以前に比べると犬の寿命はぐんと延びました。一般的に7才からシニアとすると犬の一生の約半分はシニア期。加齢による愛犬のさまざまな変化に対応できるよう、シニアならではの言葉を知っておきましょう。
ここでは「加齢による体の変化を表す用語」について、シニア犬のお世話のスペシャリスト、獣医師の佐々木彩子先生に解説していただきました。
白髪/しらが
毛に色を与えているのはメラニン色素という細胞です。老化により細胞の数が減少し、働きも弱まることで、犬も毛が色を失い白く見えるようになります。白髪が増え始める時期は個々によって異なりますが、顔まわりも白くなりシニアらしい顔つきになります。
白内障/はくないしょう
年齢を重ねると水晶体が白く濁る「白内障」にかかりやすくなります。水晶体は瞳の中で網膜に像を映し出す働きをしているため、濁ると視力が低下し、物が見えにくくなります。早期の処置で進行を遅らせることができるので、兆候が見られたら早めに受診しましょう。
認知症/にんちしょう
加齢により脳の一部が萎縮していき、認知機能が低下することで「認知症」は起こります。食欲が過度に旺盛になる、徘徊する、後ろに下がれなくなり部屋の隅などで身動きがとれなくなる、また昼夜が逆転し夜鳴きが頻繁になるなど、症状はさまざまに現れます。
頻尿/ひんにょう
年齢とともに膀胱が硬化したり筋力が低下することで、若いころのようには尿をためられなくなっていきます。それにより排尿の頻度が増えるのが「頻尿」です。老化が進行するとトイレまで我慢できずに失敗したり、尿もれやそそうをしたりするようになっていきます。
床ずれ/とこずれ
褥瘡(しょくそう)ともいう「床ずれ」は、寝たきりの状況などをきっかけに皮膚の血流が悪くなることで生じる皮膚病のこと。寝たきりになると圧迫を受けやすいひじや骨盤周辺などにできることが多く、皮膚の赤みやただれ、ひどくなると潰瘍や細菌感染を生じることもあります。
前足加重/まえあしかじゅう
筋力の低下から腰が落ち、前足で体を支えているような状態のこと。散歩中のリードの引っ張りや、平坦な場所ばかりで生活していると、前足への比重ばかりが大きくなります。シニアになるとそうした生活習慣が「前足加重」となって顕著に現れます。
ナックリング
加齢によりに筋力が落ちることで後ろ足が上がりにくくなり、甲や爪を地面に擦りながら歩くようになることがあります。このような歩き方を「ナックリング」といいます。ナックリングは、老化以外にほかの部位を発端とした神経伝達の異常から起こることも多いです。
ロコモティブシンドローム
「ロコモティブシンドローム」とは、加齢に伴う関節、骨、筋肉などの運動器の衰えのこと。症状が進行すると、筋力の低下から歩行が困難になったり、嚥下(えんげ)機能の低下から食事がとりづらくなったりします。運動機能の低下は要介護の可能性を高めていきます。
今日から始めるケアとトレーニング!
愛犬が長生きするだけでなく、元気なまま年齢を重ねる=健康長寿も、飼い主さんの心がけが大きくかかわってきます。
具体的には、病気の早期発見のために欠かせない健康診断、できるだけ長く自力で歩くための筋力維持、歯周病予防のための歯みがき、老いても楽しめる遊びなど。そして、それでもくるかもわからない補助や介護に備えて、ケアに慣れさせておくことも大切です。
また、シニア期になるとよく聞かれる「用語」の意味を知っておくことも、シニア犬をお世話するための準備になるでしょう。愛犬が若いうちから覚えておくといいですね。
お話を伺った先生/「キュティア老犬クリニック」獣医師 佐々木彩子先生
参考/「いぬのきもち」2022年5月号『長生きするからこそ知っておきたい! さきどりシニア用語』
イラスト/五嶋直美
文/川本央子