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【獣医師監修】犬にさくらんぼを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

さくらんぼは、適量であれば犬が食べても大丈夫ですが、種には中毒を引き起こす有毒物質が含まれているので与え方には注意が必要です。また、実には多量に摂取すると下痢を引き起こす成分やアレルギー源となりうる成分も。犬がさくらんぼを食べるメリットとデメリット、与え方を紹介します。

佐野 忠士 先生

幸せな芝犬と飼い主は、屋外で桜を与える
Ksenia Raykova/gettyimages

犬にさくらんぼを与えるときは、有毒成分を含む種と過剰摂取に要注意

顔を上げてさくらんぼを見つめるミニチュア・シュナウザー
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
さくらんぼには、ビタミンCやビタミンE、アントシアニン、クエン酸など体によい成分が含まれているので、基本的には犬が食べても大丈夫な果物です。
ただし、種に含まれるアミグダリンという成分は、消化器官内で有毒物質を発生させて「アミグダリン中毒」を引き起こす危険性があります。また、さくらんぼの実にはソルビトールという成分が含まれています。少ない量であれば問題ありませんが、多量に摂取すると下痢を引き起こす原因になります。

さくらんぼのおもな栄養素|約80%が水分、15%が炭水化物

さくらんぼを見上げて笑っている柴犬
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
さくらんぼのおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー64kal
水分83.1g
タンパク質1.0g
脂質0.2g
炭水化物15.2g
灰分(無機質)0.5g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬がさくらんぼを食べるメリット|抗酸化作用で元気な体をキープ

さくらんぼの入ったお皿を前に飼い主を見上げているミニチュア・ダックスフンド
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
さくらんぼには、犬にうれしい以下の成分が含まれています。

ビタミンC|抗酸化作用で病気の予防、アンチエイジング

ビタミンCは、タンパク質からコラーゲンを生成するのをサポートする作用があることから、毛細血管や歯、骨を健康に保つのに役立ちます。ほかにも、鉄分の吸収を促す、解毒やホルモン代謝を担う酵素の働きを助けるなど、さまざまな役割を果たします。また、病気や老化の原因となる活性酸素を除去する抗酸化作用も期待できます。

なお、健康な犬は自分の体内でブドウ糖からビタミンCを合成することができるため、以前は「犬のビタミンC摂取は必要ない」と考えられていました。しかし最近の研究報告では、犬にもビタミンC欠乏症があることがわかってきました。健康な犬でも5歳を過ぎれば体内でビタミンCを作る能力が低下してくるとも考えられているので、シニア犬などでは食べ物やサプリメントからビタミンCの補給を図るとよいかもしれません。

ビタミンE|抗酸化作用、免疫力UP

ビタミンEは、「トコフェロール」とも呼ばれている栄養素。細胞膜が酸化するのを防ぐ作用があり、愛犬の健康維持と病気予防、アンチエイジングに役立つと考えられます。ビタミンEがより効率的にその作用を発揮するためには、ビタミンCと一緒に摂取することが必要です。

アントシアニン|抗酸化・抗炎症作用、血糖値の上昇を抑制

アントシアニンは「ボリフェノール」の一種です。ビタミンCと同じように、犬の体内で毛細血管を強化したり、細胞の酸化を防いだりして、犬の健康維持と病気の予防、若さの維持に役立ってくれます。

クエン酸|疲労回復

クエン酸は、レモンや梅干し、酢など「酸っぱい」ものに多く含まれている成分です。クエン酸は体内の代謝を促し、体にたまった疲労物質の乳酸を分解してくれるため、疲労回復につながると考えられます。

犬がさくらんぼを食べるデメリット|種には中毒を起こす有毒物質あり!

飼い主が手に持っているさくらんぼを見上げて見つめる白いトイ・プードル
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
さくらんぼは、食べられる季節が限定される果物なので、つい愛犬に旬の味覚をお裾分けしたくなりますが、以下の点に注意してください。

ソルビトール|大量摂取で下痢の原因に

ソルビトールは、ガムなどのお菓子の甘味料として知られていますが、さくらんぼの実にも含まれています。少量であれば便秘の解消に役立ちますが、大量に食べると軟便を通り越して腹痛や便秘を引き起こしかねません。普段から便通がよくない犬なら少量を与えることで便秘解消の効果が期待できますが、お腹を壊しやすい犬にはあまり与えないほうが安心でしょう。

アミグダリン|種の中に有毒物質

さくらんぼの種の中には、「アミグダリン」という有毒な成分が含まれています。このアミグダリンは、犬の腸の中で分解されると「シアン化水素」を発生させ、「アミグダリン中毒」を引き起こす原因となります。

犬の大きさや体調などにもよりますが、中毒を起こすと、食後30分〜1時間くらいで痙攣、呼吸困難、下痢、嘔吐などの症状が現れます。大量に種を食べない限り重篤な状態に陥る心配はありませんが、もしさくらんぼを与えたあとにこのような症状が見られたら、すぐに動物病院に連れていきましょう。

なお、アミグダリンは種の中にセルロースにコーティングされた状態で入っているため、種を噛み砕かず丸呑みした場合は、そのまま便として体外に出てくるので大丈夫ですが、嚙み砕いてしまう場合もあるので種ごと与えないようにしてください。

βカロテン|過剰摂取による中毒で肝臓に負担

βカロテンは、犬の体内で必要な分だけビタミンAに変換され、愛犬の健康維持に役立ってくれる栄養素です。
必要な分だけ変換されて使われるため、たくさん摂取しても健康に害を及ぼすことはないと考えられてきましたが、最近の研究で、犬はビタミンAへの変換能力が高く、少量のβカロテンでも多くのビタミンAを生成できることがわかってきました。βカロテンは、小腸で吸収されて肝臓に蓄積されやすいため、大量に摂取すると「ビタミンA中毒」になり肝臓に負担がかかります。肝臓病を患っている犬には、さくらんぼを与えないほうがよいでしょう。

タンパク質にアレルギー反応を示す場合も

さくらんぼにはタンパク質が含まれています。食物アレルギーは、タンパク質に免疫機能が過剰に反応して起こるものなので、さくらんぼがアレルギー源となる可能性もゼロではありません。以前にも何らかの食べ物アレルギーを起こしている場合は、最初に与える際にごく少量ずつ、食べたあとの様子を見ながら与えましょう。

アメリカンチェリーはさくらんぼと同じメリットとデメリット?

さくらんぼ柄の紺色の洋服を着て、お座りしている白いマルチーズ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
日本のさくらんぼとアメリカンチェリー。見た目の色、大きさ、果肉の色は違いますが、種類としては同じ「西洋実桜(セイヨウミザクラ)」。日本で栽培されているさくらんぼの多くは白肉種で、甘味と酸味の両方を兼ね備えているのが特徴。輸入物に多いアメリカンチェリーは赤肉種で、酸味が少なく甘味が強いのが特徴です。

どちらも含まれる栄養素の特徴は同じで、ビタミン類、ポリフェノールが豊富。ソルビトール、アミグダリン、βカロテンに対して注意しなければならないことも同じです。

犬にさくらんぼを与えるときの注意ポイント|与えてよいのは実の部分だけ!

木になっているさくらんぼの下で、カメラ目線ポメラニアン
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
さくらんぼを愛犬に与える際は、以下のことを注意しましょう。

与えてよい部位

犬がさくらんぼを食べて大丈夫なのは、柄と種を除いた実の部分だけです。柄は固く消化しにくいだけでなく、喉に引っかかったり詰まったりする心配があります。実の中にある種は、有毒物質が含まれているため、絶対に与えてはいけません。

与えるときの適量

犬にさくらんぼを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。

犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)29g~58g(3~6個)
中型(6~15kg)67g~133g(7~15個)
大型(20~50kg)165g~329g(18~36個)

※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理方法

小型犬では丸い果肉をそのまま飲み込むと、喉に詰まらせる心配があります。種を取り出した果肉を細かく刻んでからあげましょう。

なお、愛犬同伴でさくらんぼ狩りに行ったときは、目の届かないところで下に落ちているさくらんぼを食べないよう、くれぐれも気をつけてください。

犬にさくらんぼを与えるなら、実の部分を少しだけ

さくらんぼは、果肉の部分だけなら犬が食べても大丈夫な果物です。要注意は有毒物質が含まれる種の部分。目を離した隙に愛犬がさくらんぼを丸呑みしないよう、くれぐれも注意を。そもそも、さくらんぼは犬が必ず食べなければならないものではないので、旬の気分をほんの少しお裾分けする程度の少量にとどめておきましょう。
犬には与えてはいけない食べ物や、注意したい食べ物があります。確認しておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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