人と同様に、犬にも〝食物アレルギー〞がありることをご存じですか? では、〝犬の食物アレルギー〞はどんな病気なのでしょう。ここでは、犬の体のどこにどんな症状が出るのか、どんな検査・治療を行うのかを獣医師後藤慎史先生に解説していただきました。
どこにどんな症状が出る?
初期症状にはかゆみが多く見られます
犬の食物アレルギーで多い症状は〝皮膚のかゆみ〞。皮膚に赤みなどはないのに、かゆがることも。かゆみは数日間続くため、かいているうちに皮膚に炎症が起きたり、脱毛したりします。また、嘔吐や下痢の症状が出る犬もいます。
おもな症状
最初の症状は、おもにかゆみ。皮膚に赤みや発疹などの変化がないのに、かゆがることも。かく、かじる、なめる、地面に体をこすりつけるなどが、犬のかゆがるサインです。
下痢や嘔吐が長引くというのも食物アレルギーの症状です。ウンチの回数が増えることも。
かゆみが出やすい部位
食物アレルギーとアトピー性皮膚炎では、かゆみが出る部位が似ています。ただ、背中と肛門まわりのかゆみは、アトピー性皮膚炎ではあまり見られず、食物アレルギーで多く見られます。
●耳介・耳の中
●目や口のまわり
●わきの下
●ひじ
●背中
●肛門まわり
●下腹部
●指の間 など
どんな検査を行う?
いくつかの検査を組み合わせて診断します
食物アレルギーの診断には、時間がかかることが多いです。かゆみや嘔吐・下痢などの症状がさまざまな病気で出ることや、食物アレルギーのかゆみが原因で皮膚の状態が悪化していることもあるためです。いくつかの検査を組み合わせて診断しますが、原因(アレルゲン)の特定に至らない場合も。
【問診】今までの経過をくわしくヒアリング
「とにかく問診が大事」と後藤先生。生活スタイルや食生活、症状など、さまざまなことから皮膚のかゆみや嘔吐・下痢の原因を探ります。「まるで推理するように可能性のある病気を考えていきます。病気をある程度絞りこみながら、適切な検査を飼い主さんに提案していきます」。
【除外診断】似たような病気をすべて否定していく
アトピー性皮膚炎や外耳炎、膿皮症、疥癬など皮膚のかゆみを引き起こす病気、寄生虫や胃腸炎など下痢や嘔吐を起こす病気のように、食物アレルギーと似た症状があらわれる病気を検査で否定していきます。消去法の結果、食物アレルギーが原因の可能性が高いと診断します。
【除去食試験】アレルギー対応のフードを2カ月間続けて反応を見る
除去食試験は、おおよそのアレルゲンを知るための検査です。一般的には、いま食べているフードやおやつ、デンタルガムをすべてやめ、アレルギー対応のフードに切り替えます。2カ月間そのフードを与え続け、症状の変化を観察。かゆみもなく、症状がおさまれば、そのフードの原材料は食べても大丈夫なものだとわかります。
【アレルギー検査(血液検査)】アレルギーの原因や体質を把握する検査
動物病院で血液を採取し、外部の検査機関で行う検査です。アレルゲンや、体内でアレルギー反応が起きているかがわかります。「ただ、アレルゲンが特定できても、それがかゆみや嘔吐の直接の原因かどうかまではわかりません」と後藤先生。
治療は? 食事療法とほかの病気が見つかればその治療も行う
食物アレルギーの治療は、アレルゲンの可能性のある食物を除いたゴハンを与えること。食物アレルギーのほかに病気がなければ、食事改善で皮膚症状はよくなります。検査でほかの病気が見つかれば、その治療も行います。
発症しやすい犬種はフレンチ・ブルドッグや柴など
アレルギーを起こしやすい体質の犬種は、食物アレルギーにもなりやすい傾向が。後藤先生の臨床経験では、フレンチ・ブルドッグ、柴、トや柴など イ・プードルなどが多いそうです。
いかがでしたか? 愛犬のウンチがゆるい、顔周りに赤みが見られるなどの症状が見られたら、もしかすると食物アレルギーかもしれません。早いうちから対処することが肝心ですので、不安な方は、一度アレルギー検査を受けさせておくとよいでしょう。
お話を伺った先生/北川犬猫病院院長、ヒフカフェ動物病院獣医師 後藤慎史先生
参考/「いぬのきもち」2022年5月号『犬の食物アレルギーまるわかり』
写真/殿村忠博、小林キユウ、回里純子
症例写真提供/後藤慎史先生
文/伊藤亜希子