、実は要注意。歯石をとると、見えている歯の表面は白くツルツルになりますが、エックス線写真でしかわからない、歯の根元部分が傷んでいるケースが増えています。

犬の歯の場合、表面の歯石を除去しても歯周病は改善しないことが多いです。とくに無麻酔での歯石取りは犬へのストレスがかかるうえ、歯周ポケット内の歯垢はとれないので、ほとんど意味がありません。
さらに、歯石は歯垢が石灰化したもので、細菌はすでに死滅しているので、あまり悪さはしません。歯石よりも歯垢を取り除くことが重要です。

きれいだと思っていたら、根本部分が炎症に!

イラスト/福田玲子
イラスト/福田玲子
ありがちなのが、「愛犬の歯はきれいだから大丈夫!」と飼い主さんが思い込んでいるケース。口臭が気になる、出血した……などの異変で受診したところ、歯ぐきが真っ赤に晴れている、見えない歯根の先端部分に炎症を起こしているなども珍しくありません。
下記の写真を見てみましょう。
写真提供/石田陽子先生
写真提供/石田陽子先生
歯も白いですし、歯ぐきの状態もきれいなピンク色で、悪くなさそうに見えますよね。
しかし、この犬はなぜか顔が腫れていたため、動物病院を受診しました。エックス線検査をしてみると、歯の根っこに膿がたまり、下あごの骨の底付近まで骨が溶けつつあることがわかったのです。
上の写真の犬の歯を、エックス線写真で撮影したもの
上の写真の犬の歯を、エックス線写真で撮影したもの
犬にとっての「歯みがき」は、歯をきれいにする、見た目を白くすることが目的ではありません。歯垢を取り除いて、歯周組織を守ることが大切です。

そのためには、見えている歯がきれいだからといって安心せず、歯ぐきが引き締まっているか、歯ぐきの縁などが腫れていないかきちんとチェックしましょう。

皮膚病だと思ったら歯周病で、顔に穴が……

頬に炎症が広がってしまい、皮膚疾患やアレルギーを疑って動物病院を転々としたものの、治らなくて歯科にたどり着くケースもまれにあります。歯周病に気づかずに放置された結果、歯の根元の骨が溶けて皮膚に穴があく顔面疾患まで進行してしまったケースも。
歯の根元にたまった膿が骨を溶かし、口腔と頬が貫通してしまった外歯瘻の例
歯の根元にたまった膿が骨を溶かし、口腔と頬が貫通してしまった外歯瘻の例
ここまで症状が悪化する前に、地道な歯みがきを心がけることがいちばん。

ですが、いざ口腔疾患で診察を受けたくても、一般の動物病院では本格的な歯科診療の技術が備わっていないこともあります。可能な限り、歯科を得意とする獣医師がいる動物病院を探しておくとより安心です。

重度の歯周病で、下あごの骨が溶けた!

イラスト/福田玲子
イラスト/福田玲子
歯周病が進行すると、口臭や痛みとともに、歯根が溶けるため歯がグラグラするなどの症状が出ます。ゴハンを食べたがらない、顔や口元を触られるのを嫌がる、ヨダレが増えるなどの異変が出るころには症状がかなり進んでいることが多いです。
まずは、正常な状態の犬の歯のエックス線写真を見てみましょう。歯の根元部分に左右のあごの骨の付着部があります。
下あごを真下から撮ったエックス線写真
下あごを真下から撮ったエックス線写真
次に、歯周病が悪化してしまった犬の例を見て見ましょう。

前歯の骨が溶けて、下あごとの結合部分がなくなってしまっています。このように、歯周病が進んで歯の根元にまで炎症が広がると、歯を支える下あごの骨まで溶けて薄くもろくなってしまいます。すると、かたいものをあじる、あごをぶつけるなど、ちょっとした衝撃で骨が折れてしまうことも。もともとあごの骨が薄い小型犬はとくに注意が必要です。
骨が溶けて、左右のあごが皮一枚でつながっています
骨が溶けて、左右のあごが皮一枚でつながっています
いかがでしたか?
痛ましい例もご紹介させていただきましたが、愛犬のデンタルケアを怠ると、このような深刻な症状につながってしまうことがあります。犬の歯について正しい知識を深めながら、適切なデンタルケアで愛犬の健康を守ってあげてくださいね。

参考/愛犬との暮らしをもっと楽しむ『いぬのきもち』2021年6月号「飼い主さんの失敗に学ぶデンタルケアGUIDE」特集(監修:「石田ようこ 犬と猫の歯科クリニック」院長 石田陽子先生)
症例写真提供/石田陽子先生
イラスト/福田玲子
構成・文/ヨシノキヨミ
CATEGORY   犬と暮らす

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