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【獣医師監修】犬にピーナッツはNG。食べてしまったときの症状と対処方法
ナッツ類のなかには犬にとって中毒の原因になるものがありますが、ピーナッツは大丈夫です。ただし、高脂肪&高カロリーで不溶性食物繊維が多いため、犬の健康を損なう心配があります。ピーナッツを犬に与えてはいけない理由と、過剰に摂取した場合に見られる症状および対処法を紹介します。
佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター 集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
犬はピーナッツを食べてはいけない。高脂肪&高カロリー、過剰な食物繊維に要注意
ピーナッツにはオレイン酸やリノレイン抗酸といった不飽和脂肪酸やビタミンE、タンパク質などの栄養素が多く含まれているため、健康志向の高まりとともにアンチエイジングや老化抑止などの健康効果に期待が集まっているようです。
ただし、それは人間の体にとっての話であってピーナッツが犬にとっても好ましい食べ物とはいえません。
ピーナッツはバターや塩で味付けをしていないものでも、脂肪分が多くハイカロリー。ましてやピーナッツバターのような加工品には砂糖が加えられているものが多く、さらに高カロリーです。高脂肪&高カロリーの食べ物は、肥満から糖尿病などの病気を発症させる原因になりがちです。
ピーナッツは、飼い主が意識的に与えなくても、愛犬が家の中でうっかり誤食してしまう可能性があるものです。それだけに、飼い主が犬に与えないほうがよい理由を理解しておくことが大切です。
犬がピーナッツを食べてはいけない理由|高脂肪&高カロリーが肥満や高脂血症の原因に
高脂肪&高カロリー|過剰摂取は肥満や病気の原因に
脂肪は、犬の体に必要な三大栄養素(炭水化物、脂肪、タンパク質)のなかでも一番効率のよいエネルギー源ですが、過剰に摂取すると使われなかった分が体内に蓄積され、肥満の原因になります。
しかも、脂肪分の多いピーナッツは非常に高カロリー。殻から出して煎ってあるおつまみ用のピーナッツは、100グラムで607カロリーもあります。20粒程度で約120カロリーあるため、人間よりずっと体の小さな犬にとっては、かなりハイカロリーな食べ物といえるでしょう。
高脂肪&高カロリーの食べ物を過剰に摂取すれば、肥満になるだけでなく、糖尿病や高脂血症といった心配も出てきます。さらに、膵臓の消化には膵臓から分泌される分解酵素が必要になるため、高脂肪の過剰摂取は膵臓に大きな負担をかけることになります。膵臓に疾患のある犬はとくに注意が必要です。
食物繊維|消化されにくく、過剰摂取すると便秘や排便痛に
不溶性食物繊維は、腸内で水分を吸って便のカサを増し、便通を改善したり、腸内の善玉菌のエサになったりして腸内環境を整えてくれますが、必要以上にたくさん摂ると、便が大きくなり過ぎて排便が困難になることがあります。
もともと犬は食物繊維を消化するのが苦手なので、過剰な食物繊維の摂取は好ましくありません。
マグネシウム|過剰摂取は尿路結石症の原因にも
リン|過剰摂取は慢性腎臓病のもと
カリウム|腎臓機能の低下で高カリウム血症の心配あり
とくに、腎臓が弱っているシニア犬や腎臓病のある犬は、カリウムの十分な排出ができないため、カリウムを多く含むピーナッツは与えないようにしましょう。
大豆アレルギーがある場合は要注意
犬がピーナッツを食べたときに見られる症状|元気がない、下痢、嘔吐
過剰摂取で見られる症状
<消化不良による症状>
- お腹が膨れて元気がない
- 数時間おきに嘔吐、下痢
- 祈りの姿勢(頭を下げて、背中を丸めるようにして立っている)
<油分過剰による症状>
- 気持ちが悪そうで元気がない
- 元気がない
- 下痢・嘔吐
- 祈りの姿勢(頭を下げて、背中を丸めるようにして立っている)
食物アレルギーで見られる症状
- 嘔吐・下痢
- 皮膚を痒がる
- 湿疹ができる
- 元気がなくなる
- 目が充血する
アレルギーには食べてからすぐに発症する「I型過敏症」と、数時間以上で発症する「Ⅳ型過敏症」があります。一般的に人間は「I型過敏症」、犬の場合は「Ⅳ型過敏症」が多いようです。犬がピーナッツを食べて数時間後に嘔吐や下痢、体を痒がるなどの症状が見られたら、食物アレルギーかもしれません。
危険な量の目安
前述したリスクがある犬の場合は、1粒も与えないように気をつけてください。
犬がピーナッツを食べてしまった場合の対処方法
アレルギー症状が見られたら病院へ
催吐処置、摘出処置
犬がピーナッツをのどに詰まらせた場合は、獣医師による摘出が必要です。ピンセットで取り出す、麻酔をかけて内視鏡で取り出す、薬によって嘔吐させるなどの方法が考えられます。
レントゲン、腹部エコー、血液検査
レントゲン検査や腹部エコー検査を行い、ピーナッツが詰まっている場所を特定します。腎臓などの臓器に影響がないか、血液検査を行う場合もあります。
点滴・投薬
下痢や嘔吐が続くと脱水状態に陥っている可能性が高いため、点滴による水分補給が必要です。犬の点滴は人間と同様に静脈から行えますが、犬はじっとしていないので難しいかもしれません。そんな場合は、背中の皮膚と筋肉の間にまとまった量の輸液を入れる「皮下点滴」という方法が有効です。10〜20分程度の処置で済み、入院の必要もありません。ただし、皮下点滴が有効なのは、軽い脱水の場合です。
重症の場合は入院が必要な場合も重度の脱水を起こしている場合や、内臓(腎臓や肝臓、膵臓、腸など)がダメージを受けている場合には、処置や治療のために入院が必要になるケースもあります。また、腸閉塞が起こっている場合は、開腹手術を行います。
犬のピーナッツ誤飲を防ぐ方法
ピーナッツは犬にとってデメリットが多い
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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