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【獣医師監修】犬に有害な寄生虫の種類・皮膚や腸に寄生した際の対処法

どんな犬でも感染リスクのある、寄生虫に関する病気。今回は、犬に有害なノミやダニなど外部寄生虫と、腸内に寄生する内部寄生虫の種類とその対処法について解説します。さらに、特に犬が注意したいフィラリアについても解説するので参考にしてください。

加藤 憲一 先生

 獣医師
 相模原プリモ動物医療センター院長

 日本大学生物資源科学部獣医学科卒業
 麻布大学附属動物病院腫瘍科専科研修医
●資格:獣医師/日本獣医がん学会獣医腫瘍科認定医II種

●所属:日本獣医がん学会

●主な診療科目:一般診療(外科・内科)/腫瘍科/画像診断科

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犬に有害な外部寄生虫(ノミ)とその対策

憂鬱そうな犬

ノミとは?

犬の体表で吸血と産卵を繰り返す「ノミ」。犬に寄生するノミの種類は、主にイヌノミやネコノミと呼ばれるものです。卵~成虫までの期間だと、なんと1ヶ月~1年近く生存する例もあり、13℃以上の気温と75~85%の湿度であれば活動を始め、気温が18~32℃くらいになると、さらに活発になります。屋外で付着したノミが暖かい室内に持ち込まれると、冬でも発生することもあるので注意が必要です。

ノミに寄生されたときの症状と対処法

ノミにかまれると痒みが生じるため、首のうしろやしっぽの付け根を唐突に掻く症状が見られることが多いです。また、ノミの唾液に対するアレルギー反応で皮膚炎を起こすと、かまれるときより強い痒みが持続して生じるため、犬が体を激しく掻いたり擦りつけたりすることで皮膚が傷ついてしまうこともあり、その傷口に細菌が入り込んでしまうと二次感染を起こす危険性もあります。さらに、もし犬がノミを口にして食べてしまうと、ノミに含まれる瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)が体内に寄生することもあります。

もしノミを見つけたら、絶対に手でつぶさないように注意し、粘着テープなどに張りつけて捕まえましょう。また、なるべく早く動物病院を受診し、適切な治療を受けさせてください。

ノミの予防法

定期的な駆除薬の投与が有効な予防法です。駆除薬は動物病院で購入できるので、予防のタイミングや予防薬の種類については、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。

犬に有害な外部寄生虫(ダニ)とその対策

木の棒をくわえる犬

ダニとは?

ダニとは、クモにやや近い仲間の節足動物で、日本には何種類もの「ダニ」が生息しています。動物に寄生するダニ類のなかでも肉眼でも確認でき、人や犬にさまざまな病気を媒介するマダニの仲間は、屋外の草むらなどで犬に寄生することが多いといわれています。
犬に寄生するダニはほかにも、イヌヒゼンダニやミミヒゼンダニなどのヒゼンダニの仲間や、イヌツメダニやニキビダニなどがいますが、いずれのダニもマダニよりは小さく、なかには肉眼では見えず、顕微鏡での確認が必要なダニもいます。

ダニに寄生されたときの症状と対処法

犬がマダニに吸血されると、貧血、頭痛、発熱、倦怠感、発疹、リンパ節の腫脹などの症状がみられます。なかには神経症状や消化器症状など、全身に重大な影響を与え、最悪の場合、死に至ることもあるので注意しましょう。
そのほかのダニは、以下のような症状を引き起こしますが、小さく肉眼での確認が困難なため、きちんと検査をして、原因のダニを特定する必要があります。


  • イヌヒゼンダニ……皮膚に穴をあけて入り込み、激しい痒みを起こす

  • ニキビダニ……脱毛して皮膚炎を起こす「毛包虫症」の原因となるが、症状が見られないケースもある

  • ミミヒゼンダニ……耳に寄生することによって外耳炎の原因になることがある。特徴的な黒い耳アカを生じる

  • イヌツメダニ……大量のふけと激しい痒みが出る

マダニの場合は肉眼でも充分確認ができますが、無理やり手で取るのは人への感染症の危険性や、不完全な駆除につながるため危険です。動物病院を受診してください。

ダニの予防法

基本的には、ノミと同じ方法(駆虫薬の投与)で予防します。また、寄生された犬には近づかないようにすることも大切です。

犬に有害な内部寄生虫とその対策

ミニチュアダックスと獣医師
犬が注意したいのは、外部寄生虫だけではありません。ここでは、犬に有害な内部寄生虫(腸内寄生虫)についてご紹介します。

犬回虫

「回虫」とは、白いミミズのような形状をした寄生虫です。母犬から胎盤を通じて感染することが多いため、子犬の発症例が多いともいわれています。また、母犬から母乳を介して感染したり、感染したほかの子犬の排泄物に含まれる卵を口にして感染したりすることもあるので、子犬を家に迎えた時点ですでに回虫が寄生しているケースもあります。
回虫が消化器に寄生すると腸内の栄養を奪うため、犬の発育に影響を及ぼし、嘔吐や下痢、腹痛を引き起こすこともあります。

犬鞭虫(べんちゅう)

「鞭虫」は、感染した犬の排泄物内の虫卵を口にすることで寄生します。体内に入ると小腸でふ化し、その後は盲腸の粘膜内に寄生して血液から養分を摂取します。数が少なければ症状は出ませんが、多く寄生すると貧血を起こしたり、発育や毛ヅヤが悪くなったりします。また、下痢や血便が出て、食欲がなくなることもあります。

瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)

ノミの項で少し触れましたが、「瓜実条虫」はノミの体内でふ化するため、そのノミを犬が口にすることによって犬の体内に寄生します。そして感染した犬の排泄物に含まれた卵をノミの幼虫が食べ、再び犬の体に感染するのです。瓜実条虫は犬の小腸に寄生しながら栄養を吸収するため、痩せてしまったり毛ヅヤが悪くなったりします。

犬鉤虫(こうちゅう)

「鉤虫」は、土の中でふ化した幼虫を犬が口にする経口感染か、もしくは皮膚から侵入する経皮感染、または母犬の胎盤や母乳、傷口などからも感染するおそれがあります。小腸に寄生した鉤虫は、かぎ型のするどい牙で腸の内部に咬みつき傷をつけて血を吸うため、慢性的な貧血症状をおこします。また、黒い色の血便が出たり、腹痛を起こしたりすることもあります。

代表的な原虫……「コクシジウム」、「ジアルジア」、「トリコモナス」

犬の小腸に寄生、増殖し便とともに排泄されます。これをほかの犬が口にするなどして感染します。成犬は無症状なことが多いですが、子犬の場合は水様性や粘液性の下痢などの症状が出ることも。悪化すると体重減少を起こし、発育不良の原因にもなります。

「コクシジウム」

腸に寄生し腸の細胞を壊して増殖するため下痢、嘔吐や栄養不良の原因となります。卵型のオーシストを糞便中に排泄し、そのオーシストが口に入ることで感染が起こります。

「ジアルジア」

ジアルジアは休眠状態のシストと活動状態の栄養型(トロフォゾイト)という2つの形態を取ります。シストは非常に抵抗性が強く外部環境においても2週間以上生存することが可能です。
シストを口から摂取することでジアルジアに感染します。単独感染ではあまり症状が出ないこともあります。

「トリコモナス」

ジアルジアによく似ていますが、トリコモナスは栄養型(トロフォゾイト)の形態しかなく、外部環境では長期生存できません。そのため発生頻度は劣りますが、他の寄生虫と混合感染することで下痢などの症状を起こすことがあります。

内部寄生虫は検便で早期発見・治療が大切

このような内部寄生虫は、定期的な検便で早期発見・治療を心がけることが大切です。また、感染してしまった場合は、駆虫薬の投与を行ったり、症状に合わせて点滴などの処置が行われたりすることもあります。
愛犬の体調に異変を感じた場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

フィラリアにも要注意!主な症状や予防法とは?

ビーグル
特に犬が注意したい寄生虫として、忘れてはならないのが「フィラリア」です。

フィラリアとは?

フィラリアは、成虫になると長さが12cm~30cmにもなる、そうめんの様に細く長い形をした寄生虫で、蚊を媒介して犬に感染します。皮膚の下や筋肉などで成長し、血管を通って心臓や肺などに寄生します。肺動脈に寄生したフィラリアは、心臓や肺の血管だけでなく、全身の血液循環を悪化させることでほかの臓器に負担をかけ、徐々に機能不全を起こします。
成虫が心臓に感染した際の初期症状はほとんどありませんが、数年をかけて心臓や肺動脈に負担をかけていくことで、咳をしたり運動を嫌がるようになるなど、心疾患の症状が見られます。重症化すると腹水が溜まり赤茶色の尿が出るなど状態はかなり深刻になり、急性の症状である大静脈症候群(VCS)を発症することも。最悪の場合は死に至ります。

予防薬が効果的

このように犬の命に関わる危険なフィラリアですが、4月~12月頃(※)にかけて、正しい方法で予防薬を飲ませることによって、ほぼ100%の確率で寄生を防ぐことができます。予防薬には錠剤タイプやおやつタイプ、注射などいくつか種類があります。コストや与えやすさなどを考慮して獣医師と相談しながら、選ぶようにしましょう。

※フィラリアの予防薬の投与期間は地域により異なります。獣医師に相談の上、最初から最後まで忘れずに与えるようにしましょう。

人にも感染することがあるので予防対策はしっかりと取ろう!

チワワ
このように、日本にはさまざまな寄生虫が存在するため、飼い主さんが気づかないうちに感染してしまっているケースも少なくありません。しかし、定期的な予防薬の投与や、ちょっとした気配りで予防することもできます。飼い主さんの責任として、寄生虫に対する正しい知識を持って対策を取るようにしましょう。

特に内部寄生虫は、排泄物を介して、ほかの犬に感染することが多いため、ほかの犬の排泄物に近づけさせないようにするのはもちろん、愛犬の排泄物は必ず持って帰るようにしてくださいね。
参考/「いぬのきもち」特別編集『80万人の飼い主さんの体験から作った!子いぬと仲良くなる育て方 健康・お世話編』(監修:グラース動物病院院長 小林豊和先生)
   「いぬのきもち」WEB MAGAZINE『愛犬に感染するダニについてのまとめ~種類、症状、取り方、治療法、予防法』
   「いぬのきもち」WEB MAGAZINE『愛犬のノミ対策~ノミがつく原因、対処法、予防や対策について~』
   「いぬのきもち」WEB MAGAZINE『【獣医師が解説】犬のフィラリア症の症状と治療法|ステージ別に解説』(監修:いぬのきもち相談室獣医師)
監修/加藤憲一先生(相模原プリモ動物医療センター院長)
文/hasebe
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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