人が食べても問題なく「一見なんの危険性もない」ものでも、犬が食べると持病を悪化させるおそれのある食べ物があるのをご存じですか? いったいどんな食べ物なのか、持病がある犬が食べるとどうなるのか、獣医師の左向敏紀先生に解説していただきました。
持病が悪化する食べ物とは?
腎臓・心臓病を悪化させる食べ物
たんぱく質と塩分は腎臓・心臓の機能に影響する!?
エネルギーの源となるたんぱく質は、余ると老廃物となり腎臓で処理されるため、とりすぎてしまうと腎臓に負担がかかります。また、塩分をとりすぎて血圧が上がると、腎臓の機能低下につながります。腎臓と心臓は密接な関係にあるため、心臓が悪い犬もこれらの成分はとらないようにしたいです。
以下をチェックしてみましょう。
たんぱく質が多い食べ物例
●鶏肉
●チーズ
●牛もも肉
●ゆで卵
●納豆
●大豆
●魚介類 など
肉類のなかでも鶏肉は、たんぱく質が多め。また、リンという成分も含まれており、過剰摂取すると心臓に負担が
チーズの主成分は、たんぱく質。犬は大好きですが、取り扱いに注意。また人用のチーズは塩分が多いので×
塩分が多い食べ物例
●ハム・ウィンナー
●乾燥小魚
●人用のジャーキー
●食パン
●銀鮭
●チーズ
●さつま揚げ など
ハムやウィンナーなどの加工食品には、意外にも塩分がたっぷり含まれています。持病がある犬はもちろん、健康な犬にも与えないように
乾燥小魚は一般的に塩水で煮て干して作られているので、生魚よりも塩分含有量が高いです。おやつのおすそわけはNG
皮膚病を悪化させる食べ物
アレルゲンになりやすい成分を避けるべき
皮膚病を患っている犬には、食物アレルギーの原因になりやすい、たんぱく質を避けたほうがいいでしょう。また、ビタミンAが欠乏すると皮膚の状態が悪くなるので、栄養バランスにも気をつけて。
例)
●牛肉
●パン(小麦)
●鶏肉
●豚肉
●乳製品 など
小麦アレルギーは、犬に比較的多いアレルギー。パンを与え続けることで、アレルギーを発症することがあります
肝臓病を悪化させる食べ物
ビタミンA・D、鉄分は肝臓に蓄積する
ビタミンA・D、鉄分は肝臓に蓄積します。肝臓病を患っている犬に対しては、肝臓の負担を減らすことが重要なので、これらの成分を与えないことが大切。また、脂質の多いおやつを与えすぎても悪化を招きます。
例)
●レバー
●香辛料の入った食べ物
●しらす干し
●干ししいたけ など
レバー(肝)は、ビタミンA・D、鉄分が豊富。とくに豚や鶏のレバーには、鉄分の含有量も多いです
泌尿器の病気を悪化させる食べ物
シュウ酸カルシウムが尿結石を誘発する
野菜などに含まれるシュウ酸は、カルシウムと結合して結石をつくることがあります。尿結石は再発しやすい病気、かつシュウ酸カルシウムが原因になることが多いので、シュウ酸を多く含む食べ物はNGです。
例)
●ほうれん草
●ごぼう
●レタス
●ブロッコリー
●なす など
ほかの野菜と比べると、生のほうれん草にはシュウ酸が圧倒的に多く含まれています。与えるなら必ず加熱処理を
拾い食い、盗み食いに要注意!
佐向先生によると、「犬が食べ物で体調不良を起こすケースの多くは、盗み食いや拾い食い」なのだそうです。危険な食べ物は犬が届く場所には置かず、留守にするときは絶対取られない場所に保管しましょう。
お話を伺った先生/獣医師、日本獣医生命科学大学名誉教授、日本ペット栄養学会会長 佐向敏紀先生
参考/「いぬのきもち」2022年2月号『まさかの事態を招くキケンな食べ物8』
写真/殿村忠博、寺岡みゆき
文/いぬのきもち編集室