1. トップ
  2. 犬と暮らす
  3. 飼い方
  4. 食事・ドッグフード
  5. 【獣医師監修】犬にピーナッツはNG。食べてしまったときの症状と対処方法

犬と暮らす

UP DATE

【獣医師監修】犬にピーナッツはNG。食べてしまったときの症状と対処方法

ナッツ類のなかには犬にとって中毒の原因になるものがありますが、ピーナッツは大丈夫です。ただし、高脂肪&高カロリーで不溶性食物繊維が多いため、犬の健康を損なう心配があります。ピーナッツを犬に与えてはいけない理由と、過剰に摂取した場合に見られる症状および対処法を紹介します。

佐野 忠士 先生

犬はピーナッツを食べてはいけない。高脂肪&高カロリー、過剰な食物繊維に要注意

白い背景にピーナッツ
Kovaleva_Ka/gettyimages
ピーナッツは、その名前からアーモンドやクルミのような種子の一種だと思われがちですが、じつはマメ科の植物です。花が咲いたあとに細い茎のようなものを下に伸ばし、地中に入って実を作ったものが「落花生」、つまりピーナッツです。

ピーナッツにはオレイン酸やリノレイン抗酸といった不飽和脂肪酸やビタミンE、タンパク質などの栄養素が多く含まれているため、健康志向の高まりとともにアンチエイジングや老化抑止などの健康効果に期待が集まっているようです。
ただし、それは人間の体にとっての話であってピーナッツが犬にとっても好ましい食べ物とはいえません。

ピーナッツはバターや塩で味付けをしていないものでも、脂肪分が多くハイカロリー。ましてやピーナッツバターのような加工品には砂糖が加えられているものが多く、さらに高カロリーです。高脂肪&高カロリーの食べ物は、肥満から糖尿病などの病気を発症させる原因になりがちです。

ピーナッツは、飼い主が意識的に与えなくても、愛犬が家の中でうっかり誤食してしまう可能性があるものです。それだけに、飼い主が犬に与えないほうがよい理由を理解しておくことが大切です。

犬がピーナッツを食べてはいけない理由|高脂肪&高カロリーが肥満や高脂血症の原因に

ピンク色の絨毯の上に腹這いになり、顔をあげて笑っている黒いミニチュア・シュナウザー(口の周りと足先、まゆ毛は白)
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
人間にとって体によい栄養成分でも、犬にとってよくないものもあります。ピーナッツの栄養素のうち、好ましくないものを紹介します。

高脂肪&高カロリー|過剰摂取は肥満や病気の原因に

一般的に市販されているピーナッツ(殻なし、煎り)に含まれる栄養素を調べてみると、約半分(49.4%)が脂質(脂肪)で占められていることがわかりました。
脂肪は、犬の体に必要な三大栄養素(炭水化物、脂肪、タンパク質)のなかでも一番効率のよいエネルギー源ですが、過剰に摂取すると使われなかった分が体内に蓄積され、肥満の原因になります。

しかも、脂肪分の多いピーナッツは非常に高カロリー。殻から出して煎ってあるおつまみ用のピーナッツは、100グラムで607カロリーもあります。20粒程度で約120カロリーあるため、人間よりずっと体の小さな犬にとっては、かなりハイカロリーな食べ物といえるでしょう。

高脂肪&高カロリーの食べ物を過剰に摂取すれば、肥満になるだけでなく、糖尿病や高脂血症といった心配も出てきます。さらに、膵臓の消化には膵臓から分泌される分解酵素が必要になるため、高脂肪の過剰摂取は膵臓に大きな負担をかけることになります。膵臓に疾患のある犬はとくに注意が必要です。

食物繊維|消化されにくく、過剰摂取すると便秘や排便痛に

腸内環境を正常に保ち、便通をよくするためには、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がバランスよく含まれている食べ物が役立ちます。ピーナッツの場合は、水溶性食物繊維に比べて、不溶性食物繊維が20倍と圧倒的に多くなっています。
不溶性食物繊維は、腸内で水分を吸って便のカサを増し、便通を改善したり、腸内の善玉菌のエサになったりして腸内環境を整えてくれますが、必要以上にたくさん摂ると、便が大きくなり過ぎて排便が困難になることがあります。
もともと犬は食物繊維を消化するのが苦手なので、過剰な食物繊維の摂取は好ましくありません。

マグネシウム|過剰摂取は尿路結石症の原因にも

ピーナッツには、マグネシウムが豊富に含まれています。マグネシウムは、心臓の健康維持や骨や歯を作るのに必要な栄養素ですが、多量に摂取するとストルバイト結石を形成しやすくなるといわれています。尿石症の既往がある犬には、マグネシウムを多く含む食べ物を与えるときは注意が必要です。

リン|過剰摂取は慢性腎臓病のもと

リンは、カルシウムとバランスをとって骨や筋肉などを構成する必須栄養素です。そのバランスが崩れてリンが多くなると、カルシウムの吸収を阻んで、骨を壊してしまうため、過剰摂取しないよう注意が必要です。さらに、リンの過剰摂取は腎臓に負担をかけ、腎機能を低下させる危惧もあります。腎臓病のある犬や加齢で腎機能が衰えている犬には、リンが豊富なピーナッツを与えてはいけません。

カリウム|腎臓機能の低下で高カリウム血症の心配あり

カリウムの過剰摂取も、リンと同様、腎臓に負担をかけることになります。カリウムが上手に体外に排出されず、血液中のカリウム濃度が上がると「高カリウム血症」になり、四肢の痺れや筋力低下、不整脈や心臓麻痺などの心臓機能障害を引き起こす可能性があります。健康な犬でも、ふだんからカリウムを摂り過ぎないよう注意が必要です。

とくに、腎臓が弱っているシニア犬や腎臓病のある犬は、カリウムの十分な排出ができないため、カリウムを多く含むピーナッツは与えないようにしましょう。

大豆アレルギーがある場合は要注意

ピーナッツは大豆と同じマメ科です。大豆アレルギーがある犬は、同様のアレルギー症状を引き起こす可能性があるため、絶対に食べさせてはいけません。また、大豆アレルギーがない犬でも、稀にアレルギー反応を生じる場合があります。

犬がピーナッツを食べたときに見られる症状|元気がない、下痢、嘔吐

大きく口を開けて舌を出し、笑っているような表情の茶色い柴犬
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
ピーナッツの過剰摂取やアレルギーが原因で考えられる症状には、以下のようなものがあります。

過剰摂取で見られる症状

犬がピーナッツを多量に食べると、次のような症状が見られます。

<消化不良による症状>

  • お腹が膨れて元気がない

  • 数時間おきに嘔吐、下痢

  • 祈りの姿勢(頭を下げて、背中を丸めるようにして立っている)


<油分過剰による症状>

  • 気持ちが悪そうで元気がない

  • 元気がない

  • 下痢・嘔吐

  • 祈りの姿勢(頭を下げて、背中を丸めるようにして立っている)

食物アレルギーで見られる症状

  • 嘔吐・下痢

  • 皮膚を痒がる

  • 湿疹ができる

  • 元気がなくなる

  • 目が充血する


アレルギーには食べてからすぐに発症する「I型過敏症」と、数時間以上で発症する「Ⅳ型過敏症」があります。一般的に人間は「I型過敏症」、犬の場合は「Ⅳ型過敏症」が多いようです。犬がピーナッツを食べて数時間後に嘔吐や下痢、体を痒がるなどの症状が見られたら、食物アレルギーかもしれません。

危険な量の目安

犬の体重や体調、病歴などにもよるので、一概に危険な量を示すことはできません。
前述したリスクがある犬の場合は、1粒も与えないように気をつけてください。

犬がピーナッツを食べてしまった場合の対処方法

2匹並んで気持ちよさそうに眠っている黒のチワワと茶色のチワワ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
「ピーナッツ中毒」はないため、愛犬がうっかりピーナッツを口にしてしまったからといって、あわてて病院に連れて行く必要はありません。ただし、いつもと様子が違う場合は、対処が必要です。

アレルギー症状が見られたら病院へ

下痢や嘔吐が続く、体が痒そう、急に元気がなくなったなど、ふだんと違う様子があれば、かかりつけの動物病院に連れて行きましょう。診察を受ける際には、愛犬がいつ、どんくらいピーナッツを食べたか、どんな症状なのかを獣医師に伝えてください。
病院での治療内容病院では飼い主から話を聞いたうえで、以下のような処置・検査を行い、必要な治療を行います。

催吐処置、摘出処置
犬がピーナッツをのどに詰まらせた場合は、獣医師による摘出が必要です。ピンセットで取り出す、麻酔をかけて内視鏡で取り出す、薬によって嘔吐させるなどの方法が考えられます。

レントゲン、腹部エコー、血液検査
レントゲン検査や腹部エコー検査を行い、ピーナッツが詰まっている場所を特定します。腎臓などの臓器に影響がないか、血液検査を行う場合もあります。

点滴・投薬
下痢や嘔吐が続くと脱水状態に陥っている可能性が高いため、点滴による水分補給が必要です。犬の点滴は人間と同様に静脈から行えますが、犬はじっとしていないので難しいかもしれません。そんな場合は、背中の皮膚と筋肉の間にまとまった量の輸液を入れる「皮下点滴」という方法が有効です。10〜20分程度の処置で済み、入院の必要もありません。ただし、皮下点滴が有効なのは、軽い脱水の場合です。

重症の場合は入院が必要な場合も重度の脱水を起こしている場合や、内臓(腎臓や肝臓、膵臓、腸など)がダメージを受けている場合には、処置や治療のために入院が必要になるケースもあります。また、腸閉塞が起こっている場合は、開腹手術を行います。

犬のピーナッツ誤飲を防ぐ方法

フリーリングの床に前足、顔をつけて眠っている茶色のポメラニアン
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
お酒のお供や小腹が空いたときに食べることが多いピーナッツ。飼い主が目を離したすきにテーブル上のピーナッツを食べてしまったり、床に落ちていたピーナッツを誤飲してしまったりするかもしれません。ピーナッツを食べるときは床に落としたり、犬の目に入るところに置いたりしないよう気をつけましょう。

ピーナッツは犬にとってデメリットが多い

ピーナッツには毒性はありませんが、過剰摂取によっては体調不良や病気の原因にもなりかねません。犬にとってメリットよりデメリットが多い食べ物なので、愛犬にピーナッツを与えるのはやめましょう。
犬には与えてはいけない食べ物や、注意したい食べ物があります。確認しておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
CATEGORY   犬と暮らす

UP DATE

関連するキーワード一覧

人気テーマ

あわせて読みたい!
「犬と暮らす」の新着記事

新着記事をもっと見る