1. トップ
  2. 犬と暮らす
  3. 飼い方
  4. 食事・ドッグフード
  5. 【獣医師監修】犬にしいたけを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

犬と暮らす

UP DATE

【獣医師監修】犬にしいたけを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

しいたけは、犬が食べても大丈夫です。野生には生えていないキノコであるため「誤って与えてしまう」「誤って摂取してしまう」という心配もなく、安心な食材であるといえます。便通をよくする食物繊維や悪玉コレステロールを下げる働きが認められるエリタデニン、丈夫な歯や骨を作るのに必要なビタミンDなど、犬の体によい栄養素を豊富に含んでいます。ただし、過剰摂取は下痢や嘔吐などの原因になるので注意が必要です。

佐野 忠士 先生

犬 しいたけ
Wako Megumi/gettyimages

犬にしいたけを与えるときは加熱してから。ビタミンDの過剰摂取には要注意

床に置いてあるしいたけのパックの横で振り返って飼い主を見るウェルシュ・コーギー・ペンブローク
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
免疫力アップや病気の予防に対して期待が寄せられている「キノコ類」。なかでも季節を問わず手に入るキノコの代表格がしいたけでしょう。
食物繊維やビタミンDなど体によい影響を与える成分が豊富で、しかも低カロリー。そんなしいたけは、犬の体にとってもメリットの多い食べ物のひとつです。含まれる栄養素のなかで、とくに注目すべき成分としては、食物繊維とエリタデニン、ビタミンD、カリウムなどが挙げられます。
ただし、それらの体によい成分も過剰に摂取すると健康を害することにもなるので、与える量や与え方には気をつける必要があります。

しいたけのおもな栄養素|生と乾燥では成分に大きな違いあり

ハート型のしいたけを見つめるチワワ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
しいたけに含まれるおもな栄養素(生) ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー25kal
水分89.6g
タンパク質3.1g
脂質0.3g
炭水化物6.4g
灰分(無機質)0.6g


しいたけに含まれるおもな栄養素(乾) ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー258kal
水分9.1g
タンパク質21.2g
脂質21.2g
炭水化物62.5g
灰分(無機質)4.4g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬がしいたけを食べるメリット|低カロリーで食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富

おもちゃの縄をかじってカメラを見つめるMix(雑種)の中型犬
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
生のしいたけは、100gでわずか25kcal。体重増加が気になる犬にとっても安心の低カロリー食材といえるでしょう。食物繊維やビタミン類など含まれる成分は、生しいたけでも干ししいたけでも同様です。

食物繊維|腸内環境の改善と便秘の解消

食物繊維には、「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2つがあります。「水溶性食物繊維」は、胃腸内をゆっくり移動して食後の血糖値が急激に上がるのを抑え、小腸でコレステロールを吸収して体外に排出しやすくしてくれます。
一方「不溶性食物繊維」は、腸の中で水分を吸って膨らみ、便のカサを増して腸の運動を促して、排便をスムーズにするほか、腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整えてくれます。

しいたけには、その両方の食物繊維が含まれていますが、とくに不溶性食物繊維が多く、ふだんから便秘気味の犬にはメリットのある食べ物といえそうです。

エリタデニン|悪玉コレステロールを下げる

しいたけ特有の成分であるエリタデニンには、リン脂質やリノール酸の代謝に影響を及ぼして、悪玉コレステロール値(LDL)を下げ、善玉コレステロール値(HDL)を上げる作用があることがわかっています。この働きによって、血液をサラサラにして動脈硬化のリスクを下げることが期待されます。

カリウム|余分な塩分の排出と血圧調整

カリウムは、ナトリウムとバランスを取りながら、細胞を正常な状態に保ち、体液の浸透圧を調整するミネラルのひとつです。また、体内の余分な塩分を尿と一緒に体外に排出することで、血圧を下げる役割も果たします。

ビタミンD|丈夫な骨や歯を作る

しいたけには、日光に当たるとビタミンDに変化する「エルゴステロール」という成分が豊富に含まれています。ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収を助け、体内のカルシウムの濃度を調整するため、丈夫な骨や歯を作り、維持するのに欠かせないものです。
生しいたけにもエルゴステロールは含まれていますが、天日干しにすることでエルゴステロールがビタミンDに変化するため、乾燥しいたけは生に比べてビタミンDの含有量は約56倍にのぼります。

βグルカン|免疫活性、血糖値を抑える

βグルカンは、キノコ類に含まれる多糖類で、食物繊維の一種です。βグルカンには複数の種類がありますが、しいたけから抽出された「レンチナン」というβグルカンには、免疫力をアップさせ、抗腫瘍効果があることがわかっています。日本では1985年から人用の抗ガン免疫療法剤「レンチナン」(注射薬)としても使われています。
犬がしいたけを食べることで、同様の抗腫瘍効が期待できるかどうかは明らかではありませんが、犬にβグルカンを給与することで、免疫細胞が活性化したという海外の研究報告もあるようです。

さらに、βグルカンには食後の血糖値の上昇を抑える働きがあるのではと考えられています。

犬がしいたけを食べるデメリット|過剰摂取で便秘に。持病のある場合も要注意

鼻にボーロを載せている白いミニチュア・ダックスフンド
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬の体によいとされる栄養素であっても、摂り過ぎは体調不良のもとになりかねません。しいたけに含まれる成分のうち、とくに摂取量に注意が必要なものを紹介します。

食物繊維|不溶性食物繊維の過剰摂取で排便が困難に

しいたけに多く含まれる不溶性食物繊維は、便のカサを増し、腸に刺激を与えて排便を促してくれる作用がありますが、過剰に摂取すると便が大きく固くなり過ぎて、便が出にくくなる可能性があります。便秘が改善できる程度の適量を守ることが大切です。

カリウム|腎臓病や心機能低下の場合は要注意

不要になったカリウムが尿として体外に排出できないと、血液中のカリウム濃度が上がる「高カリウム血症」になってしまいます。カリウム値が高くなると、四肢のしびれや筋力の低下、嘔吐、不整脈など体の不調をきたし、重篤な場合は命を落とす場合もあります。健康な犬でも多量のカリウムを処理すると腎臓に負担がかかります。

とくに、腎臓病を患っている場合は、カリウムの排出がうまくできないので、腎機能が低下している犬にはしいたけは与えない、または与える前に必ず獣医師に相談してください。
また、心機能が低下している犬の場合も与える前に必ず獣医師に相談しましょう。

ビタミンD|結石症の場合は要注意

健康な骨や歯の維持に役立つビタミンDですが、多量に摂取すると「高カルシウム血症」を引き起こす危険性があります。高カルシウム血症になると、嘔吐や筋力の低下、食欲不振、脱水、多尿などの症状をきたし、尿路結石を引き起こすこともあるので、しいたけを与える量には注意が必要です。

タンパク質に免疫機能が過剰反応する場合も

食物アレルギーは、食べ物に含まれるタンパク質に体内の免疫機能が過剰に反応して起こるものです。しいたけには、タンパク質が含まれているので、稀に皮膚の痒みや湿疹、赤み、嘔吐、軟便、下痢などのアレルギー症状を引き起こすことも。食物アレルギーがある犬の場合は、最初は少量を与え、体調に変化がないか様子を見てみましょう。

犬にしいたけを与えるときの注意ポイント|石づきは取り除き、加熱して与えよう

ご飯の器を抱えている黒いイングリッシュ・コッカー・スパニエル
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
生しいたけと干ししいたけ、どちらも犬に与える際には注意点があります。

与えてよい部位

生しいたけも干ししいたけも、軸、石づきの部分は固いので取り除いたほうが安心です。

与えるときの適量

犬にしいたけを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。

しいたけ(生)

犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)75g~150g(3個~5.5個)
中型(6~15kg)172g~342g(6.5個~13個)
大型(20~50kg)424g~842g(16個~32個)


しいたけ(乾)

犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)7g~14g(1個~2個)
中型(6~15kg)17g~33g(3個~4個)
大型(20~50kg)41g~82g(5個~10個)


※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理方法

生のしいたけは消化しにくいので、加熱してから与えましょう。おすすめは、茹でるか蒸すこと。油で炒めると、せっかく低カロリーでヘルシーなしいたけがカロリーアップしてしまうからです。軸と石づきを切り取り、傘の部分を加熱したら、細かく刻んでフードに混ぜるかトッピングして与えましょう。

また、干ししいたけは細かく刻んでもそのままでは固く、犬の口中や喉を傷つけてしまうかもしれません。必ず水で戻して柔らかくしてから軸と石づきを切り取り、傘の部分を刻んで与えます。干ししいたけを戻した汁には、しいたけの栄養分が流れ出ているので、ドライフードをふやかすのに使っても。しいたけのよい香りが、愛犬の食欲をそそる効果も期待できるでしょう。

低カロリーでヘルシーなしいたけ。過剰摂取に気をつけて上手に活用を

犬の体にとってよい栄養素がたくさん含まれているしいたけ。低カロリーなので、体重増加が気になる犬にも安心して与えられる食べ物のひとつといえそうです。適量を守って与えれば、愛犬の健康維持に役立つでしょう。
犬には与えてはいけない食べ物や、注意したい食べ物があります。確認しておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
CATEGORY   犬と暮らす

UP DATE

関連するキーワード一覧

人気テーマ

あわせて読みたい!
「犬と暮らす」の新着記事

新着記事をもっと見る